この人に聞く/日本繊維産業連盟 会長 鎌原 正直 氏/産業構造を捉え直す
2017年02月20日 (月曜日)
1月18日、日本繊維産業連盟会長に就任した鎌原正直氏(三菱レイヨン相談役)。“川”に例えられる繊維産業構造の捉え直しが、市場の創出・拡大に向けて必要との自らの考えを語る。
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――産業のフロントランナーである「繊維」をどうご覧になりますか。
日本繊維産業は他産業に比べて早い時期に各企業が構造改革を迫られ、新素材、新用途、高機能製品を開発して加工技術を磨いてきました。サプライチェーンもグローバルに広がった今、この経験は、世界の繊維需要が拡大基調にあることを考えると、潜在力であり、可能性でしょう。
――日本の繊維産業をまとめる繊産連の存在意義をお聞かせ下さい。
繊産連は日米の貿易摩擦、プラザ合意などを経て、通商問題でも業界全体の意見集約とその表明を一貫して行ってきました。
数ある業界団体の意見を調整し、一つの方向性としてまとめる組織例は、他産業には少ない、繊維産業の特色です。「ミラノ・ウニカ」(MU)展への協力、「J∞クオリティー」制度の推進もその成果ですし、取引慣行の是正に向けた取り組みに象徴されるように、行政と一体的な活動もできていることも重要でしょう。意見集約と発信力を伴った表明の役割を継続しなければなりません。
――日本の繊維産業は中国とどう向き合うべきだとお考えですか。
生産面でも、消費市場として今後、開拓していく面でも「切っても切れない関係」であることが大前提です。競合で切磋琢磨(せっさたくま)していく部分と協調していく部分の両方が必要でしょう。技術面は、中国の追随が加速しているので日本の繊維産業も競合しなければなりません。一方で、日中韓繊維産業協力会議を通じた協調関係作りは東アジアが世界の繊維産業をリードするために欠かせませんし、特定芳香族アミン対策として稼働したホワイトリスト管理システムは、衣料品生産で日中が協調できていることを示す好例です。
――日本の繊維製造業を支えるテキスタイル産地が苦境に立たされています。活路はどこにあるでしょうか。
川下となる市場が国内でも、海外展開という意味でも広がらなければなりません。汎用性の高い繊維が久しく出ておらず、素材メーカーの生産が海外に移る一方で、市場はすごい勢いで変化し、その影響を川中の産地企業が受けています。困難な部分が大きい現状を可能性に転じるには、市場という“海”を“大海”にすることが必要で、そのためには市場のニーズ、シグナルにいかに対応するかという考え方にもっと比重を置いた方が良い。
その意味で、川上・川中・川下で表現される繊維産業の構造をフラットに捉え直して良いと考えています。MU、J∞クオリティーやクールジャパン事業と連携した世界への発信はその一環です。