特集 スクールスポーツ/巻き返せるか、16年入学商戦
2015年12月18日 (金曜日)
スクールスポーツの2015年入学商戦は、既存校の生徒数減少や、昨年合った消費増税に駆け込み需要の反動によって、ほとんどの企業が減収となった。16年の入学商戦は15年に比べ新規採用校の獲得に手応えを感じる企業が多いものの、歯止めがかからない既存校での生徒数の減少が、どれほど市場に影響を与えるか、まだはっきりと見えていない。需要を喚起する新たな仕掛けが求められてくる。
〈学生服アパレル/デザイン性高める/ニーズとらえた商品開発〉
学生服アパレルの16年の入学商戦は、15年に比べ全般的に堅調に推移しているようだ。ただ、既存校の生徒減の影響がどれだけ出てくるか読めていないこともあり、「昨年も今年と同じような形で推移していたことを考えれば、まだ安心はできない」といった声も聞かれ、採用校の刈り取りが続く年内は楽観視をしていない。
市場の傾向としては、やはりスポーツブランドへの引き合いが強い。トンボの「ヨネックス」は、ベンチレーションなど機能面を追求した商品が好評で、約100校の採用校を獲得し、累計では700校になる見通しだ。
明石SUCの「デサント」は16年入学商戦に向け、これまでより洗練されたデザインの「エクストラモデル」を投入。採用校の拡大に貢献し、デサントの新規採用校は16入学商戦も目標としていた100校に届きそうで、累計では約1300校になる。
瀧本は伊スポーツブランド「Lotto(ロット)」が前年度で累計100校の採用を達成し現在、前年比10%増の120校弱で推移する。年に30~50校程度、着実に増やし将来的に300校を想定する。
学生服アパレルのスクールスポーツの傾向としては機能性を強化する面が一巡し、デザイン性に力を入れる動きが強まっている。菅公学生服では、自社ブランドの「カンコー」でエッジの利いたデザインやシルクスクリーンプリントなど、スタイリッシュなウエアを充実。また、スポーツブランド「リーボック」ではポリエステル100%のスエット風ジャージなど、これまで学校体育着であまり見られない風合いのウエアが注目された。
新たな分野の開拓と言う面では、トンボが「ビクトリー」ブランドとしてマーチングバンド・吹奏楽部向けのウエアを開発。すでに採用実績ができつつあり、様々な大会が多い来年秋に向けて販促を加速する。
〈スポーツ専業アパレル/海外生産 一段と強化/体制整え反転攻勢へ〉
スポーツ専業アパレルは海外での生産拠点のシフトを進め、反転攻勢に向けた動きを強める。ミズノはインドネシアで2013年に生産を開始、来年1月ごろにはタイでも工場を稼働させ、両国で一貫生産体制を整える。ベトナムでは2カ所に中規模の生産拠点を設け、来春以降に生産を始める。生産アイテムは生徒が学校の体育の授業などで着用する水着、ジャージ、Tシャツなど。
ギャレックスは、早期受発注を前提に、中国山東省の青島銀華針織(ニット生地製造)、青島吉華服装(縫製)、遼寧省の遼陽富華服装(同)の製造3拠点をフルに活用する計画。まとまった単位の生産は中国、期近対応では本社とアワラ工場の立ちミシンによる小ロット・短納期対応を絡め、製品性能と価格両面でアピールする考えだ。
国内生産が主力の学生服アパレルに比べ、海外生産が多いだけに、納期ギリギリまで営業活動を仕掛けるのが難しいがブランド力やデザイン性などスポーツ専業の魅力を発信しながら、市場でのシェア拡大を進める。
〈値上げへの理解広げる/17年消費増税に備える〉
各社は学生服と同様に学校体育着も値上げを進めている。原材料高や人件費の上昇、為替など、利益率が低下するなか、値上げに対する理解を求めているが、「消費者にとって“買わされるもの”だけに、簡単には値上げできない」(学生服アパレル関係者)のが実情で、需要家や地域によって値上げの進ちょくが異なる。ただ、17年には消費増税が控えることもあり、これまで以上に消費者が理解しやすい製品性能と価格面の追求が課題になってきそうだ。
菅公学生服×岡山南高校/ついに決定!/高校生が中学生の体操服をデザイン
菅公学生服と岡山県立岡山南高校は、「岡山南高校服飾デザイン科産学連携実学体験プロジェクト(MPS)」の一環で、今年4月から「磐梨体操服イノベーションプラン」として、赤磐市立磐梨中学校で実際に着用される体操服を高校生がデザインするという、これまでにない試みに取り組んできた。
生徒たちが考案した8つのデザイン企画を3つに絞って商品を試作、協議を重ねた結果、「よくばり機能!!~ギュギュっとつめちゃいました~」をコンセプトにした体操服に決定した。
サックスブルーを基調にブラックやホワイトを組み合わせたカラーで、アイテムはウインドブレーカー、ウオームアップスーツ、シャツ、ハーフパンツ、ストレートパンツ5点。肩に斜めに入った切り返しなど、他校とは一味違うファッション性の高い体操服で、授業だけでなく、部活動や普段着としても着用できる。
磐梨中学校の田上善朗校長は「異次元の出来上がり」と、完成度の高さを称賛。岡山南高校生徒代表の杉本凛さんは、磐梨中学校の生徒が「愛着が持てるものとして期待している」と完成の喜びを表現した。
スクールスポーツ事業のトップに聞く 方針と戦略
〈デザイン磨き価値高める/菅公学生服 第一営業本部長 若松伸雄氏/「着たい」ブランド育てる〉
――2016年の入学商戦に向けた商況はいかがですか。
都市部を中心に、生徒数の大きい学校での採用が増えていることに加え、昨年の消費増税の反動が出ていないので、順調に販売が推移しています。
ただ、地方ではモデルチェンジが活発化しているわけではなく、既存の採用校の生徒減少がどれだけ影響が出てくるのか分かりません。
――11月から今月に開かれた総合展「スクールソリューションフェア」では、機能性よりデザイン性を重視された形で展示しました。
今回は、心から「着たい」と思ってもらえるような体操服をアプローチしました。独自のブランドを大事にして、デザインを磨き、ブランド価値を高めていきたいと考えています。
「カンコー」ではスポーティーでありながらも安全性を配慮し、視認性抜群のウエアを打ち出し、エッジの利いたデザインやシルクスクリーンプリントなど、スタイリッシュなウエアをそろえました。
「カンコー×ファイテン」は、2020年の東京五輪を意識した“ゴールドラインナップ”や、ファイテンが好きな先生が多いことを受けて企画したウエアを打ち出しました。
一方で「リーボック」もポリエステル100%のスエット風ジャージなど、これまで学校体育着であまり見られない風合いのウエアが注目されました。
参考出品としてスタイリストの意見を取り込み、着こなしについても提案しました。生徒自身の意識を変えることで「着たい」と思えるようなウエアの発信をこれからも強めていきます。
――高機能カッティング「4D」では機能の効果を信州大学繊維学部と検証するなど、動作性の評価を分かりやすく紹介していました。
データとしてきっちり出していくことで、関心を高めるのが狙いです。
――今期の見通しについてはいかがですか。
生徒数の減少がどれほど影響を及ぼすか、まだ見えていませんが、売り上げとしては前々期並みに戻していきたいと思っています。
フォーカス/大山工場、順調に稼働/詰め襟服がグッドデザイン賞に〉
昨年8月に操業を開始した、菅公学生服の19カ所目となる自社工場の菅公アパレル大山工場(鳥取県大山町)は、順調に生産を拡大している。従業員は当初の70人から現在は140人に増え、詰め襟服を中心に、年間13万着を生産している。
大山工場は米子工場(鳥取県米子市)を基幹工場とし6つの衛星工場から成る「米子工場グループ」の近隣に立地。米子工場から車で約20分の位置にあるため技術支援しやすく、本社のある岡山からもアクセスが容易な場所にある。
設備はミシン150台、プレス機(仕上げ・アイロン)60台、CAM2台、延反機2台、スポンジングマシン1台がそろい、詰め襟服だけでなく重衣料全般を生産できる。品質を第一に、しっかりとしたモノ作りができる体制ができつつある。
そんな大山工場で生産している詰め襟服のなかで、「カンコードライウォッシュ」が、セーラー服の「カンコービューティーウォッシュ」とともに、「2015年度グッドデザイン賞」(日本デザイン振興会主催)を受賞した。「毎日の過酷な条件下での使用を前提とし、洗濯をしても色あせず、形状変化しにくいという、当たり前の要求を徹底的に取り組んだ点」が高い評価を受けた。
ウォッシュシリーズは、学生服の外観デザインは変えず、家庭洗濯への不安を解消するために、縫製仕様や付属、生地の洗濯耐久性に特化した商品。「シワになりにくい」「型崩れしにくい」「スカートのプリーツがとれにくい」と、制服取り扱い時の三大不安要素の解決を実現した今までに無い画期的な商品で、「夜洗って朝着られる」というコンセプトのもと、速乾性にもこだわった。
菅公学生服では今回の受賞を契機に両商品の販売拡大を図るとともに、モノ作りにおけるデザインの活用を積極的に進め、ブランドイメージの向上に努める。
〈「ヨネックス」累計700校へ/トンボ 執行役員MD本部副本部長兼スポーツ商品部長 佐伯均氏/昇華転写プリント設備導入〉
――2016年の入学商戦に向けての動きはいかがですか。
15年とほぼ同等の獲得校数で推移していますが、生徒数の多い学校が獲得できていることに加えて、昨年、一昨年からアプローチを掛けていた高校を獲得していることから、生徒数では15年の入学商戦を上回りそうです。
――「ヨネックス」の新規採用校の推移は。
100校ほどになりそうで、累計では約700校に到達する見通しです。ベンチレーションなど機能面を追求した商品が好評です。
――自社ブランド「ビクトリー」の販促も強化していました。
学校の“スクールアイデンティティー(SI)”を表現できるブランドとして、来年の展示会で新商品を投入し、さらに強化していこうと考えています。とくに昇華転写プリントのニーズが高まっていることから、スポーツウエア生産の美咲工場(岡山県美咲町)で同設備を導入し、12月から稼働を始めています。原反のCAMによる裁断からプリント、縫製までの一貫生産ができる体制を整えたことで、ヨネックス、ビクトリー双方で今後の商品開発に生かしていきます。
――今年6月に催された展示会ではビクトリーブランドとしてマーチングバンド・吹奏楽部向けのウエアも打ち出していました。
すでに採用実績ができつつあり、様々な大会が多い来年秋に向けて販促をもっと強めていきます。
――小学生向けの「瞬足」ではジャージなどアイテムの充実を図っています。
保護者や生徒の認知度の高さもあって、少しずつ広がりを見せています。幼稚園向けの「マイパレット」も含め、高校から幼稚園までしっかりとしたラインアップをそろえることで、幅広いニーズへ対応していきます。
――6月から組織を改編し、スクールスポーツ事業をMD本部に組み込み、スポーツ商品部として発足しました。
学生服との連携を密接にし、総合力で拡販するのが狙いです。これまでよりも事前に意見をくみ取れる体制となったことで、色々な声を新しい企画に反映するなど、エンドユーザーの満足度を高めながら、市場でのシェア拡大に努めていきます。
〈「デサント」新モデル好評/明石スクールユニフォームカンパニー スクールスポーツ部長 宮﨑将人氏/採用校数累計1300校へ〉
――2016年の入学商戦に向けた動きはいかがですか。
前年に比べ、採用に向けた動きが早く、サンプルの貸し出し依頼が増えました。「デサント」では、これまでの「エキスパート」と「ベーシック」ゾーンに加え、新たに「エクストラモデル」を追加しましたが、やはりエクストラモデルの引き合いが活発です。目新しいデザインとともに、今まで刺繍だったロゴマークを転写プリントにし、シルエットも3Dのカッティングパターン「デュアルカット」による洗練されたものを追求しています。
機能面も高耐久消臭「デオダッシュ」や、太陽光を効率よく吸収し熱に変える「ヒートナビ」を採用したものなど、幅広いラインアップをそろえています。トリコット生地を採用したウエアは従来よりも軽量化され、好評です。一線を画す飽きの来ないデザインや機能性が評価されているのだと思います。
――採用校の推移は。
目標に掲げる100校が見えつつあり、累計では1300校になりそうです。
――自社ブランドの「ヨットスポーツ」もロゴを刷新するなど、販売に力を入れていました。
Tシャツを中心にまずまずの動きを見せています。小中学校向けが多いだけに、統合や廃校による自然減が懸念されますが、機能性を強化した新商品を充実させており、パターンを今風に補整する、素材を置き換えるといった需要への対応で採用につなげていきます。
――生産面はいかがですか。
生産は、ウインドブレーカーなど一部の仕入れ商品を除き、自社の宇部工場(山口県宇部市)や、本社さくら工場と、協力工場を含め、ほとんどが国内となっています。デサントのエクストラモデルの動きが堅調なことから、転写プリントの設備を持つ協力工場の拡大を検討していきます。
――今期(2016年5月期)の見通しは。
今期はスクールスポーツ部にとって、中期3カ年計画「アグレッシブ40」の最終年度となり、売上高40億円を計画しています。喪失校が何校か出てきていますが、昨年よりも良いペースで推移しており、しっかり目標を達成していきたいと思っています。
17年商戦は「価格」/ギャレックス 取締役スクール営業部長 梅田雅治氏/中国・日本工場フル活用〉
――2016年入学商戦の進ちょく状況はいかがですか。
5月から10月末までにほぼ一巡し、当初計画の受注量に対し残すところわずかとなりました。16年の入学商戦は、素材価格の上昇や中国をはじめとした人件費高などの製造コストの圧迫を受けました。
そのため、納入業者に向けて製品価格引き上げへの理解を求めましたが、残念ながら需要家や地域によって理解に濃淡があったことは否めません。商品面ではここ数年、“ブランド”が前面に出るような傾向がありましたが、今商戦ではブランドが重視されつつも“価格”に対しより一段とシビアな姿勢を見せる傾向が強いシーズンでした。
――商品の状況についてお聞かせください。
当社の主力ブランドである「ギャレックス」「フィラ」ともに、“防風”など生地で防風特性を訴えた機能面でのアピールと、地域によって好みを使い分けた“カラー”対策が奏功しました。ネクタイ業界では同じ赤色でも東と西では好みの赤が違うと言われますが、スクールスポーツの世界でも同様な傾向があり、きめ細かなカラー対応を打ち出しました。
――17年入学商戦に向けての方針、新商品企画の勘どころをお聞かせください。
17年入学商戦に向けて、(1)消費者が理解しやすい製品性能(2)色柄・デザイン(3)価格――を軸にした商品政策を打ち出す方針です。同シーズンは、消費税の10%への引き上げが予定されていることもあって、消費者が理解しやすい製品性能と価格面を重視せざるを得ません。
早期受発注を前提に、中国山東省の青島銀華針織(ニット生地製造)、青島吉華服装(縫製)、遼寧省の遼陽富華服装(同)の製造3拠点をフルに活用する計画です。まとまった単位の生産は中国、期近対応では本社(福井県越前市)とアワラ工場(同あわら市)の立ちミシンによる小ロット・短納期対応を絡め、製品性能と価格両面でアピールする考えです。
〈「プーマ」拡大着実に/ユニチカメイト 社長 清水義博氏/女子向け企画を充実〉
――2016年入学商戦の進ちょく状況はいかがですか。
今年は売上高20億円超えを目指しています。昨シーズンの納品もスムーズに進み消失校が少ない結果となっています。微増収増益を予想しています。少子化が進むなかで、新たな採用校の数が消失校を若干、上回っています。
今年は新規で提案する学校で例年より採用可否の決定が遅い傾向があります。制服を扱う各社の値上げや、大手体操服メーカーのブランド戦略に大きな動きがあったことが影響したようです。当社も不採算品の値上げを実施しましたがおおむね学校側の理解は得られているという感触です。
――商品の状況についてお聞かせ下さい。
別注品の採用がやや減少していますが、昨年導入したスポーツブランド「プーマ」の体操服がそれを補う形で着実に増えています。認知度の高さに加え、品質でも支持を集めています。また中・高校に加え小学校向けのジュニアラインの販売も始めました。
プーマには価格の高いものからトップ、ミドル、ベーシックの3カテゴリーがあり、ミドルレンジ以上はユニチカトレーディングの生地を使っています。
トップのジャージにはストレッチ素材「ゼットテン」、半袖シャツには異型断面糸使いの吸汗速乾・防透素材「ルミエース」、ミドルには吸汗速乾素材「スパッシー」を使っています。今年はミドルの売れ行きが好調でした。価格、意匠性、機能のバランスが評価されました。
新たに高遮熱素材「こかげマックス」を使ったシャツを販売しており酷暑対策として売れています。
――2017年入学商戦への方針を。
引き続き不採算品での値上げ交渉を進めると同時に、コストを削減するために素材や品番の集約を進めます。またこれまで男子と同じ型で小さいサイズを女子向けに販売していましたが、中高で女子の体形にあった企画を増やします。
プーマでは小学校への販売拡大に努めます。中高へはミドルに加えベーシックレンジの商品構成を充実させ、売上量を増やす方針です。
〈「ロット」採用120校に/瀧本 企画開発部長 寺前弘敏氏/価格改定交渉は難航〉
――2016年入学商戦の進ちょく状況はいかがですか。
学校体育衣料で早期に売上高10億円の達成を目標としていますが、今商戦は前年比横ばいの8億円となりそうです。新たな採用校が増えているにもかかわらず、売り上げが計画通りには伸びません。
背景にあるのは少子化です。すでに取り引きのある学校でも生徒が減っており必然的に販売数が落ちています。
そうしたなか、対策として今年からスポーツ用品大手ミズノと連携して「ミズノ」ブランドの体育館シューズに加え体育の授業で使う衣料以外の関連商品もカタログで扱い、学校側の要望に応じて、ミズノから仕入れ販売できるようにしました。
――今年から各社価格改定を実施しています。交渉は順調ですか。
体操服の値上げは学生服以上に難しいというのが実感で、容易に理解は広がりません。原材料アップ、製造コスト上昇を考えれば、値上げを今しないと将来的に事業が成りたたなくなるのではというひっ迫した状況です。業界全体で取り組まなければいけない問題ととらえています。
――売れ筋商品についてお聞かせ下さい。
2011年から販売している伊スポーツブランド「ロット」の販売数が伸びています。前年に累計100校での採用を達成し、今商戦は現在、10%増の120校弱に広がっています。ただ、既存の取引先がこれまで採用していた自社ブランド「スクールタイガー」からロットに変更するケースもあり、自社ブランドがやや減っています。ロットは毎年30~50校をコンスタントに増やして将来的には300校にまで引き上げたいと思います。
――2017年入学商戦の方針をお聞かせ下さい。
価格改定の交渉を続けます。体操服ではこれまで男女兼用の型から女子の体形に合った企画を増やします。またミズノとの取り組みを深め、シューズの販売を強化します。
また、営業活動にタブレット型多機能端末で体操服のコーディネートやデザインを現場で簡単にシミュレーションして提案できる新たなシステム「T―PIT(ティーピット)」を導入します。
〈制服とダブル提案強みに/ミズノ グローバルアパレルプロダクト本部スクール・法人生産課長 田上光芳氏/海外生産拠点の再編進む〉
――2016年入学商戦の進ちょく状況はいかがですか。
今商戦のスクールウエア部門の売上高は前年比横ばいの30億円を見込みます。新たに採用された学校は前年比5校増で推移していますが、少子化の影響で大幅な伸びは難しい現状です。
当社の学校体育衣料は7割が海外産で円安の影響を大きく受けているため、今年から値上げを実施しています。
値上げ幅はアイテムや生産地によって異なりますが、品番や素材を集約したり、生産体制を見直したりすることでできるだけ上げ幅を小さくするよう努めています。
――生産体制をどのように変えますか。
素材から製品までの一貫生産体制をインドネシアに加え、来年1月ごろまでにタイでもスタートします。またベトナムでは中規模の生産拠点を2カ所設け来年春ごろにテスト生産を始めます。
現在扱っているウエアは定番が8割、別注が2割ほどの構成比率で、定番品のコストメリットを出すために、今後3年先に海外産を全体の8割にまで引き上げる方針です。
―今年の新商品についてお聞かせ下さい。
当社は中学校でのシェア拡大が課題でした。高校向けに比べ中学向けの体操服は価格帯が低いため、当社独自の品質基準を満たしながら、どのように価格を下げるかを研究してきました。生産条件や集約した素材を使いながらトータルでコストを削減し、今年から価格とデザインでバランスのとれた中学校でも受け入れられる商品が新たに加わりました。
機能面では15年入学商戦でポロシャツに消臭機能を持たせたところ好評だったため、ジャージの全ての新製品に消臭機能を付加しました。
――2017年入学商戦に向けた方針をお聞かせ下さい。
当社は今年から学生服の販売も始めました。これまでの学校でのクラブ活動へのスポーツ用品の営業網を活用して、用品から体操服、学生服の両方を提案することもできます。
学生服メーカーの瀧本との連携した販売戦略も今年始まりましたが、今後3~4年かけてじっくりと成果につなげたいと思います。