学生服アパレル/“コト”戦略に転換へ/ユーザーへの発信力強める

2016年05月30日 (月曜日)

 単なる商品“モノ”から、目に見えない価値を含めて訴える“コト”が重視される時代へと移行するなか、学生服アパレル各社の戦略も変化しつつある。制服を売るだけでなく、学校支援やエンドユーザーへの発信を強めることで、新たな市場開拓につなげる。

 菅公学生服(岡山市)は2014年から岡山県立岡山南高校と取り組む「岡山南高校服飾デザイン科産学連携実学体験プロジェクト」を推進している。今年度、同校の2年生が地元の岡山市立岡輝中学校の女子制服を手掛ける。高校生が中学校の制服を作るという試みはあまりないだけに注目されるとともに、「働く楽しさも体験してほしい」(尾﨑茂社長)と、キャリア教育も支援する。

 今年4月に提携したストライプインターナショナルとも、「未来ちずプロジェクト」として女子生徒向けキャリア教育支援を実施する予定で、今年8月ごろに具体的な内容を発表する。

 瀧本(大阪府東大阪市)も、14年から文化ファッション大学院大学(BFGU)と連携し「BFGU学生服プロジェクト~新しい学生服文化の創造」を開始。学校の教師と生徒が制服について検討し、BFGUのデザイナーが協力、瀧本が開発・企画するもので、岡山龍谷高等学校(岡山県笠岡市)も参加する。同企画で今夏から半袖シャツ、スカートを打ち出す。学校と連動したこれらの企画は実現までに時間や労力がかかるものの、「業界自体の人材育成にもつなげる」(高橋周作社長)。

 トンボ(岡山市)は10年から商品のアイデア提案を社内だけでなく、全国の学校からも募集し、優秀な作品を発表するイベントを開催。昨年は応募が前回の412点から794点と大幅に増え、高校を中心に多くの学生から応募があった。今後、優秀賞や入選を「目標の一つとして励みにしてもらえたら」(近藤知之社長)と、学校へも取り組みを広める。

 アイドルグループのスタイリストや衣装制作会社などと連携する動きもこれまでに無かった動きだ。明石スクールユニフォームカンパニー(明石SUC、岡山県倉敷市)の「O.C.S.D.(オサレカンパニー・スクール・デザイン)」や、菅公学生服の「世界にひとつのみんなの制服 スタイリング・バイ・ヨネムラヒロミツ」が、その実例で、アイドルグループのメンバーの個性を出しつつも、全体を調和させるという手法を取り込みながら、新しい制服の価値を創出。「“生徒が着たい”と思える制服の要望に応える」(明石SUCの榊原隆営業本部スクール第二販売部長)ことで、制服に対するニーズを掘り起こす。

 総合的なデザイン評価や推奨の仕組みを活用し、広く消費者に認知を広げる動きも活発化。昨年、菅公学生服が洗濯耐久性に特化した詰め襟学生服「カンコードライウォッシュ」とセーラー服「カンコービューティーウォッシュ」で、光和衣料(埼玉県久喜市)が耐久性と強度を実現した女子制服「スクールパール タフ」で「グッドデザイン賞」を受賞した。

 また、14年に児島(倉敷市)がニットの詰め襟服、昨年にオゴー産業(同)が「全国地域安全マップコンテスト」で「キッズデザイン賞」を受賞。受賞によって自社では伝えきれない制服の機能性やデザイン性などの発信強化につなげることで、市場拡大を進める。