2016年新春特別企画 アンケート調査報告/「国産増」比率が年々拡大/付加価値提案に必要

2016年01月04日 (月曜日)

 原油安が進行したとはいえ、輸入品の採算は円安によって悪化している。キャパシティーの制約は大きいものの、その対処の一つが国内生産、国内品調達の拡大であることは間違いない。採算面だけでなく、国内外で高まる日本品への信頼、人気への対応という側面もある。

 今回のアンケートでは、国産品を「増やす」が48%となり、「増やさない」52%とほぼ拮抗する結果となった。別のグラフにあるように、「増やす」の割合は、前々回の25%、前回の40%と年を追うごとに拡大しており、国産品推奨機運の高まりを示す結果が鮮明に表れた。

 日清紡テキスタイルの馬場一訓社長はその理由を、「当社では生産拠点を、インドネシアを中心とした海外にシフトし、グローバルレベルでの最適生産・販売体制を構築してきた。今後もアウトソーシング含めて最適生産・販売という視点で状況に応じて柔軟に対応していくが、円安の進行状況によっては国内調達を増やすことも大いにありえる」と説明、為替変動に対応できるグローバル生産・販売体制を構築してきた強みを強調する。

 国内産地、染工場と密接な関係にある生地商社ではほとんどのトップが「増やす」と回答。スタイレムの小川修社長は「為替動向が特定要因ではないが、希少性のある商品や高品質な商品など、顧客に対して商品提案を継続的に行うためには今以上に国内産地と強固な取り組み、奥行きのある調達を行っていくことが重要」と認識、円安よりも提案強化のために国産生地の必要性が高まっていると説く。

 一方、コスモテキスタイルの斑目寿明社長は、「中国品のメリットが無くなってきている」と相対的に国産品の競争力が増していることに言及した。そのほか、サンウェル、宇仁繊維、川越政、澤村などが「増やす」と回答した。

 ユニフォーム系では「増やす」と「増やさない」が二分された。ボンマックス、サンペックスイスト、フォーク、アイトス、クロダルマ、コーコス信岡などが「円安と言っても国内より海外のほうがまだ安い」などを理由に「増やさない」としたが、菅公学生服や明石スクールユニフォームカンパニー、ハネクトーン早川など元々国産比率の高い企業が「増やす」と回答した。

 製品OEMを展開する商社はどうか。伊藤忠商事や三菱商事ファッション、帝人フロンティア、ユニチカトレーディングが「増やさない」と答え、モリリン、ヤギ、日鉄住金物産、三井物産インターファッション、スミテックス・インターナショナル、豊通ファッションエクスプレス、双日などが「増やす」と回答した。

 縫製品に限定した質問ではなかったものの、「増やす」際のアイテムへの回答では「ニット製品」「百貨店向け紳士・婦人服」「高級婦人服」といった回答が寄せられたことから、多くの商社が国内縫製を見直そうとしていることは明白だ。なかには「出来る限りすべてのアイテムで国産を尊重したい」(スミテックス・インターナショナル)という積極的な考えも見受けられた。

 紳士服チェーンではAOKIホールディングスが「増やさない」としたが、はるやま商事は「パターンオーダーの強化などで増やす」と回答方針の違いが表れた。

 社名は先方の希望により伏せるが、ある大手小売りからも「日本の良い物を産地やクリエーターと協業しながら今後も拡大していく。どのカテゴリーのアイテムも(国産品の)可能性がある」との回答もあった。

 分野別でみると川下でやや「増やす」の割合が高かったものの、分野による大きな差については確認できなかった。