トップインタビュー(49)/伊藤忠システック 取締役営業第一本部長兼プロジェクト機械部長 池端 真滋 氏/基本はコミュニケーション/国内と海外をリンクさせる

2016年10月28日 (金曜日)

 「プロセス間の関係がIoTなどによって変化する可能性がある」――伊藤忠システックの池端真滋取締役営業第一本部長は指摘する。だが、ネットワークの発達は逆に「人と人とのコミュニケーションの重要性が高まる」とも。そうした変化への認識を機械メーカー、商社、ユーザーが共有することで、多様性を受け入れる体制作りが欠かせない。

  ――本年度上半期(2016年4~9月)の商況は。

 良くはありませんが、国内販売はモノ作り助成金などの下支えがありました。電子ジャカードが今治産地向けなどで順調なほか、織機もまずます。丸編み機も好調です。海外も中国が落ち込んでいますが、インド、パキスタンが伸びています。中国市場は、圧倒的ナンバーワンであることは変わりませんが、かつてのような状態には戻らないと思います。逆に消費地としての魅力が大きくなっています。中国企業が東南アジアに進出していますが、あれもターゲットは中国市場。また、中国企業も高付加価値化を進めていますから、売れる機械も変わってくるでしょう。

 そのほか、テクテキスタイルや複合材関係の機械もまずまずです。展示会にも出展しましたが、カーボン関連で引き合いが多い。やはり、この分野はまだまだ伸びます。

  ――今後の重点課題は。

 当社は商社ですから、国内と海外をどうリンクさせるかがポイント。国内の良いところを海外に紹介し、海外の良いところを国内に紹介することで設備投資をモチベートすることが重要です。輸出はベトナム向けが伸びていますので現地企業への提案を強化します。一方、輸入は欧州機に加えて中国生産機を持ち込む形もあります。特に一部のプロセスは、既に国内メーカーが生産していない機械があります。そういった機械についての情報を国内のユーザーにも提案します。「ITMAアジア」のツアーでも、そういった情報提供を行いました。何より日本の繊維産業に貢献することが重要です。

 複合材料関係にも力を入れます。これは全体のパイは拡大する分野ですから。ただ、導入企業は巨大企業の場合が多いですから伊藤忠グループと連携し、グループの総力を活用することが欠かせません。

  ――5年後の繊維製造プロセスはどのように変わっているのでしょうか。

 各プロセスは大きく変化していなくても、プロセス間の関係はIoT(モノのインターネット)などによって変わる可能性があります。その認識を機械メーカー、商社、ユーザーがどれだけ持って変化に追随できるかが問われます。コスト低下や効率化に加えて商品の多様化が進むでしょうから、それに対応するシステムも必要。そして基本はコミュニケーションです。人と人とのコミュニケーションの重要性がかえって高まるのでは。そう考えると、設備だけでなく人材の面でも多様性を受け入れる体制作りがますます重要になると言えるでしょう。

〈好きな街/常に気になる街、上海〉

 上海に7年間駐在し、現地で中国経済の驚異的な成長と生活の変化、そしてリーマン・ショックの衝撃を経験した池端さんにとって「上海は、常に気になる街」である。今後、上海がどのように変化していくのか。「上海らしいダイナミズムとともに、やはり上海らしい、あの混沌(こんとん)とした部分も残ってほしい」と話す。

〈経歴〉

 いけばた・しんじ 1986年伊藤忠商事入社。北京駐在、上海駐在などを経て2011年伊藤忠システック出向、2016年から取締役。