特集 カーペット(4)/素材は値上げの年に/素材メーカー&商社

2017年04月19日 (水曜日)

〈東レ/新素材を積極投入〉

 東レ産業資材事業部が扱うカーペット用BCFナイロンの2018年3月期は、前期比10%増収を目指す。新たに開発したBCFナイロンを投入し、主力のタイル、車両用オプションマットを軸に拡販を図る。

 タイル用は酸性染料に染まりにくく、杢調柄などを表現しやすいペール糸も投入して拡販する。車両用オプションマットは、黒などの原着糸の需要が増しており、今期も原着糸の拡販を図る。さらにタイル、家庭用で、意匠性を高める高光沢糸にバリエーションを持たせる。中期的には防汚、消臭、抗菌など衣料用で展開する東レの高次加工も応用していく。

 カーペット用ナイロンの値上げについては、「50円近く値上げする」形で需要家と最終的な詰めの段階にある。

〈廣岡紡績/ヒートセット加工機導入〉

 廣岡紡績は、パワーヒートセット社(ドイツ)のヒートセット加工機「パワーヒートセット」を6月に導入し、今夏をめどに本格稼働へつなげる。投資額は1億円程度。2交代制で1日17時間稼働させて月産50トンを目指す。

 同社はこれまでスッセン製の中古ヒートセット機で月20トン生産しており、今回設備を更新することでキャパシティーが実質30トン増えることになる。市道裕久社長は、オリンピックまでカーペット市場が伸びることが見込まれる点や、業界で撚りセット加工工程が逼迫(ひっぱく)している状況から導入を決めたとし、「ゆくゆくは月産70トンまで高めたい。(今回の投資で)できるだけ正常な状態に近づけられるように業界の役に立ちたい」と語る。

〈比楽紡績/新規採用で若返り〉

 カーペット用紡毛糸生産で国内最大手とされる比楽紡績は2016年から今年にかけて日本人6人を採用した。同社の従業員の平均年齢は65歳程度となっており、若手を中心に採用して若返りを図るとともに正社員化を推し進める。設備面でも「10、20年先を見て」(比楽一郎取締役営業部長)投資を行う。

 17年9月期は3月末まで前期比増収増益。主力のウール糸以外に、デュポンの植物由来ポリトリメチレン・テレフタレート(PTT)繊維である「デュポンソロナファイバー」との複合糸にも注力している。

 同社では自社発注分の加工賃を上げた。自社負担は増すが、わた染め、糸染め企業が減少する中、業界全体で事業継続を図る必要があると指摘する。

〈三菱ケミカル/繊維資材営業グループに〉

 三菱化学、三菱樹脂、三菱レイヨンが統合して、4月から三菱ケミカルとなった。カーペット用ポリプロピレン(PP)長繊維販売は、高機能成形材料部門繊維本部繊維素材事業部繊維資材営業グループが担う。

 カーペット用PP長繊維「パイレン」は、MRCパイレンで製造販売していたが、16年4月に三菱レイヨンが吸収合併。合併後は繊維資材販売部が営業を担っていた。

 今回も、PPやアクリルなど素材別の組織ではなく、形態・用途別組織になっているとし、同グループマネジャーには、佐野博之元MRCパイレン社長が就いた。

 17年3月のカーペット用途は前期比微増収。オプションカーマット、タイル用は堅調だったが、家庭用が苦戦した。

〈豊通マテックス/今秋冬めざし新素材投入〉

 豊田通商グループ、豊通マテックスのカーペット部門の2017年3月期は、前期比7~8%増収、4~5%増益となった。

 カーペット分野は原料と製品の販売に分かれ、原料はタイルやカーマットのパイル糸が特に伸びて増収。人工芝も伸びた半面、家庭用途は原料、製品販売とも減収となり、既存事業は横ばいだった。

 一方でインテリア分野の新規ビジネスがスタートし、売り上げ全体を押し上げた。

 今期は家庭用カーペット向けで、17秋冬を目標に新素材を投入する。既存のカーペット用撚糸加工ルート外の国内工場を活用してテクスチャーなどを工夫したもので、「(低迷する家庭用カーペット市場の)需要を喚起できれば」(河野義郎社長)としている。

〈インビスタ/原着糸の販売割合高まる〉

 インビスタ ジャパンは、BCFナイロン「アントロン」を販売する。原着タイプの豊富な色数を備蓄販売するのが強みで、994デシテックス(T)と1385Tをそろえる。994Tは2015年末に67色にバリエーションを増やした。1385Tは80色をそろえる。

 原着タイプはここ数年、売り上げに占める割合を高めており、16年12月期は50%程度まで高まっている。

 16年12月期の業績は前期比横ばいだった。今期は「家庭用を拡大していけるようにマーケティングを進める」点をポイントに挙げる。

 同社ではナイロンについて1キロ当たり75円の値上げを打ち出しており、需要家に対して「75円近くで最終の詰めの段階に入っている」としている。

〈シンコーケミカル/最新鋭の紡糸機保有〉

 シンコーケミカルは、ポリプロピレン(PP)長繊維を製造し、月産能力は240トンに上る。

 同社はノイマーク社製紡糸機を保有する。1330デシテックス(T)から4000Tまで幅広い繊度に対応できる。原糸に膨らみを持たすことでボリューム感のある製品に仕上げることが可能となっている。原糸カラーのバリエーションが豊富であり、さまざまなカラーニーズに対応することができる。

 加えて同社では環境対応の一環として、京都工芸繊維大学とコラボレーションし、PP製造時に発生する繊維くずを利用してカラフルマグネットバーなどを製品化するリサイクル活動に取り組んでいる。

〈丸紅インテックス/原料、製品とも堅調〉

 丸紅インテックスのリビング部はカーペットをはじめ、寝装寝具、タオル製品、インナー、ルームウエアなどの商品の国内・輸出入・三国間取引を行っている。

 カーペット事業は、原料ビジネスと製品ビジネスがほぼ50%ずつ占める。2017年3月期は原料、製品とも堅調で、事業全体でも前期比増収増益で推移した。

 家庭用は16年、17年1~3月も全般的に市場の盛り上がりに欠けているが、同部はラグ製品が堅調だったという。

 小野隆リビング部長は、今期の計画について「大きな伸びは見込めない」と慎重さを見せる。「国内カーペットの規模がこれ以上増えるのは難しい」とし、「市場でのシェアを高めていく」戦略を引き続き推し進める。