開発最前線(2)/ユニチカ中央研究所(前)/コーポレートの開発拠点

2016年12月21日 (水曜日)

 ユニチカの中央研究所(京都府宇治市)は1939年、当時の日本レイヨンに設立されたのが始まりだ。この間に役割は変遷し、現在はフィルム、樹脂、繊維など各分野の商品開発は事業部直轄で進められ、中央研究所はコーポレートの開発拠点として、「現在ある事業にとらわれず新しい事業を生み出す」(松田常俊執行役員中央研究所長)役割を担う。

 現在の人員は約80人。設備はナイロンや「ゼコット」など重合のベンチ設備、フィルムのミニ延伸機、押出成形機、紡糸機などのほか、分析機器を一通りそろえる。

 現在進めている研究開発テーマは約25あるが、それらは提案制度によって研究員から案が出される。その中から審査を通った案は調査機関によって可能性を検証した後、予算化される。半年ごとに事業化の可能性や市場の成長性、ユニチカの優位性などを検証しながら開発が進められていく。

 各テーマはステージゲート法により最初のSステージ、探索研究段階のRステージ、商品化を目指すDステージ、事業部へ移管していくMステージに分けて管理される。ステージを上がるには厳しい審査を通る必要があるが、特にDステージへ進む際には、その商品を展開する事業部や知財関連なども審査に加わり、さまざまな視点から事業性を見極める。

 ユニチカは構造改革が進み、今後は成長戦略を重視するステージに入る。その中で研究開発投資も拡大していくとみられるが、研究開発を強化する上で中央研究所が重点的に取り組んでいるのが人材の育成だ。特に市場のニーズに合致した開発に重点を置き、人材を組織的に育てていくことを重視する。その一環としてセミナーなど外部研修も取り入れ、留学制度で大学に人材を派遣するなどの取り組みも積極的に行っている。留学制度では約2年派遣するが、帰った時には新しい視点が加わるなどの効果もある。水処理用中空糸フィルターなどその成果で生まれた事例も出てきている。