特集 スクールユニフォーム(3)

2017年08月21日 (月曜日)

〈菅公学生服/地域密着で学校と関係深耕/小中高全て採用増に〉

 菅公学生服(岡山市)のスクールスポーツ事業は、2017年入学商戦で採用校を堅調に伸ばしたことで、17年7月期が前期比増収になりそうだ。「小学校、中学校、高校とも例年より採用校を増やせた」(開発本部の田北浩之提案企画部長)ことに加え、スポーツウエアの専任担当者を関東だけでなく、昨年8月に関西にも置いたことで、「地域密着で学校との関係を強化しつつある」(田北部長)ことが奏功した。

 ブランドでは「カンコー」を中心に「カンコー×ファイテン」「リーボック」の順に新規の採用校を獲得。機能性だけでなくデザイン性をここ数年強化してきた効果が表れ、高校はブランドの採用率が高かった。業界ナンバーワンの透け防止機能をうたうスポーツウエア「ミエンヌ」は約50校の採用があり、販売を伸ばした。

 来入学商戦に向けては、昨年の総合展「ソリューションフェア」で打ち出した新商品の販売を拡大する。ファイテンでは切り替え素材に「アクアチタンⅩ30」の加工を施した商品を投入。リーボックでは“ベスト・フィットネス・ブランド”の要素を落とし込み、洗練したデザインのウエアを充実し、「ブランドを認知してもらう活動を強める」。

 ミエンヌは、ハーフパンツ「ハーフレックス」とのセット提案を強化。ハーフレックスは布帛製でありながらも主流のニット製に比べ、軽くて動きやすく、涼しいといった特長を持つ。

 8月1日に組織を改編して提案企画部を立ち上げ、スポーツだけでなく制服を含めたトータルでの提案も強める。ソリューションフェアや協賛する全国高等学校体育連盟を通じて、新たな販路開拓に取り組む。

〈トンボ/デザイン性高め、トレンド追う/差をつける“昇華転写プリント”〉

 トンボ(岡山市)のスクールスポーツ事業は、2017年入学商戦で中高を中心にスポーツブランド「ヨネックス」が100校以上に採用が決まり、累計採用校が800校を超えたほか、自社ブランド「ビクトリー」も順調に販売を伸ばし、17年6月期は前期比増収になりそうだ。今期も増収を計画する。

 売れ筋の商品の中でも、「オリジナリティーを出したいという学校のニーズを捉えることができた」(橋本俊吾執行役員営業統括本部MD本部長兼スポーツMD部長)と、昇華転写プリントを活用したデザインへの引き合いが増加。15年に美咲工場(岡山県美咲町)に昇華転写の一貫加工ラインを設置して以降、技術力を高め、ヨネックス、ビクトリーの双方で昇華転写によってデザイン性を高めた商品のラインアップを充実させてきた。

 新アイテムの開発も強め、昨年ウオームアップウエアとしての「ピステスタイル」に着目した「ピストレ」を投入。軽くて防風性が高いといった機能性や、昇華転写との組み合わせによる多彩なデザインから採用が増えつつある。マーチングウエアやチアウエアも、学校内の部活動だけに限らず、学校外でもニーズのありそうな市場の開拓が進む。

 来入学商戦に向けて引き続き、ヨネックスはブランド力を生かして市場を広げるとともに、昨年ブランドロゴを刷新したビクトリーは、プロモーションやフォーラムを通じてブランド力の強化に取り組む。昇華転写では他社が協力工場を活用して部分的なデザインにとどまる中、自社工場で全面に大胆な柄を企画するなど「デザインの幅を広げ、トレンドを追うことができる」(橋本執行役員)強みを生かし、市場での競争力を高める。

〈明石SUC・スクールスポーツ/選択肢広がる「デサント」/3年間で400校超の採用〉

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)のスクールスポーツ部は、ここ数年、「デサント」ブランドの採用を拡大している。2016年入学商戦が140校以上、17年が過去最高となる150校以上と広がり、「この3年間で400校を超える」(宮﨑将人スクールスポーツ部長)ペースで増え、採用校は累計で1500校を超えた。来入学商戦に向けても中高を中心に販路を広げ、100校以上の採用を目標に掲げる。

 採用が増えている要因として、認知度の高いブランドであることに加え、16年からこれまでとは一線を画すデザインの「エクストラモデル」を投入するなど、ラインアップを拡充し、「選択肢が広がっている」(宮﨑部長)ことが奏功している。

 来入学商戦に向けては、水着でスイムウエアブランド「アリーナ」を打ち出す。デサントを採用している学校を中心に提案し、販売拡大につなげる。

 デサントではエクストラモデルでデザインのアクセントにロゴを配したコンビファスナー採用の1300シリーズや、中高一貫校で全学年違うカラーリングが可能な1310シリーズなど投入。ベーシックモデルでは、学年色をイメージしアスレチックラインを引き立たせたトリコット使いの1330シリーズを打ち出す。

 さらに新商品はスマートフォンのアプリ「ココアル2」で詳細を見ることが可能で、自分の写真と合わせて着こなしを確認することができる。

 生産面では宇部テクノパークアソートセンター(山口県宇部市)で2次加工を増強するため、秋に拡張工事を予定する。

 17年5月期決算は、明石SUC単体のスクールスポーツ部として前期比6%の増収だった。今期は4%の増収を計画する。

〈ギャレックス/全国規模で拡大ねらう/映画「あさひなぐ」に協賛〉

 ギャレックス(福井県越前市)では地域別営業戦略やブランド戦略が奏功し、新規校の獲得が順調に進んでいる。今後も「まだまだ拡大の余地はある」(田中誠一郎スクール営業グループグループマネージャー)として同路線を追求しながら今2018年6月期も増収増益を狙う。

 田中グループマネージャーによると、同グループの17年6月期は売上高が前期比微増の46億円だった。17年入学商戦でライセンスブランドの「フィラ」「スポルディング」がともに新規校を獲得したほか、基幹自社ブランドの「ギャレックス」も採用校を増やした。

 地域別では関東、北海道、沖縄を重点地域に臨んだが、北海道ではフィラとギャレックスで数校の獲得に成功。沖縄、関東圏も増やした。

 18年入学商戦では関東、北海道、沖縄に加えて栃木や広島も「伸ばす余地がある」として拡大対象に挙げながら、それぞれのブランドで新商品も投入し、拡販を狙う。新商品はフィラで2品番、ギャレックス、スポルディングで1品番ずつ。希望者のみの販売のためまだ大きな数量にはなっていないが、「第5の商品」として期待のかかる長袖Tシャツやラッシュガードが好調で、今後も開発に力を入れる。

 同社は今夏公開の映画「あさひなぐ」に特別協賛する。乃木坂46のメンバーが起用されたことでも話題の同映画に協賛することで、販促を狙う。田中グループマネージャーによると同社の社是は「体力作りに奉仕する」。なぎなた部員たちの青春を描く同映画の趣旨に賛同し、協賛を決めた。同映画内で着用されるグリーンの体操服もギャレックス製。

〈ミズノ/ファッション+スポーツ/意匠性高めシェア拡大へ〉

 ミズノは、ファッションとスポーツを融合した意匠性の高いスクールスポーツウエアの企画・開発に力を入れる。それにより新たな学校での採用数を増やし、継続的な売り上げ拡大を目指す。

 利益面では、定番品の集約を進めると同時に、海外生産比率の大半を占める中国生産をタイ、ベトナムへと切り替えることで利益率を高める。

 今期は2018年入学生向けに意匠性の高い新商品を投入した。ツートーンカラーで、大胆な切り返しによる左右非対称のデザインが特徴。近年、体育衣料市場で好まれるようになったアシンメトリーのトレンドを反映した。

 機能面では動きやすさを実現する独自のカッティング「ダイナモーションフィット」や消臭機能を持つデオドラントテープを採用する。今回の新商品で新たな採用校増と中学でのシェア拡大を狙う。これまでミズノは中学より高校への販売比率が高かった。

 学校向けスポーツウエアの企画を手掛ける坂井弘司課長は近年の左右非対称が流行する背景について「プロスポーツウエアのデザインが体操服にも影響を与えている」と話す。

 ミズノの17年3月期の学校体操服関連(ウエア以外に学校指定シューズ・水着を含む)の業績は微増収増益だった。売り上げ規模は30億円。

 大手スポーツ用品メーカーがスクール事業を縮小した影響で、新規採用校が増え、売り上げ増に貢献した。利益面は品番の集約を進めたほか、一部の商品生産を中国からタイ、ベトナムに移したことにより改善した。現在の生産地比率は海外80%、国内が20%。海外のうち半分以上を中国生産が占める。

〈ユニチカメイト/「プーマ」100校超え/レディースを販売開始〉

 ユニチカメイト(大阪市中央区)は学校向けのスポーツ衣料として展開するライセンスブランド「プーマ」で今期から女子高校生用にレディース専用商品を新たに企画した。女性のスタイルにあった企画を新たな商品カテゴリーとすることで女子校でもシェア拡大を図る。

 プーマは5つの商品群で構成する。価格帯別に「トップ」「ミドル」「ベーシック」、小学生用の「ジュニア」、そして今回「レディース」が新たに加わった。清水義博社長によると2014年の販売開始から累計採用校数は今期(18年3月期)で100校を超える見通し。

 現在の累計採用校数は80校後半。発売開始から平均すると年間20校以上のペースで増加が続いている。売り上げに占める販売先の割合は高校が5割、中学校が4割、小学校が1割ほど。

 世界的に知られるスポーツブランドであることや、シンプルなデザインと色合い、着心地の快適さに配慮した設計や機能素材の採用で支持を広げている。

 販売地域としては東京圏や京阪神地域の都心部、東海地方、九州南部で好調。今後は中京圏や福岡を中心とする北九州、東北地方でも販売を強める。

 プーマはインドネシアでの生産比率が最も高く、価格帯や納期によって中国、国内でも生産する。

 清水社長は「20年4月には累計150校の採用を目指す」とし、「プーマの販売強化で全社売上高20億円の早期達成を目標とする」と話す。

 ユニチカメイトは14年3月にプーマジャパンと日本国内でのプーマブランドの学校向け体育衣料品類販売に関する契約を結び、15年に本格販売を始めた。

〈児島/“保護者に向けた戦略”強化/3テーマ軸に商品開発〉

 児島(岡山県倉敷市)のスクールスポーツ事業は2017年入学商戦、独自性の高い商品の販売が広がり採用校を伸ばしたものの、節約志向から売り上げは伸び悩んだ。「以前ならシャツを2枚買っていたところが、1枚しか買わないケースが増えている」(山本真大副社長)ことから、来入学商戦に向けて戦略を転換。手入れのしやすさなど「保護者に向けた戦略」を強め、実用的な機能性を高めた商品を拡充する。

 具体的には①視認性を高め安全性を意識したキャッチ②環境に配慮した素材を使ったエコ③手入れがしやすい機能満載のケア――の3テーマを軸に商品を開発。来年発刊を予定するカタログでも3テーマに沿った形で商品を掲載する。

 ケアがテーマの新商品は、スクールスポーツ用途の物性に合うように東洋紡と共同開発した素材「速衣(はやい)」を使ったウエアを投入。洗濯、脱水後から着用できるまでの時間が約40分と短く、「夜に洗い忘れても、朝洗濯して干しても学校に持って行ける」ことをコンセプトに、取り扱いやすさを追求した。

 撥水(はっすい)や形態安定、速乾、涼感など10個の機能を持つニットシャツ「NEX10(ネクスト)」では、中高生向けしか従来販売していなかったが、小学生向けも商品化。襟部分には身頃と同じ生地を使い、芯地によってよれることがなく、シルエットを美しく保てる。同製品はポリエステル100%だが、オーガニックコットン100%を使った「クコット」も展開する。

 ほかにも、素材面ではデニム調素材を採用するなど、独自性が強く、付加価値を高い商品開発で、生徒減で厳しい市場環境にある中でも売り上げを伸ばす。

〈瀧本/「ロット」の採用に拡大/昇華プリント新投入〉

 瀧本(大阪府東大阪市)は2018年入学生に向けてイタリアのスポーツブランド「ロット」の販売に力を入れる。今期から昇華プリントでデザイン性を高めた商品を新たに投入する。10月19、20日に東京で、10月24、25日に大阪で学生服展示会を開き、その中で披露する。

 販売では16年に導入した、タブレット端末を使ったシステム「T―PIT(ティー・ピット)」を活用する。営業先の学校で、自社ブランド「タイガースポーツ」とライセンスブランドのロットの2ブランドから端末の画面上で学校側の好みに合ったウエアを選択してもらうことで、先方に最終製品のイメージをその場で伝えることができる。製品見本を作成する手間やコストを抑えられるため効率的な営業につながる。学校ごとの細部のカスタマイズも可能。

 16年6月期のスクールスポーツ分野の売上高は前期比8・3%増の8億6200万円だった。17年6月期も横ばいを予想する。

 タイガースポーツは引き続き品番の集約を進め製造コストの改善につなげる。ロットは今年で導入8年目を迎えるが、堅調な伸びが続く。既に私立高校を中心に100校弱が採用している。「今期も1校、2校でも採用校を増やし維持・拡大を続けていく」(寺前弘敏生産本部副本部長)。今期の販売傾向としては「フルモデルチェンジが減る一方で、マイナーチェンジが増えている」(同)という。

 スポーツ用品メーカーのミズノとの提携も瀧本の強み。「ミズノ」ブランドの体育館シューズや、体育の授業で使う衣料品以外の関連商品も扱い、学校側の要望に応じて、ミズノから仕入れ販売する。

〈ゴールドウイン/「スクリート」新製品3型/採用校数5%増めざす〉

 ゴールドウインはスクールスポーツウエアブランド「SCHOLETE(スクリート)」で「Vライン」「Sブロック」「アーチタイプ」の新商品3型を開発した。全てシルエットを見直し、フィット感を高め、動きやすさを追求。18年度の採用校数5%増を目標とする。

 特徴の一つである立体裁断は、人間運動力学をベースに静止時、運動時の体の状態を解析し、動きやすさを追求したカッティング・縫製システムを採用。VラインとSブロックの袖口は、従来のリブ仕様と比較して、軽量で締め付け感の少ない「バインダー仕様」を取り入れた。

 素材はソフトで快適な「アクアドライ」。肌側の組織密度を粗く、表側を高密度にした2重構造組織で、汗を素早く吸い上げて乾かす。マルチファイバー使用によるソフトな着心地と美しい光沢を併せ持つ。

 アーチタイプの素材は丈夫で快適な「コンフォートセンサーⅢ」。生地表側を密に、肌側を粗くした特殊構造で、毛細管現象により汗を素早く吸収・拡散させる汗処理機能に優れた素材。肌面はメッシュ調組織でサラッと快適。

 VラインとSブロックは主に高校生、アーチタイプは安心感のある耐久性の高い素材を採用しており、着用頻度の高い中学生をターゲットとする。