特集 スクールスポーツ(1)/ブランド力の底上げでシェア広げる

2016年12月15日 (木曜日)

 2017年の入学商戦に向けたアパレルのスクールスポーツの商況は、アシックスの事業集約を受け、そのパイを巡ってシェアを広げようとする動きが活発化している。20年の東京五輪の影響でモデルチェンジ校の増加や、新しいアイテムの出現の可能性もあり、改めて展開するブランドの発信を強めながら、シェア拡大に向けた競合が激しさを増す。

〈学生服アパレル/新たな切り口で差別化へ〉

 学生服アパレルは、市場が生徒の減少や学校統合で縮小する中にあっても、16年入学商戦に比べ、大手を中心にシェアを広げる傾向にある。アシックスの事業見直しもあるが、新たな戦略へとかじを切っていることもある。一つは自社ブランドの刷新だ。

 トンボ(岡山市)は自社ブランド「ビクトリー」で、今年創業140周年を機にロゴマークを刷新した。昨年、主力の美咲工場(岡山県美咲町)に昇華転写プリントの設備を導入し、デザイン性を高めたウエアを打ち出している。

 今年開かれた展示会のスポーツウエアの新商品企画では、部分採用も含めて半数近くに昇華転写プリントを取り入れ、製品の訴求力を向上。ウオームアップウエアとして、新たな概念で打ち出すピストレにも昇華転写プリントを充実させ、差別化したい学校に対し、強力な武器にしつつある。

 菅公学生服(岡山市)は、アクアチタン製品で有名なファイテンとのコラボレート製品「カンコー×ファイテン」の販売が好調だ。来入学商戦以降に向けて、ファイテンのコラボ企業としては初となる切り替え素材に「アクアチタンX30」の加工を施した新商品を投入。従来のアクアチタンを含浸したニットテープに比べ、肌への接着面が増えることで効果をより期待できる。

 児島(岡山県倉敷市)は昨年キッズデザイン賞を受賞した「コロン―テック」の採用が少しずつ決まり始めている。再帰反射材を使い高い視認性が特徴で、熱中症予防にも配慮。安心、安全という切り口は制服だけでなく、今後体育着にも求められてくる可能性がある。

〈ブランド戦略を拡大へ〉

 一方で、従来のライセンスによるスポーツブランドについても、20年の東京五輪に向け、新たな打ち出しで需要の掘り起こしを進める。菅公学生服は「リーボック」ブランドを改めて強化。リーボックが掲げる“ベスト・フィットネス・ブランド”の要素を企画に落とし込み、柄、リート文字(文字遊び・暗号のようなもの)をデザインで表現したウエアを打ち出す。リーボックのデルタロゴも使用できるようになった。

 明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)は来入学商戦、「デサント」ブランドの新規採用校が依然として約100校となり、勢いが止まらない。目新しいデザインや、3Dのカッティングパターン「デュアルカット」を採用した「エクストラモデル」から、耐久性に優れるタフシリーズを投入しており、幅広くニーズに沿った提案ができることを強みに新規採用の開拓につなげる。

 「ミズノ」とも連携する瀧本(大阪府東大阪市)は、昨年から制服で導入する、さまざまなニーズに合わせてカスタマイズできる「T―PIT」システムをスポーツでも導入。

 「タイガースポーツ」「ロット」の2ブランドで28体のベースタイプから選択できる。学校ならではのカラーや学年別カラーも簡単にシミュレーションができ、新規採用校の獲得につなげる。

〈スポーツ専業アパレル/機能、デザイン両面から攻める〉

 スポーツ専業アパレルは学生服アパレルの攻勢が強まる中、これまで以上にスポーツ業界で圧倒的な知名度があるブランドを前面に押し出していくとともに、機能性を高め、スポーツが盛んな学校を中心に市場の掘り起こしを進める。

 ミズノは、機能に加えデザインでの差別化を強化。近年、中学、高校でもファッション性のある体育着が好まれるようになっており、左右非対称の企画や装飾的なステッチを入れたものが採用されるケースが増えていることが背景にある。

 機能面では独自の機能による高付加価値化を進める。吸汗速乾、抗菌防臭といった一般的な機能に加え、消臭機能を標準化したり、独自のパターンで動きやすさを実現する「ダイナモーションフィット」を使った商品を充実させる。

 「プーマ」を展開するユニチカメイト(大阪市中央区)は、機能が高いものから「トップ」「ミドル」「ベーシック」の三つのカテゴリーに分け、ミドル以上はユニチカトレーディングの機能素材を使い、差別化する。ロゴや付属品に変化をつけてよりプーマらしいデザインが出るようにしているほか、今年から女子の体形の変化に合わせたレディースの型も投入し、市場を深掘りする。

 「ギャレックス」「フィラ」「スポルディング」の3ブランドを中心に展開するギャレックス(福井県越前市)は、来入学商戦に向け「安全性」「機能性」を強化。安全性では反射材などを使用した商品開発を進め、機能性では縫製だけでなく丸編み地メーカーとしての機能を有することや、原糸メーカーとの連携を強みに防風や防汚といった各種機能素材の開発に力を注ぐ。

 地域性を強く意識した提案も充実させ、競合他社と違った戦略で市場開拓に臨む。