高視認性特集(5)/素材の力が機能を高める
2017年08月09日 (水曜日)
〈東レ/多彩なバリエーション/周辺商品にも積極提案〉
東レの機能製品事業部は高視認染色素材「ブリアンスター」で多彩な商品バリエーションを用意する。作業服だけでなく学販衣料、さらに周辺商品にまで積極的に提案している。
ブリアンスターの最大の特徴は、ポリエステル100%から綿混まで多彩な生地バリエーションをそろえる点。いずれの生地もJIS規格、ISO規格に則った性能を確保していることはもちろんのこと、防汚加工「テクノクリーン」など他の機能加工と組み合わせることも可能。
こうした強みを生かし、既に企業別注作業服で幾つか採用されたほか、備蓄アパレルも採用の動きを強める。
さらに学販用途にも積極的に提案する。衣料だけでなくレインコートや帽子、ベスト、ランドセルカバーなど周辺商品への応用も重視。現在のJIS規格、ISO規格は路上作業着向け規格だが、欧州連合(EU)の一般衣料向け規格「EN1150」を応用した商品開発も進める。
こちらは8色まで使用可能なため、より汎用性の高い素材提案が可能になる。
〈ユニチカトレーディング/特殊加工で機能向上/ユニチカスパークライトとも連携〉
ユニチカトレーディング(UTC)は高視認染色素材「プロテクサ―HV」をベースに他の機能を付与して機能を向上する開発を進めている。グループの再帰反射材メーカー、ユニチカスパークライトとも連携し、海外展示会でも積極的に提案する。
プロテクサ―HVは別注ユニフォームを中心に徐々に採用実績が上がり始めた。特にポリエステル・綿交織品は夏物として評価が高い。こうした中、UTCではさらなる商品開発を進める。プラズマ加工による染色耐久性の向上や、難燃素材への高視認染色、織組織による表面変化などである。
欧州連合(EU)の一般衣料向け高視認性規格「EN1150」を応用した商品開発も進める。こちらは8色まで可能なため、学販用途などに向けて提案のバリエーションが広がる。
再帰反射材メーカーのユニチカスパークライトとも連携を強化。10月に独デュッセルドルフで開かれる国際労働安全機材・技術展「A+A2017」にも共同出展し、再帰反射材と高視認染色を組み合わせた開発などでグローバル提案も進める。
〈シキボウ/綿混の「新染組」が好評/夏場に高通気タイプも〉
シキボウは高視認分野で 蛍光色テキスタイル「新染組」をアピールする。綿混でありながら高視認性安全服の国際規格「ISO20471」と、それに準ずる日本工業規格「JIS T8127」に対応した高視認素材だ。
ユニフォーム用途の高視認素材は一般的にポリエステル100%が市場で高いシェアを占めるが、新染組はポリエステル80%・綿20%と綿混であることが大きな特徴の一つ。綿混ならではの肌触りや吸湿性が好評でカタログユニフォームアパレルの定番商品の素材としても採用されている。
綿混素材は鮮明な色調に染めるのが難しいとされるが、シキボウ江南(愛媛県江南市)の染色技術で実現した。
高視認市場の拡大とともに機能へのニーズも高まっていることから、校倉造り構造織り組織による高通気素材「アゼック」や、立体構造編み組織で通気性を高めた「アゼック」ニットをベースにした商材も新染組として打ち出す。
昨年から安全作業服だけでなく学童の通学用帽子、かばん、靴など周辺商品でも高視認素材の普及を目指す動きがあるため、さまざまな企画に適した蛍光オレンジ、蛍光グリーン、蛍光ピンクといった新色も追加した。服飾雑貨を含むファッションアイテム全般へも提案する。
〈クラボウ/海外でも注目される/防炎生地に高視認色〉
安全性への企業の関心が高まる中、クラボウの防炎生地、「ブレバノ」への需要が増えている。この生地に高視認性を付与することも可能。同社は、ドイツのデュッセルドルフで2年に1回開かれる国際労働安全機材・技術展「A+A」に2013年から出展し、ブレバノ(海外での商標は「クラプロ・FR」)をアピールしている。前回展(15年開催)で、欧州では珍しいとされるオレンジの高視認性色を表現したブレバノを出品し注目された。
ブレバノは、カネカのアクリル系難燃繊維「プロテックス」と綿との混紡糸を使った生地で、25年以上前に発売された。現在、帯電防止性を備えた「ブレバノプラス」、落綿使いでエコマーク認定対応の「ブレバノエコ」、防炎性と強度を高めるためにアラミド繊維も使った「ブレバノネクスト」、透湿防水や高視認などの機能を付与した「ブレバノF」など、さまざまなタイプの織物に加え、編み地「ブレバノKT」もそろえている。ワーキングウエアを中心に、消防団服、シーツなどにも採用されている。
〈岐セン/高視認 10%増見込む/薄地蛍光レッドの確立も〉
染色加工の岐セン(岐阜県瑞穂市)は2017年度、高視認性生地の加工量で前期比10%増を目指す。後藤勝則社長は「15年度から量産に入ったが、昨年度は横ばい。今年度は前年を上回る水準にある。高視認の市場認知度が高まっている」。と分析。将来的にはユニフォーム以外への広がりも期待する。
高視認用蛍光生地の染色加工は経糸ポリエステル長繊維、緯糸に綿糸の交織品などを手掛ける。高視認用は蛍光のイエロー・オレンジ・レッドの生地が求められるが、色相、輝度などをクリアするには染料に加えて織り構造なども重要になる。
しかも、蛍光レッドは輝度を維持するのが難しい。特に薄地はより難度が増す。静電気を防止するため、導電繊維を使う場合や他の機能加工と組み合わせた際はさらにノウハウが必要とされる。
同社はスキーウエアはじめ蛍光染料を使った染色加工に長年の実績がある。これを生かしながら、発注先の生地メーカーと協力(織り構造の工夫)し、薄地などの蛍光レッドの確立を進める。
〈ケネック/高視認性 より身近に/広がる反射材の用途〉
高視認性衣料メーカーのケネック(東京都文京区)はJIS制定に先駆け、高品質・高機能な安全服を開発、提供している。代表的な商品「オキュペーショナルセーフティベスト」は蛍光生地と反射材が発揮する視認性を実感できるアイテム。
生地は国産ポリエステルで通気性に優れるほか、スマートフォン収納可能なポケット、汚れに強い反射テープ「リフレクサイト」の採用、360度の視認性を確保するなど、実用性を加味している。災害救援作業用の「活動ベスト」、幅広の70㍉反射テープを配した「ポリス70型ベスト」といったバリエーションもある。商品は「危機管理産業展」といった展示会で紹介。空港や消防関係の採用実績が少しずつ増えている。
一方で一般向け商品も手掛ける。通勤や通学、サイクリング、登山などで着用できるセーフティーベスト、蛍光色の生地を使用したベストなどだ。
同社ではサインメディア事業として反射シート・光拡散シートを展開しており、アメニティグッズなどのオーダーにも対応している。三好健一社長は「携帯や着脱が便利な衣料やグッズを介して反射材や蛍光素材の効果を実感することで、高視認性安全服の普及を加速化させたい」と語っている。
〈上原商店/高視認が業績けん引/新商品を9月発売〉
上原商店(大阪市北区)は素材から最終製品まで幅広い高視認アイテムをそろえる。主な商品として安全服・ベスト、蛍光生地、反射素材・テープ、アパレル副資材がある。
独自ブランドで高視認素材「ユーイー・ライト」、高視認ベスト・ウエア「ユーイー・ビーム」、蛍光生地「ユーイー・ファブリック」を展開する。
高視認関連では近年、ニーズの多様化に伴い、工業用洗濯対応、高通気性反射材、汗汚れ対応反射材といったバリエーションが充実する。
大手スポーツアパレルへ高視認素材を使った副資材のOEMも行う。これまで転写マーク、織りネームで実績がある。
ユニフォーム用途の高視認商品は2010年頃から販売に力を入れてきた。市場での需要拡大とともに全体の売り上げをけん引し、直近の17年3月期で6期連続の増収増益を達成した。
9月から高視認ベストの新シリーズ「ハイビズベスト」を販売する。折り畳んでポケットに収納できるタイプやスポーツメッシュベストなど計7タイプがある。1着500円、50着入りで販売する。
上原和也社長は、「6年前の高視認の実績はほぼゼロだったが、JIS制定前後から着実に案件が増えている」とし「20年までには全国のあらゆる現場に高視認素材を供給できるよう尽力したい」と話す。
〈ミツボシコーポレーション/国内屈指の品ぞろえ/豊富な情報で最適の提案〉
服飾資材商社のミツボシコーポレーション(広島県福山市)は、高視認副資材で国内屈指の品ぞろえと豊富な情報網を強みとする。
“高視認”という言葉が定着していなかった2000年代から、海外での高視認関連の情報収集を進めており、国内に加え欧米メーカーにも調達網を持つ。スリーエムジャパングループ、オラフォルジャパンなど世界大手メーカーの販売代理店となっている。
社内では営業社員を対象に高視認分野に関する勉強会や工場見学を定期的に実施しており、顧客ごとのニーズに合った最適な提案ができる体制を整える。
佐藤圭浩取締役は「多様化する商材の特徴を熟知し、販売に際してはそれぞれのメリット、デメリットを説明できるようにしている」と話す。
仕入れ販売だけでなく、取引先のニーズを反映させた、独自の商品の開発も行っている。現在、副資材メーカーと共同で特定の条件下で劣化しにくい反射材を開発中だ。
第1四半期(17年4~6月)の高視認分野の業績は前年比わずかながら増収で推移する。企業別注向けの反射材が年々増加傾向で、夏場の暑さや蒸れ対策として、半袖用途やパンチングすることで通気性を高めた反射材の売れ行きが好調という。