特集 産業資材向け繊維機械/新たな用途へのソリューション

2017年12月21日 (木曜日)

 近年、さまざまな分野で素材転換の動きが顕著になってきた。特に産業資材の分野では金属から繊維強化プラスチック(FRP)へ、あるいは繊維資材でも織物から編み地へといった“素材革命”が静かに進む。こうした動きを支えているのが産業資材向けの繊維機械である。新たな用途に向けたソリューション提案が加速する。

〈「R9500」を資材用途へ/ショールームに広幅機常設/イテマ〉

 イテマは、旗艦レピア織機「R9500」を産業資材用途でも提案を強化する。このため、このほど日本法人のショールームに広幅タイプを常設し、9月にはオープンハウスも開いた。

 R9500は日本でも既に資材用途で実績が豊富。2017年もテープヤーンやモノフィラメントによる資材向け製織で受注を獲得し、引き合いも多い。こうした流れを生かし、新たに日本法人のイテマウィービングジャパン(大阪府茨木市)のショールームに筬幅360㌢タイプを常設。9月にはオープンハウスも開き、経糸にポリプロピレン(PP)モノフィラメント、緯糸にPPテープヤーンを使った資材向け織物の製織実演も行った。

 ショールームに広幅機を常設したことで、今後はユーザーごとに試織テストなども実施できるなど、提案の幅が広がる。日本法人でカスタマイズにも対応するほか、イテマ本体では産業資材向けバージョンの新規開発も進められているようだ。

 一方、プロジェクタイル織機「P7300HP V8」に関してもデニムのほか防虫網、テープヤーン織物、印刷用メッシュ織物、広幅農業資材といった強みを生かせる資材用途で提案を進める。圧倒的な緯糸挿入安定性への評価は依然として高いものがある。

〈マットレス地で高評価/靴アッパー編組の開発めざす/福原産業貿易〉

 福原産業貿易が販売する福原精機製作所の丸編み機は資材用途でも高い評価を得てきた。最近ではマットレス地の編組で販売が拡大する。織物から編み地へという素材転換の波を起こした。

 マットレス地の編組は、世界的なベッド需要拡大が進む中、織物よりも生産性が高いことが評価されている。編み地の特徴である伸縮性に加え、インレー糸を編み込むことでキルティング加工調の編み地を生産できる。

 近年では高級ゾーン向けに両面選針電子柄編み機による柄物の人気が高まる。このため従来の主流だった20ゲージ機に加えて、新たに28ゲージ機の販売も拡大した。ハイゲージ化によって一段と布帛調の編み地生産が可能だ。

 そのほか、貼布薬の基布や自動車の天井材、合成皮革の基布などの用途でも安定した需要がある。こうした中、新たな用途として開発を目指しているのがシューアッパー材の編組。シューアッパー材は従来の皮革や織物、経編み地に変わって横編み地の採用が進む。こうした動きに丸編みでも対応することを目指す。

〈準備工程高度化後押し/ダブルレピア織機も紹介/ストーブリ〉

 ストーブリは産業資材製織で最新鋭の準備機械を提案し、準備工程の高度化を後押しする。特にタイイング機は2018年から新型を投入する。

 ストーブリはこれまでもエアバッグ用途の電子ジャカードなどで豊富な実績を持つが、さらに準備機械でも自動化や汎用性の高い機種を投入する。タイイング機は新型機「タイプロ」を18年から投入する計画。畦糸有り畦糸無しの両方のタイイングに対応した機種である。既に海外ではデニムやシャツ地用途で先行投入しているが、続いて資材向けに最適化を進めている。

 そのほかリージング機「オパール」も産資用途に提案する。ドローイング機は「デルタ」が18年一杯で生産終了となることから「サファイア」で広幅対応を進め、こちらも産資用途での普及に努める。

 そのほかダブルレピア織機「TF20」「TF40」も日本市場に紹介する。複合材料基材として注目される多層織物の製織が可能。ドイツのバイロイト工場(バイエルン州)には7月にテキスタイルラボが完成した。TF20の実機を常設し、試織などを行っていることから、こうした情報を日本にも提供する。

〈糸コーティング機提案/ノズル検査システムも用意/伊藤忠システック〉

 伊藤忠システックは、ワインダーメーカーのザームが新たに提案するヤーンコーティング機「ヤーンスター3+」を日本にも紹介する。

 ヤーンスター3+は特殊ノズルによる樹脂押し出し機構によって通常の糸の表面に均一に熱可塑性樹脂をコーティングするシステム。さまざまな樹脂をコーティングすることで糸に機能性を付与できるほか強度や熱融着性の向上などさまざまな応用が可能だ。

 海外ではシェードやカーペットなどインテリア用途で採用されているほか、アラミド繊維を樹脂コーティングすることで耐候性を高め、海洋分野の資材に使用するといったアイデアもある。このために伊藤忠システックでは日本でもインテリアのはか、複合材料など幅広い用途で提案し、用途開拓を進める考え。

 台湾の検査機器メーカー、アドバンテージ・サイエンティフィックの紡糸ノズル検査システムも新たに日本で紹介する。独自の画像処理技術により紡糸ノズルの摩耗や変形、異物付着などを検出する。検査履歴を保存・トレースすることで予防保全にも力を発揮する。

〈注目高まる積極レピア織機/技術者投入しアフターフォロー/ピカノールとエディー〉

 ピカノールの革新織機が再び日本で注目されている。日本販売代理店のエディーによると2017年はレピア織機4台、エアジェット織機1台の販売成約となり、全てが資材用途。特に積極レピア方式緯糸挿入機構を搭載した「オプティマックス―i」への評価が高まる。

 オプティマックス―iには、筬(おさ)幅5メートルまで対応したガイド付き積極レピア方式緯糸挿入機構搭載機もラインアップしていることから、資材向け製織で人気が高まってきた。積極レピアによる高い緯糸挿入安定性が強み。プロジェクタイル織機からの置き換えも期待できるという。消極レピアタイプも汎用性の高さから販売が拡大した。

 ピカノールは年産1万1500台の生産体制をとるが、世界的に販売が好調なことから納期は7カ月となる。このため現在、製造で2シフト体制を敷き、納期を5カ月に短縮している。

 日本市場に対しても18年から日本への技術者派遣を増員し、アフターサービスの充実を進める。エディーとも「チームピカノール」を結成し、国内での技術者育成と販売拡大を目指す。

〈トピックス/サンコロナ小田などグランプリ/コンポジットハイウェイ・アワード2017〉

 中部北陸地域の大学、公設試験場、企業で構成する複合材料研究開発・人材育成プラットフォーム「コンポジットハイウェイコンソーシアム」はこのほど中小企業の炭素繊維複合材料(CFRP)に関する優れた技術・製品を表彰する「コンポジットハイウェイ・アワード2017」を実施した。

 アワードは全国からの応募に対して自動車メーカー、住宅メーカーなどCFRPのユーザー企業や研究開発拠点を持つ大学などが審査。複合素材部門グランプリにサンコロナ小田、準グランプリに米島フエルト産業▽複合材成形技術部門グランプリにアドウェルズ、準グランプリにフドーと浅野研究所▽複合材リサイクル部門グランプリにカーボンファイバーリサイクル工業とワメンテクノ――をそれぞれ選んだ。

 サンコロナ小田の受賞案件「薄層炭素繊維テープに熱可塑性樹脂をフル含浸し、等方性に積層したシート」は、同社のプレス成型用CFRTPプリプレグシート「フレックスカーボン」。炭素繊維を極薄に開繊し、現場重合型熱可塑性樹脂を完全含浸させた薄層テープの散布・積層を装置化した。等方性でボイド(気泡)がない高品質なシートを高い生産性で量産できる。1分間でのハイサイクル成形や繊維と樹脂が同時に流動し、高い賦形性と機械強度を両立させる。