伊藤忠・CITIC/リスク回避に腐心/波司登への300億円投資
2016年05月27日 (金曜日)
【上海支局】伊藤忠商事が中国中信集団(CITIC)と組んで中国アパレル大手、波司登国際控股に投資した枠組みが明らかになった。伊藤忠が過去に行った中国企業への直接出資とは違い、資金の流れと回収の仕組みは複雑。リスク低減に腐心したことがうかがえる。
波司登の開示資料などによると、投資側は伊藤忠グループ(本体と香港会社)と中信国際資産管理(CIAM)が邦貨換算で300億円を共同出資し特別目的会社(SPC)「ICインターナショナル」を昨年4月に設立した。伊藤忠の出資比率は3分の2で、連結子会社になる。
一方、波司登の創業者で大株主の高徳康董事局主席は法人格を持たない特別目的事業体(SPV)「盈新国際投資(ニューサープラスインターナショナルインベスティメント)」を設立し、一族が保有する波司登株のうち20・1億株(発行済み株式の25%)を現物出資。ICは盈新へ300億円を拠出した。
そのうえで盈新は波司登に対し、年複利2・5%の条件で240億円を無担保融資した。波司登はこの資金をブランド導入など新規事業拡大に充てる。盈新は利息と配当で収入を得る。
伊藤忠はこれまでに中国の杉杉集団や山東如意集団と資本提携したが、いずれも非上場会社で直接取得した株式は非公開だった。波司登は香港証券取引所に上場しており、15年3月期まで3期連続で減収減益決算。現在の株価は直近の最高値(15年5月1日)に比べ半分以下の水準で低迷。1株当たり配当も減少している。この公開株式を直接保有することのリスクを回避した格好だ。
15年4月の時点では、伊藤忠と中信証券子会社が設立するSPCを通じて、波司登グループに最大300億円の出資をすると発表していた。しかし、そのための第三者割当増資案が6月の臨時株主総会で否決されたため、新しい枠組みが協議されていた。