ズームイン/帝人加工糸 社長 中川 浩孝 氏/海外赴任の経験生かす
2016年07月20日 (水曜日)
中国とタイで計10年半の海外単身赴任を経験し昨年帰国、今年4月1日付で帝人加工糸の社長に就いた。直接的には自身初となる北陸産地での仕事である。
同社は2016年3月期、前村山隆社長の陣頭指揮の下、「久しぶりの黒字化」を果たした。この流れを続伸させることが、中川社長のミッションとなる。「前社長によるさまざまな変革のおかげで利益を出せる会社になった。これを踏襲しつつ、自身の経験をプラスアルファできれば」と抱負を語る。10年余り海外生産工場で過ごしてきただけに、生産の効率化や品質向上、コスト削減には自信をのぞかせる。課題は適正価格への引き上げだ。
例えば同社の加工糸部門にはタスラン加工(エアー加工)の技術があるが、「コストが適正ではない」。電気と水を多く使う加工のため生産を休止する同業も多いが、かさ高性に秀でるなど同社が追求する付加価値化路線に合致する加工であるのも事実。ここで適正なコスト体系を作り上げる。
同社には社名に冠する糸加工の他に丸編み地部門がある。大手スポーツブランドとの強固な取り組みに下支えされて堅調な受注を続けるが、今後は「スポーツ以外」の開発、提案強化にも取り組む。その一つが車両関係だが、カーシート地は編み地から織物への置き換えが強まっており厳しい。ただ、織物とともに盛んになってきているのが合成皮革のシート地。この動きに呼応して「合皮メーカーとの取り組みを強化していく」。また、糸加工と丸編みの両方を貫く組織として昨年立ち上がった「開発センター」では、糸加工と丸編みの一貫体制の進展含め、「新たな商流を作る」ことに力を注ぐ。
10年半に及ぶ海外単身赴任時代はゴルフに精を出したが、帰国後はほとんどしない。10年半、一人で子育てに奮闘し家を守ってくれた奥さんと2人で休日に西国三十三カ所を巡ることが今の趣味だ。奥さんと2人、のんびりドライブすることが楽しい。「10年半分の贖罪(しょくざい)ではないけれど……(笑)」
(武)
なかがわ・ひろたか 1984年の帝人入社以来、主にテキスタイル貿易を担当し、2005年10月南通帝人副総経理、09年から総経理。13年2月タイ・ナムシリ・インターテックス社長。15年衣料繊維第一部門長付。16年4月から現職。神戸大・経営卒。55歳。