産資・不織布の備忘録(10)/「テクテキスタイル17」から/寝装・インテリアでも成果

2017年06月02日 (金曜日)

 東洋紡は「テクテキスタイル17」で、溶融紡糸による高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」(同社の「イザナス」、DSM「ダイニーマ」はゲル紡糸)、PBO繊維「ザイロン」の高性能繊維に絞り込んで提案した。

 実はツヌーガ、ザイロンとも最終消費地は欧州が多い。しかし、代理店には浸透するも「末端ユーザーには素材の知名度が低い」(藤井俊哉ス―パー繊維事業総括部長兼イザナス・ツヌーガ事業部長)。同展出展はブランド力を高める狙いもある。

 ツヌーガの主力用途は耐切創用手袋で、手袋の生産は韓国、中国、南アジアで行うが、最終消費地は欧米市場になる。一方、耐熱性・難燃性、高強力・高弾性と高性能繊維ではずば抜けた性能を持つザイロンも欧州の耐熱分野やロープ用は欧州が主要市場。面白いのは前回展に続いてツヌーガを使った冷感生地「iCOLD」も提案した点。同展を通じた新規開拓が実っており「今回展でも反応は良かった」と言う。因みにツヌーガは昨年12月に倍増の年産1000トンに拡大している。

 寝具・インテリア用の開拓を狙ったのは、モダクリル繊維大手のカネカも同じ。「カネカロン」「プロテックス」の欧州販売は防護服、安全作業服向けに拡大基調にある。特に英国向けは綿混でも鉄道、道路作業員用の蛍光オレンジレッドに対応できる強みが評価され、引き合いが増加していると、カネカ・ヨーロッパ・ホールディング・カンパニーのビジネスプランニング(カネカロン)の小山太郎マネジャーは言う。

 その同社はインテリア・寝装向けの欧州開拓に向けて「エコテックス100クラス1」を取得した製品を新開発し出品した。衣料用では既に取得済みだが、「病院用シーツはじめ関心を示すところがあり、何社かはビジネスになりそうだ」と手応えを得た。

 産資・不織布の展示会で、寝具用のビジネスになる。テーマが絞られた展示会でも新顧客開拓につながる可能性があるということだろう。

 その面で前回展から出展する信州大学繊維学部の狙いも面白く、「海外企業や海外の研究機関とのコラボレーションにつなげる」(繊維学部の森川英明教授)ためと言う。ポスター展示により若手研究員の成果をアピールする一方、世界最大の産業用繊維・不織布の国際見本市で「新素材の情報収集」も行った。