中国縫製 今とこれから/「AFF・東京2016」レビュー(後)/特徴ある工場が生き残る

2016年10月05日 (水曜日)

 今回の「AFF・東京2016」には、3日間の会期で約4000人が来場した。対日OEM(相手先ブランドによる生産)・ODM(相手先ブランドによる企画・生産)の基盤となる中国の存在感は依然として力強いのは、「素材、副資材のインフラを考えると利便性が高く、中国から移せない案件もある」(ユニフォームアパレル)、「リードタイムやコストとのバランス、やりたい製品のイメージに近い工場を探すには、やはり懐の深い中国企業から探すことになる」(ヤング向けアパレルメーカー)などと語る来場者が多いことからもうかがえる。

 大連富麗敏尚貿易は、ブースに「小ロットできます」と書いたステッカーを掲げる出展者が目立つ中、「当社にとって小ロットは本業。スピード感でさらに差別化する」と自信を示す。約10年の対日貿易実績を持つ同社は商社との取り組みを通じてセレクトショップ系ブランドをメインとし、実需期対応のQR供給で、16秋冬向けでも取り組みを増やしたという。

 大阪が本社の華邦産業貿易は韓国に企画会社、中国とバングラデシュに自社縫製工場を保有し、ファッション衣料だけでなく、シューズや帽子など雑貨分野も手掛け、さらに、生産管理ノウハウに基づいたシステム販売にも着手し、来場者だけでなく、他の出展者にも営業していた。さまざまなニーズに対応する利便性の追求を差別化要素にする考え。

 コミュニケーションの深掘りを目的に日本に拠点を置くのは、婦人布帛アウターを手掛ける新陽昇国際貿易も同様。スピード感の向上を目的にこのほど、東京に2人体制の事務所を立ち上げた効果で、セレクト向けQRを増やしたという。

 これらの出展企業は口をそろえて「これからの中国縫製企業は特徴がないと厳しい。逆にそれがあれば、密接な関係づくりにつながる」と指摘した。特に沿岸部の工場、貿易公司が生き残るには強い差別化要素が必要で「ミニマムロットは設定しない」とQR・小ロット対応を掲げた、設立5年の青島潤嘉服飾は「得意技を持った中小規模の工場が増えて行くだろう」とみる。中国生産の存在感は、高度化による利便性の追求がポイントと言えそうだ。(おわり)