スクールスポーツ特集/視点変え、別角度から市場広げる
2016年08月17日 (水曜日)
ブラジルのリオデジャネイロでスポーツの祭典「オリンピック」が開催され、アスリートによる熱戦が繰り広げられている中、学生服・スポーツ専業アパレルによるスクールスポーツ市場でのシェア争いも激しさを増す。ブランド力を生かした市場開拓はもちろん、新たな視点からスクールスポーツ市場を見直し、これまでになかったニーズを捉える動きも出始めてきた。
〈学生服アパレル/増収基調でシェア伸ばす〉
学生服アパレル各社は昨年、消費増税の反動や生徒数の減少によって減収が目立ったが、2016年入学商戦は、スポーツブランドが市場をけん引し、増収を確保しそうな企業が多い。
最大手の菅公学生服(岡山市)は16年7月期、モデルチェンジ校の獲得増や、「カンコー×ファイテン」などの販売が好調だったことにより微増収の見通し。トンボ(岡山市)も16年6月期、「ヨネックス」が約100校で新規採用があり、累計で700校を突破。昇華転写プリントによるデザイン性向上などもあって、自社ブランド「ビクトリー」の販売が堅調に進み、増収を見込む。
明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)は16年5月期の売上高が、前期比6・2%増の41億7000万円だった。「デサント」や自社ブランド「ヨットスポーツ」ともに例年以上に順調に採用校を獲得することができ、増収に寄与した。
瀧本(大阪府東大阪市)は16年6月期の売上高は横ばいの見通し。ただ、導入7年目を迎える「ロット」が堅調に伸びつつあり、100校弱が採用。既に制服で取り入れる、タブレット型多機能端末でコーディネートやデザイン変更をシミュレーションできるシステム「T―PIT(ティーピット)」を体育着でも導入し、採用校の獲得につなげる。
〈スポーツ専業アパレル/戦略改め、“強み”生かす〉
スポーツ専業アパレルは、学生服アパレルの攻勢に対し、やや押され気味のところがあり、売り上げを大きくは伸ばしきれていない。しかし、専業ならではの強みを改めて見直し、新たな戦略で市場開拓に望もうとする動きが加速する。
「ギャレックス」「フィラ」「スポルディング」を販売するギャレックス(福井県越前市)は、セット契約にこだわらず単品契約にもきめ細かく対応することなどによって採用校を拡大し、3ブランドの平均で約5%の採用校増に成功した。商品開発では丸編み地メーカーとしての機能を持つことや原糸メーカーとの連携を強みに防風や防汚といった各種機能素材の開発に力を注ぐ。
ミズノは、独自の販売ルートでは高校などのクラブ活動を通して、学校とのつながりを生かしながら販売を推進。中学校に向けては、中・高校へ強い販売ルートを持つ瀧本と販売・商品の両面でコラボレートしながら市場を深耕する。
ユニチカメイト(大阪市中央区)は「プーマ」で、中・高校に加え、昨年から手掛けるジュニアラインを17春の入学商戦に向けて一段と拡充。私立の学校を中心に販路を広げる。
一方で事業の建て直しを進めるアシックスは、これまで学校種別ごとの商品グループを、似通った機能の商品や古い品番を一つの商品グループにまとめ、営業を効率化。納期や仕様面で精度の高い商品を安定供給できる体制を整える。
〈新たな需要を掘り起こす〉
これまで各社は、“学校体育着”としての枠組みの中で商品開発に取り組んできた。しかし、最近は通学時での着用や、ライフスタイルの中での着用を意識し、新たなコンセプトを持った商品開発も増えつつある。
学校や部活動によって通学時に体育着の着用する場合があるが、安全面に配慮したウエアが今後増えてくる可能性がある。児島(倉敷市)は昨年、体育着「コロン―テック」が「キッズデザイン賞」を受賞した。学校外での着用も想定し、再帰反射材で視認性を高めるとともに、襟の後ろを高くし、熱中症の予防にも配慮、安心や安全を最優先事項として開発した。今後は販売に向けて取り組む。
ゴールドウインは、ブランド「スクリート」のロゴを刷新するとともに、再帰反射材を付け、夜間や暗闇での安全性を高めたウエアの導入を進める。ギャレックスも、商品開発で機能性のほか、反射材などを使い安全性の付与に改めて力を入れる。地域性を強く意識した提案を充実させ、地域密着型の開発、提案を進める。
スポーツではウオームアップウエアとして、ピステというプルオーバータイプのウインドブレーカーが広がりを見せる。トンボは、その「ピステスタイル」に着目し、「ビクトリー」ブランドから次世代の体育着として新たな概念のウエアを広げる。昇華転写プリントとの組み合わせで、これまでにない商品で市場を掘り起こす。マーチングバンド・吹奏楽部向けといった市場へもアプローチする。
菅公学生服は昨年の総合展「ソリューションフェア」で、生徒一人一人が自由に着こなしを考える、新しいコンセプトの「スタイリング―考える体育着」を発表。一部の学校へモニターとして着用してもらうとともに、5月には地元の3×3バスケットボール公式プロチーム「トライフープ オカヤマ ドット エグゼ」へチーム活動着を提供、少しずつ市場への浸透を図る。