特集 17春夏 オフィス&サービスウエア(3)/変化に商機を探せ〈商社編〉

2017年01月31日 (火曜日)

 英国のEU離脱、米国大統領選と大きな出来事が世界を揺るがした2016年。影響が表れるのはまさにこれから。マクロな動きと国内市場の双方を見ながら、商社からは「変化から商機が生まれる」という前向きな言葉も聞かれる。

〈価値深堀りし提案/組織の力生かす/伊藤忠商事〉

 伊藤忠商事は17年、部門として掲げる課題「アルファプラスOEM」をさらに進める。OEMは商社の主力事業だが「単に海外で作ってコストを抑えるのでなく、新たな価値を付加する手法を考えてからモノ作りに取り掛かる」(ファッションアパレル第一部機能衣料課)との取り組み姿勢。グループ会社の伊藤忠ファッションシステムの企画提案力やブランド・ライセンスのノウハウなども生かし「機能衣料課が橋渡し役となり組織全体の機能を深掘りし価値を提案したい」と話す。

 足元の商況も堅調。16年は新規の大型案件に加え、既存案件の特注もあり数年来、円安と原材料高で採算が厳しかったリピート案件についても改善されつつある。「副資材コストの見直しや、協力縫製工場の開拓などを継続、効率化に向けてユニコの生産管理チームと取り組んだ」ことも奏功。引き続き新規案件に積極的に取り組み、通期計画の達成を目指す。

 もう一つの切り口に「安全・安心」を掲げる。2004年からバーコードやICタグの活用に着手、最近は金融、鉄道関係のユニフォームで導入が進む。「コンプライアンス強化の一環で入退室管理やウエアの紛失防止といった需要は高まっている。当社がノウハウを提供できる部分も増えていくはず」と期待している。

〈カジュアル化への対応強化/市場ニーズ読む/豊島〉

 豊島のユニフォーム事業のうちオフィス・サービスウエアは、在庫調整気味だった前年に比べ接客業向け、飲食業向けの案件が動きだしてきたという。「全体ではまだ伸びを実感できるほどではないが、20年に向けて商業施設のメンテナンスなど、ソフトワークの分野も需要が増えていくと予想している」(東京二部三課)と対策を進める。

 ワーキングウエアのカジュアル化は、カテゴリーを越えてサービス分野で採用されるなど新しい動きも。「カジュアルは豊島が得意な分野。営業企画室との連携で、カジュアルを前面にしながら素材、生産力といったユニフォーム事業の強みと相乗効果を出していきたい」と意欲を見せる。

 17秋冬素材ではオフィス・サービス向けにニット、ジアセテートの幅を増やし、色柄もシックな表情から華やかなプリントなど幅を出した。

 定番ともいえるチェックは先染めやウール混で上質感を出し、プリントはメッシュ調の素材を用いて軽さを出す。採用が多い14ゲージのニットでは天竺ボーダーやストライプ、ジャカードなどカジュアルなテイストを加えた。

 「定番素材が中心で新しい素材はなかなか出てこないが、加工や染色段階の調理で鮮度を出すことができる」のは専門商社ならではの提案。

 内見会では取引先から「新しいモノをやりたい」と新規開発の話が増えたという。「独自性のあるもの、素材メーカーが作らないものが求められていると感じる。今後は品質や価格意外の価値を訴求する『コト提案』がユニフォームにも求められてくるのでは。取引先と連携を密に、ニーズを読み、発信していく」としている。

〈需要増の兆し/グループ総合力生かす/丸紅〉

 丸紅のユニフォーム事業は16年、前年比微増で推移した。オフィス、サービス、ワーキングウエア向けはカタログ、別注いずれも堅調。特に別注については「オリンピックに向けて更新の機運が出てきた」(機能アパレル部)という。

 ワーキングアパレルでは一時の生産調整の動きがあったが「大手の切り替え、別注が先行し、次いで備蓄、中小企業に波及していく。実際、来たる活況に向けてドライブをかける体勢の企業もある」と需要増を予想する。

 市場では異業種からの参入が目立ち、メーカーが独自に商社的な動きをするようにもなった。「商社の強みが改めて問われている。丸紅は業界で一定のシェアと実績があり、子会社の丸紅メイトは直需ビジネスが可能。グループとしての総合力を生かす」。

 同時に「今後はレンタルサービスなどソフト面からのコト提案の強化も一層大切になっていく」として、独自性を持つメーカーとの取り組み、既存のOEM事業の拡大、海外生産の一貫オペレーション強化を17年の課題に掲げる。

〈ユニフォームの鉄則守る/日鉄住金物産〉

 日鉄住金物産は繊維事業本部全体で採算性の向上と業務改善に取り組み、ユニフォーム事業は微増益で推移している。「ロスゼロを目標に徹底的に業務を見直し、コスト増や原料の値上げ分をお客さまに転嫁せずに済んだ」(繊維事業本部機能衣料第二部)という。直需の案件が増えており、市況の雰囲気は悪くない。

 商社の役割として重視するのが海外生産の最適化。目下はミャンマーとインドネシアでの生産を強化している。約10年前から縫製拠点となっているヤンゴンでは17年1月から新しい協力工場が稼働する。工場を運営している現地経営者が新たに工場を建設、同社は無償で機械を貸与し、生産ラインの確保・補償を行う形態。バンドンでは糸、織物、染色のベテランと組んで高品質なモノ作りができる体制を整備した。

 「韓国や台湾で素材を調達してミャンマーで縫製だけ行う商社が多いが、当社は素材開発から自社生産のリスクを取り、ユニフォームの鉄則『物性・品質・小ロット対応』を守る」姿勢を貫く。

〈販促サポート 深化/カイタックトレーディング〉

 カイタックトレーディング(岡山市)のユニフォーム事業は今期(2月期決算)、前期比増収になりそう。ユニフォーム業界全体の値上げが進んだことに加え、更新需要が相次いだオフィスウエアへの供給が増加したのが要因。「単なる企画提案だけでなく、カタログやPRなど販促も含め、アパレルへのサポートを深化させる」姿勢だ。

 ワークウエアは生産調整が続いたが、トレンドでデニムを使ったカジュアルワークの企画が増加。同社が得意とするカジュアルの企画をユニフォームに落とし込んだことで、下半期からワークウエアの受注も増えた。

 オフィスウエアは、さまざまな分野で更新需要が相次ぐ一方、中国・山東省の中国平度凱拓の生産拠点を活用した短納期・高品質な供給体制も増収に寄与した。

 品質向上や安定供給に加えカタログやアピール、デザインも含め、取引先に対する販促支援も進め、来期も事業拡大めざす。