2017回顧

2017年12月27日 (水曜日)

〈百貨店系アパレル●構造改善施策が効果●デジタル化が進展●変わる消費へ新事業〉

 百貨店向けアパレルは春物が苦戦したが、3月を底に業績は上向いてきた。特に秋冬商戦は気温低下でコート需要が高まり、昨年よりも明るい越年となりそうだ。

 とはいえ、天候要因だけではない。三陽商会の紳士服は、MDの細分化で1年を3~8月、9~2月に分け、2カ月単位で売り切る企画を組み立てた。「12月決算のため、1、2月の販売が十分ではなかった」という反省もある。他社もコスト低減、直貿比率向上、プロパー販売強化など、構造改善施策に取り組んだ。「実績が中期経営計画に伴ってきた。手応えがある」(オンワードホールディングス)と成果が出てきた。

 一方、成長戦略の電子商取引(EC)強化策は計画通りに推移した。上半期のEC化率はTSIホールディングスの16・8%をトップに、7~8%に上昇している。前年比2桁%増の伸びだが、まだリアル店舗の落ち込みを埋めるまでには至っていない。利益面でも「自社EC化率を引き上げる」(TSIホールディングス)ことが課題である。ビッグデータとAI解析による需要予測、店舗のデジタル化などもこれから本格化していくとみられる。

 「メルカリなど中古市場が伸びている」(フランドル)ことも、消費の変化として大きかった。レナウンは この夏に子供服のレンタルにトライしたが、「店舗への返却が面倒」「買った方がいい」などの理由で利用客が少なく、休止した。

 しかし、来春には、顧客とのつながりを強めるUX(顧客体験)事業として「着ルダケ」サービスを開始する。スーツ、シャツ、ネクタイをコーディネートして半年分を届け、シーズンを終えれば、同社がクリーニング、保管するというもの。消費の変化に合わせて新事業への挑戦が始まっている。

〈紳士服量販チェーン●オーダースーツを強化●シャツオーダーも好調●AIなど新技術の導入〉

 紳士服量販チェーンの主力商品、スーツの販売は、団塊世代のリタイアや消費者の節約志向もあり、前年を大幅に上回ることが難しい状況になりつつある。その中でここ数年、順調に販売を伸ばしてきたオーダースーツ事業に対して、紳士服量販チェーン各社は2017年、本格的な強化に乗り出した。

 青山商事は16年に始めたオーダースーツを取り扱う「ユニバーサルランゲージメジャーズ」を着実に増やしている。コナカも16年10月開始のオーダーの新業態「ディファレンス」を1年で43店舗に拡大。AOKIも16年11月から新オーダーシステム「AOKI OASYS」を全店に導入した。20~30代の利用が多く、リピーターになる確率が高いため、各社は18年以降も強化を続けていく。

 紳士服全般ではオーダースーツの好調に伴いドレスシャツのオーダーも増えている。シャツアパレルの山喜やフレックスジャパンは、自社のオーダー展開の他に、米・オリジナルスティッチが「メード・イン・ジャパン」を売りに、オンラインで世界に販売するオーダーシャツの生産も担う。

 繊維・ファッション業界でもパーソナライズ化やマスカスタマイゼーションの流れは強まりつつある。オーダーシャツ事業はその先駆的な取り組みと言える。

 ITやAIなど新技術の導入も進んだ。はるやまホールディングスは4月、一人一人の感性を個別に解析するパーソナル人工知能(AI)を開発、サービスを提供するSENSYに出資し、業務・資本提携を結んだ。

 その成果の一つが、顧客一人一人の志向や属性に合わせて印刷内容を変えて発送するパーソナルDM。通常DMの1・6倍の来店率を達成するなど、確実に効果を上げている。

〈寝装・リビング●羽毛高騰+中国の環境規制●厳しさ増すオーダーカーテン●非住宅深耕するカーペット〉

 2017年の寝具寝装品市場は春夏にダウンケットが売れ、秋冬はあったか敷パッドなどが動くが、主力の羽毛布団はまだら模様だ。

 羽毛価格高騰の影響は、値が安定していた時期に手当てした大手製造卸の17秋冬物については限定的。だが来年は、ダウンケットや低価格を売りにしたネット通販向けへの影響が必至とみられる。加えて中国の環境規制強化による問題も浮上。排水処理が基準に達しない飼育農場や精毛工場の廃業は、羽毛高騰だけでなく、生機の精練工程のひっ迫につながる。

 一方、オーダーカーテンは引き続き住宅用途が苦戦した。他の窓回り品との競合に加え、大手の家具・インテリアチェーンやネット通販といった販売チャネルの多様化によるカーテン製造卸を通さない商流の拡大も厳しい環境に拍車をかける。

 非住宅向けは比較的堅調だったが、外国人観光客の増加や2020年の東京五輪を見据えたホテル案件が端境期に当たったようだ。20年に引き付けて改装を計画するなど想定よりペースが遅いとの指摘もある。

 カーペットも同じく非住宅向けがおおむね順調に動いた。メーカー各社は20年までの旺盛な需要を見込み、数年来、設備投資を活発化しており、今年も工場増設や新機種導入などの動きがあった。端境期といわれるホテル案件も前半はロールカーペットを主体に堅調に推移。オフィス用途も再び活発化の傾向を見せる。

 そうした中で起きた織りカーペットメーカー、ニッシンの破産申請は業界に衝撃を与えた。ホテル需要の端境期、強みの一つであるアキスミンスター織機使いでの価格競争など環境の厳しさも原因に挙げられる。製造卸各社は20年後を見越し、非住宅分野での用途拡大にも力を入れている。

〈ユニフォーム●EFウエア一気に広がる●サービスウエア強化へ●学校の新たなニーズ捉える〉

 2017年、ユニフォーム業界で一番の話題となったのが、電動ファン付き(EF)ウエアだろう。これまでの空調服(東京都板橋区)が販売する「空調服」だけでなく、サンエス(広島県福山市)の「空調風神服」や、バートル(同府中市)の「エアークラフト」、シンメン(同)の「エスエアー」など新商品、新規参入が相次いだことで、消費者の選択肢が広がり、需要が一気に広がった。

 販売代理店にとっても夏場の売り上げは他の季節に比べ少ない傾向にあったが、EFウエアの取り扱いによって単価が上昇。もはや夏場に「なくてはならない」商品として定着した。一方で、ファン・バッテリーなどデバイスの不具合、ウエアとデバイスの他社製との併用によるトラブルも多く聞かれ、これからの課題も見えてきた。

 オフィスウエアでは、ニット製ウエアが定着するとともに、“おもてなし”をキーワードにした接客向けや、サービス業向けを意識したソフトワーキング分野の商品開発が加速。

 20年の東京五輪に向け、サービスを中心にさまざまなニーズが出てくることを想定し、ボンマックス(東京都中央区)、カーシーカシマ(埼玉県佐野市)、セロリー(岡山市)などが商品群を充実させ、積極的な販路開拓が見られた。

 学生服メーカーは、菅公学生服(岡山市)、トンボ(同)、明石スクールユニフォームカンパニー(岡山県倉敷市)の大手3社とも16年度決算の売上高で過去最高を達成し、健闘した。

 しかし、少子化で生徒減の影響が年々色濃くなる中で、単に制服を供給するだけでなく、新たな学校のニーズを掘り起す試みも具体化。ソリューションビジネスや防災教育など、新たな視点から学校のニーズを捉えようとする動きが出てきた。