産資・不織布の備忘録(4)/「テクテキスタイル17」から/ノボロイド繊維をわた染め

2017年05月25日 (木曜日)

 東レのLCP繊維=高強力ポリアリレート繊維参入に対して、「ベクトラン」で先行するクラレの松尾信二繊維資材事業部長は、「これまで通り、ベクトランは用途開拓に努力を続ける。競合素材があるのは長い目で見ればよいこと」と語る。

 確かに高強力・高弾性が特徴の高性能繊維はパラ系アラミド繊維のデュポン「ケブラー」と帝人「トワロン」のように競合しながら、市場を広げてきた。今では韓国・コーロン、暁星、ヒュービス、中国の煙台泰和新材料なども事業化し、さらに競争は激しさを増すが、一時的な落ち込みを除けば基本的に成長してきた。

 つまり、ある高性能繊維メーカーが「当社製品と高強力ポリアリレート繊維との競合が増えると脅威になる」と警戒するように、東レの参入により、同繊維の市場は今後、拡大するかもしれない。それだけに、東レ「シベラス」の登場は、高性能繊維市場で、インパクトがあった。もちろん、需要家にとっても選択肢が広がるメリットがある点は言うまでもない。

 シベラスに次いで興味深かった日本企業の新製品がある。群栄化学工業(群馬県高崎市)が参考出品したノボロイド繊維「カイノール」のわた染め品だ。

 同社はドイツの販売子会社、カイノール・ヨーロッパとして、テクテキスタイルの常連組。カイノールはフェノール樹脂を繊維化したもので、金茶色の色から成る。難燃性(LOI値30~34%)、耐熱性(長時間使用時150~250℃)に優れる。さらに燃えても溶融せず炭化し、有毒ガスも発生しないなどの特長を生かした防炎用途に加え、炭素繊維や活性炭素繊維の原料にもなる。これは耐熱性、難燃性が特徴の高性能繊維にはない特徴でもある。

 一方で、染まらないために用途開拓にも限界があった。そのカイノールを7色にわた染めした新製品を今回展で参考出品ながら初披露した。

 同製品はイタリア企業で染色したもので技術確立しているわけではなく、色むらもある。ベンゼン環を持つとほとんど染まらないだけに、「来場者からは『染まるならば防護衣料に使いたい』との反響もある」(営業・マーケティング本部海外開発室の村田晋一氏)。カイノールの欧州販売は航空機の内装材用などをメインとする。わた染めがもしも完成すれば、新たな用途展開が期待できるだろう。