「エコテックスⓇスタンダード100」/認証企業を紹介
2017年10月17日 (火曜日)
日本の「エコテックスⓇスタンダード100」の認証件数は累計で約4000件に及ぶ。エコテックス認証システムで安全でクリーンな生産背景を目指す企業一例を紹介する。(カテゴリー順)
〈日東紡/開発段階から安全性追求/さらなる取得も視野に〉
日東紡は「健康・快適な生活文化を創造する」企業集団を目指す。日東紡グループ品質管理規定では、安全性を確保することを重要項目として挙げ、商品の安全性を開発段階から追求し、国内外の法令順守はもちろん、各種規制への対応を推進する。エコテックスⓇスタンダード100は、接着芯地、ファイバー(グラスファイバー/PVC)、織物(同)や綿製ふきんで、認証を取得している。
「エコテックスは世界的に統一された試験・認証システムであり、製品群の安全性を客観的に評価することができる。また、製品の更なる安全性追求の参考になり、最新の規制動向に合わせた評価、顧客に対する自社製品の安全性訴求にも活用できる」と取得した。認証取得は中国工場や産業資材用途にも広げていく予定。
〈東洋紡、東洋紡STC/スーパー繊維でも取得/顧客の高まる要望受けて〉
東洋紡はPBO繊維「ザイロン」、高強力ポリエチレン繊維の「イザナス」「ツヌーガ」や複合繊維でエコテックスⓇスタンダード100の認証を取得する。東洋紡STCはナイロン/ポリウレタンのファイバー、綿/レーヨンなどの紡績糸、アクリル混紡糸や織物染め生地で認証を得ている。
東洋紡グループ製品安全基本方針では、製品安全理念を「人と環境に優しい技術を通して、より安全な製品を提供することで社会に貢献し、21世紀の豊かな社会作りを目指す」としている。エコテックスの認証取得は「製品安全に対する要求が年々高まり、これを踏まえて顧客の要望があったため」という。今後については、繊維用化学薬剤(染料、助剤、加工剤)を対象とする安全認証の「エコパスポート」などの普及にも期待している。
〈日本バイリーン/芯地などで安全性を証明/出荷前試験なども実施〉
日本バイリーンは芯地、パディング類、不織布芯地(ポリエステル)でエコテックスⓇスタンダード100の認証を取得している。製品輸出において、顧客に製品の安全性を証明するのが目的で取得した。
同社は安全な製品のみを提供するため、原料管理、工程管理、出荷前試験に注力する。原料については、定期的に原料メーカーへ含有化学物質調査を行い、安全性を確認。ホルムアルデヒド含有試験を実施し、安全性を確認してから出荷する。製造条件記録の作成・保管を行い、異常がないかを確認できる体制などを整えた。こうした体制作りにより、一部の顧客からは絶対的な信頼を得ており、顧客からの監査が簡略化したり、管理方法のアドバイスを要望されることもあるようだ。海外販売促進を視野に取得品番を増やす可能性もあるという。
〈シーアイランドクラブ/直接肌に触れるものに/原糸からの安全性を〉
シーアイランドクラブは、超長綿の中でも特に高級品種の綿糸を専門に取り扱う。「シーアイランドコットン」(西印度諸島海島綿)は、コットンでありながら「絹のような光沢とカシミヤのような肌触りを持つ」綿花の最高級品種で、西印度諸島海島綿協会によって厳重に管理されている。
高級品である故、最終製品の安全性だけでなく、その原料である原糸の安全性にもこだわり、海島綿紡績糸で、エコテックスⓇスタンダード100の認証を取得した。「ベビー用品、肌着、タオル、ハンカチなど直接肌に触れることの多い商品の安全性をアピールする」ためで、最も厳しい製品クラス1をクリアし、ベビー向けにも安心して使用できる。今後も商品の品位、品格、安全、安心をモットーに地球の財産である海島綿を絶やすことなく提供していく。
〈クラボウ/消費者の安全を重視/各種紡績糸で取得〉
クラボウは中空素材「スピンエアー」、軽くてソフトな素材「ファノン」、綿とウールの2層構造糸「ルナファ」、グラフト重合加工綿糸でエコテックスⓇスタンダード100の認証を取得している。同社は消費者の安全性を重視し、提供する製品の安全性の維持、向上を基本方針に掲げる。化学物質の適正管理から、省資源やゼロエミッションの推進など地球環境の保全にも取り組む。
「市場には環境問題や化学物質の安全性に対する関心の高まりがある。特に欧州を中心とした顧客からの要求も強まっている。海外には製品採用に認証取得を条件にする企業もある」ことに対応して認証を取得した。「社会を豊かにする技術革新を実現し、未知なるモノ作りに挑み、新しい価値を創造していく」クラボウの根底には安全性がベースにある。
〈テンタック/“安全性”で選ばれる/企業責務として体制作り〉
テンタックはプリントラベルでエコテックスⓇスタンダード100の認証を取得した。「製品の安全性を担保することは企業としての責務。エコテックスだけでなく、ISO14001、9001など各種認証を取得。各工場に品質検査室を設けて自主検査や外部機関への委託検査、記録を保管することでロットトレースを可能にする取り組みも行っている」という。
エコテックスの認証を取得したことで、「ユーザーへの当社製品の安全性の説明に納得感を持っていただきやすくなり、スムーズな取引ができる。エコテックス取得を条件に、というユーザーもおられる」。新規資材の取り扱いが毎年多くあるが、成分の安全性への社員の意識も高まったようだ。今後も“テンタック”ブランドが“安全性”を理由に選ばれる体制作りに万全を期していく。
〈SHINDO/欧州市場の要求高まる/リボンで認証得る〉
SHINDOはメーカーとしての企業活動と環境保全の両立、社会的責任のある企業としての自覚、安全・安心な商品提供を目的に環境活動を展開する。経済産業省のグローバルニッチトップ企業にも選出され、海外での販売も行う。エコテックスⓇスタンダード100の認証取得は「安全性を重視する欧州市場からの要求の高まり」が背景にある。
リボン(ポリエステル、ナイロン、綿、レーヨンなど)での取得により「欧州アパレル企業への商品訴求力が高まったほか、スポーツメーカーのRSL(規制物質リスト)基準試験の免除も一部可能になった」といった効果も出ている。今後も引き続き既存・新商品で認証範囲を広げる活動を進め、顧客・エンドユーザーが安心して使用できる商品の提供をグローバルに展開していく。
〈ジョイン/グローバルな対応目指す/靴下で認証取得〉
ジョインは国際化学物質管理WSSD2020年目標、国際的な制限物質リスト管理団体AFIRM、化学物質管理に取り組むアパレル団体ZDHCなどの規格をクリアするため、靴下でエコテックスⓇスタンダード100の認証を取得した。「安全性が確保された商品を消費者が手軽に求められるよう開発を進める。靴下生産に関わる紡績、染色、編立など、各工程のメンバーと意識統一して認証を得た」という。
海外輸出品質条件をクリアするこの認証を取得したことで、安全性の確保という開発方針がさらに進んだ。「得意先から2018年以降エコテックス認証商品での生産に変更するよう依頼があった」とし、18秋冬向けはエコテックス認証商品の中国生産も行う予定。グローバル化対応できる企業を目指す。
〈片倉工業/肌着でいち早く取得/安全という付加価値訴求〉
片倉工業は肌着でエコテックスⓇスタンダード100の認証を得ている。「国内肌着メーカーとして、いち早く認証を取得することで、他社商品に対して優位性を持つことができる。加工やデザインとは違う安全面での付加価値を商品に付けられ、セールスポイントとしてアピール可能。企業イメージとしてもプラスになる」という判断による。
取得当時はエコテックスの知名度もあまり高くなかったが、「現在は知名度もアップし、特に新規顧客に対して品質安全面の信頼を得られるようになった」という。生産面においても、より一層の品質管理を行う意識が高まっている。海外製であってもエコテックス規格の認証があれば安全性が担保される。このため、海外製品でも認証を取得して安全性をアピールしていくことも検討する。
〈丸仁/安全性は品質の一部/グローバル市場で必要〉
丸仁は熱転写のシートとラベルでエコテックスⓇスタンダード100の認証を得た。「日本の製造業の強みは品質であり、商品の“安全性”も品質に必要不可欠な要素として含まれる」という考えを持つ。認証取得は「当社の理念にも合致。市場のグローバル化により必要性を感じた」ことが理由である。
取得に際して、「各材料メーカーへの含有調査や問題のある材料に代わる代替品を探す」などに取り組んだ。そのことが、生産担当者の安全への意識向上や原材料の管理徹底にも寄与した。顧客の安心感もアップし、信頼性がさらに増したという。顧客メーカーの基準が異なる場合もあり、より国際基準としての発展を望む。ホームページにエコテックスⓇスタンダード100の認証取得を掲載するとともに、各種展示会でも積極的にPRしていく。