産資・不織布の備忘録(3)/「テクテキスタイル17」から/東レのLCP繊維に関心

2017年05月24日 (水曜日)

 「テクテキスタイル2017」に出展した日本企業の新製品の中で最も注目されたのは、東レの液晶ポリエステル(LCP)=高強力ポリアリレート繊維「シベラス」だろう。同繊維はパラ系アラミド繊維や高強力ポリエチレン繊維と同じく高強力・高弾性に優れた高性能繊維の一つ。これまで世界で唯一、クラレが「ベクトラン」(年産能力1000トン)の商標で生産販売してきた。ベクトランの事業化は1990年。以来、同繊維へ参入する企業はなかっただけに、注目度が高いのは当然でもある。

 シベラスは2017年度中に量産体制を整えて18年度から販売を開始するが、初披露の場が今回のテクテキスタイル。東レは1997年から原料となるLCP樹脂を生産販売する。繊維の事業化により「ポリマーから繊維まで一貫生産を有する世界唯一のメーカー」である点を訴求。繊維で18年度に5億円、21年度に10億円の売上高を目指す。

 そのシベラスと先行するベクトランとの違いはどこにあるのか。東レによると、ベクトランに比べて引っ張り強度が高いほか、ポリマーからの一貫生産によるコスト競争力、得意の高次加工を生かした加工品開発――などと言う。同社ブースの壁面にあった資料を見ると、強度は23~24cN/デシテックスと、確かにベクトランの高強力タイプを若干上回っていた。

 金色のシベラス原糸をチーズで展示した下には船舶用ホーサー(係留索)の製品も出品。同展ではこうしたロープのほかスリングベルト、光ファイバーのテンションメンバーへの採用や新用途の探索を狙った。

 東レの高性能繊維は炭素繊維を除くと、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、フッ素繊維など耐熱性や難燃性を特徴とするものが主力。高強力・高弾性を有する、いわゆる“スーパー繊維”は米デュポンとの合弁会社、東レ・デュポンによるパラ系アラミド繊維「ケブラー」(年産能力2500トン)のみだった。

 東レは日本企業で突出した繊維事業の規模、収益力を持つ。しかし、パラ系アラミド繊維でケブラーと世界市場を二分する帝人に比べると、スーパー繊維の世界では物足りなさがあった。それだけに高強力ポリアリレート繊維への参入で、ケブラーを含めた同社のスーパー繊維事業がどう変わるのか、興味深い。長年、スーパー繊維を手掛ける日本企業も注目している。