特集/「BME」&「BYF」(2)
2016年10月07日 (金曜日)
〈Bishu Yarn Fair/[BME]併催展/多様な尾州の糸作り 毛から、綿、合繊製まで〉
昨年秋の「ビシュウ・マテリアル・エキシビション」で、糸の展示会「ジャパン・ヤーン・フェア」が併催された。今回は、出展者を尾州の企業に限定し、「ビシュウ・ヤーン・フェア」(BYF)として開催する。梳毛糸や紡毛糸、意匠撚糸はもちろん、複合糸、純綿特殊撚糸、さらには合繊長繊維糸など、さまざまな糸が出品される。尾州産地の糸作りの奥行の深さ、多様性を見ることができる展示会になるだろう。
〈浅野撚糸/気化熱発生量が多い糸〉
浅野撚糸は、特許取得の特殊技術で撚糸した綿糸、「スーパーゼロ425」の気化熱発生量の多さなどをアピールし、スポーツインナー用途などへの拡販を狙う。
同糸は、綿糸を特殊な糊で固めたうえで、元撚りの反対方向に2倍撚り、芯部とは逆方向の撚りが表層部にかかった状態にしたもの。このため、糊を熱湯で溶かすと、糸が一気に膨らむ。16番の純綿単糸で比較したところ、普通糸の1.6倍にも膨らんだ。
空気層が大きくなるため、軽く保温性が高い。加えて、吸水速乾性も高いため、気化熱発生量が多く、運動後の皮膚温度を下げるのに適する。発汗シミュレーターでテストしたところ、運動後の模擬皮膚温度の低下は、スーパーゼロ425の方が普通の綿糸より0.7℃低かったという。
〈カワボウテキスチャード/原着長繊維を備蓄販売〉
合繊長繊維糸の輸入販売や同糸の加工などを行っているカワボウテキスチャードは、原着ポリエステル長繊維糸の備蓄販売機能や同糸の加工技術などをアピールする。
同社は台湾、韓国、中国、インドネシアなどからポリエステル長繊維やナイロン長繊維を直輸入して販売するとともに、同糸の仮撚加工、エア加工、撚糸可能なども行っている。原着ポリエステル長繊維については、加工糸も含めると7種を、多い場合は113色備蓄し、ケース(24~30キロ)単位で販売している。加えて、自社工場に仮撚機18台、撚糸機8台、エア加工機14台を保有しており、これらを活用して糸の加工にも対応している。今回展ではこのような機能をアピールする。加えて、同社の糸加工技術を駆使して開発した綿、麻ライクの仮撚スラブ糸「エピセル」や、綿、毛ライクの仮撚タスラン糸なども披露する。
〈近藤/意匠撚糸の機能性訴求〉
近藤は、「コンドウ・ファンシフル」ブランドで、意匠撚糸を約200種備蓄し、販売している。製造は、30社弱の協力工場に委託する。「意匠撚糸の製造能力では業界トップ」だという。
今回展では、同社の意匠撚糸の機能性をアピールする。既存の意匠撚糸をテストしてみたところ、例えばブークレ糸の保温蓄熱性が普通の梳毛糸より高いことが分かった。この他にも、吸湿発熱性が高い糸もあった。これらの試験データを開示する。
同社の意匠糸は主に婦人服に採用されているが、2年前から紳士服向けの提案も強化した。紳士服向けのマップを製作して提案しており、好評を得ている。今回展を機に、提案をより強化。こだわり派の顧客向けに企画した「K・(ドット)ファンシフル」も訴求する。新しい切り口の糸を8種そろえている。これらをベースに顧客と新しい撚糸を企画し、受注生産する。
〈三幸毛糸紡績/「英国」テーマに糸開発〉
太番梳毛糸の生産を得意とする三幸毛糸紡績は、「英国」をテーマに開発した糸を披露する。英国羊毛と豪州羊毛を混紡した12双の糸染め梳毛糸を12色備蓄販売する。両国羊毛を混紡した1番手のトップ染めロービング糸も、3色備蓄して販売する。
糸染めで備蓄販売する12双梳毛糸は英国羊毛30%・豪州羊毛70%混。改造梳毛紡機で英国羊毛の粗野感や膨らみ感と豪州羊毛の柔らかさを組み合わせ、独特な表情の糸に仕上げた。横編みや織物用途に提案する。1番手ロービング糸は、20年以上前から生地糸として販売していたロングセラー。これをトップ染め糸として、ライトグレー、チャコールグレー、黒の3色を備蓄する。混率は英国羊毛50%・豪州羊毛50%。手編み用途へ提案する。
〈滝善/美濃和紙使いの撚糸〉
滝善は、美濃和紙使いの撚糸の提案に力を入れている。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が2014年11月に美濃和紙を無形文化遺産として登録した効果もあって、同社の和紙糸の販売量も拡大。昨年の美濃和紙の仕入れ量は前年の3倍に達したという。
特に好評なのは、「ネロ」と「ミギー」。ネロは、2ミリ幅の和紙で綿を包み、レーヨンで押さえた撚糸で、毛番の7.3番手糸を48色備蓄販売している。ミギーはもう少し細番手が欲しいとの要望に応えて開発したもので、1.5ミリ幅の和紙で綿を包み、ポリエステルで押さえた。細い和紙で綿を安定的に包むのが難しかったという。16.7番手糸を21色備蓄販売している。横編みを中心に、一部丸編みにも採用されている。
〈東和毛織/ヤクの毛で梳毛糸〉
東和毛織は、牛の一種であるヤクの毛を使った梳毛糸を商品化した。衣料素材にはあまり使われていなかった加工を施して、ピリングの発生が少ないウール100%ロービング糸も開発した。
ヤクを素材とする紡毛糸は既に商品化されているが、梳毛糸は珍しいという。細番手に仕上げ、紡毛にはない味わいを出した。丸編みと横編み用途へ提案する。
ピリングが発生しにくいロービング糸は、紡績後の特殊加工で糸表面を絡ませ、フェルト化させたもの。「シンプルだが少し違う素材へのニーズが高まっている」(渡邉淳一郎社長)ことに対応した。1・5~2番手糸を、織物や横編み用途へ提案する。
同社は、アルパカの毛を使った梳毛糸の生産で定評があり、日本が輸入しているアルパカの半分ほどは同社が使用しているという。
〈豊島/「コーデュラ」で紡毛糸〉
豊島からは、梳毛糸などを販売する同社一部と、綿糸や化合繊糸などを扱う二部が出展する。
一部は、フランスやアルゼンチンのやや太めの羊毛を使った梳毛糸を、セーター向けなどに提案する。加えて、インビスタの「コーデュラ」ナイロン使いの紡毛糸も披露する。コーデュラナイロンは、アウトドア用品などにも使用されている高強力繊維。豊島は、同繊維を使った紡毛糸の日本での販売を任されている。
二部は、純綿コンパクト紡績糸「ウィンコンパクト」の一格上の糸として今春発売した、純綿特殊紡績糸「スプレンダーツイスト」をアピールする。同糸は、同部の予想を上回る売れ行きをみせているという。オーガニック綿の普及を狙ったブランド「オーガビッツ」では、超長綿タイプも訴求する。
〈豊島紡績/トライスピン糸の最大手〉
豊島グループの紡績会社、豊島紡績は、トライスピン紡績によるアルパカ混タム糸「ナタリー」などを訴求する。同糸については、13単糸を13色備蓄し、横編み、丸編み用途へ提案する。
タム糸の多くはモヘア使いで、アルパカ使いは珍しい。同社にとっても、アルパカ混タム糸を備蓄販売するのは初の試みだという。アルパカの特性を生かし、ボリューム感のある糸に仕上げた。見た目の割に軽いため、セーターにするとシルエットを奇麗に表現できるという。混率はウール48%・ナイロン31%・アルパカ21%。
同社は梳毛紡機とトライスピン機を保有している。トライスピン糸の生産では群を抜く日本最大手だ。今回展では、トライスピン糸の特徴のアピールにも力を注ぐという。
〈ニッケファブリック/ウールの良さを伝える〉
梳毛糸製造販売のニッケファブリックは今回展で、「ウールの良さを正しく伝える」ことを狙う。肌着など新たな用途展開、他繊維とのミックスによる新たな魅力などを訴求する。
例えば、羊毛の繊維束の中に長繊維をらせん状に潜ませた糸「ニッケアクシオ」など、複合技術でイージーケア性を高めた糸を披露する。ニッケアクシオについては既に、インナー向けに取り組み型で展開しているという。
横編み用途に向けて、太番手糸の拡充を進めていることもアピールする。24番手糸を生地糸として備蓄しているほか、8番手のブークレ糸についてもトップ染めで10色備蓄している。横編み分野で好評の改質羊毛使いの梳毛糸「プレゴ」の一格上の糸として、より細い羊毛を採用した「スーパープレゴ」も披露する。
〈長谷川商店/ふわふわ加工糸披露〉
長谷川商店は、自社工場の撚糸機7種10台と、外部の梳毛紡績3社、紡毛紡績2社、綿紡績2社を活用し、シルクをはじめとする天然繊維で、メランジ糸やファンシー糸を企画製造している。日本はもちろん、世界26カ国へ、エージェントや商社を介さずに直販している。欧州のオートクチュール・ブランドのほとんどとも取引があるという。
今回展では、カシミヤのような肌触りの「ふわふわ加工糸」を、シルクやオーガニックコットンを素材にして披露する。さらに、擬麻加工によってテープ状にした糸も、綿、シルク、レーヨン、ポリエステルなどを素材にして提案する。加えて、ナイロン・テープ(不織布)を素材とするモール糸も用意した。
同社は自社生産の糸を使った横編み製品や、「ホールガーメント」を販売する方針も打ち出しており、これらの製品も披露する。
〈モリリン/エコ素材の「ポルカ」〉
モリリンのマテリアルグループは、「ポルカ」「IYO(イヨ)トリオ」「ネオリネンソロ」「ネオリネンプラス」などを訴求する。
ポルカは、ポリエステル55%・レーヨン25%・キュプラ20%混糸。ポリエステル部分を再生繊維とし、エコ素材として訴求する。同糸は、渦流精紡など、特殊紡績法で作った糸で、30単、40単、60単をそろえている。
「イヨトリオ」は、東レの愛媛工場で生産される合繊短繊維との複合素材。ポリエステルとウール、ナイロンと綿など、さまざまな組み合わせの糸を、特殊紡績法で展開する。
ネオリネンソロは、ベルギーのフランダース地方で生産された上質なフラックスと、帝人フロンティアのPTT繊維「ソロテックス」を複合した糸。ネオリネンプラスは、同じくフランダース地方の上質なリネンと、特殊断面ポリエステルをブレンドした。