変わる基幹工場/帝人松山事業所 60 周年(後)/研究開発の中核に

2015年11月18日 (水曜日)

 帝人は高機能素材のソリューション開発拠点として今年8月、松山事業所南地区に技術開発センターを開設した。同センターの一つで別棟に設けたのが、移設後初披露した燃焼マネキンによる火傷評価システム「PLIFF」(プリフ=プロテクト・ライフ・フロム・ファイヤー)になる。

 燃焼マネキンによる火傷評価システムは国際規格「ISO13506」(2008)に基づくもので、世界に18しかなく、日本では消防庁と同社のみ。民間企業では世界でも同社と米国・デュポンしかない。

 プリフのマネキンはセラミック製のため、FRP製よりも過酷な条件に対応できるうえ、自立し足裏からデータ収集できるのが特徴。全体に100個以上のセンサーが等面積、等間隔で配置され、周りから600℃の炎を当ててセンサーにより耐熱・難燃性素材を使った衣服着用時のやけどの度合いを分析できる。しかも、大阪研究センター(大阪府茨木市)の移設前よりも性能も高めた。国際規格による火炎照射時間は8秒だが、さらに長い場合にも対応できる。

 同社はプリフを活用し、メタ系アラミド繊維の「テイジンコーネックス」(岩国事業所・年産2370トン)、今年から生産を始めた「テイジンコーネックス ネオ」(テイジン・コーポレーション〈タイランド〉・2300トン)を使った消防服などの開発を行うが、耐炎性・難燃性を維持したうえで軽量性や着用快適性などがテーマになるという。

 プリフをはじめとする技術開発センター、2013年に静岡県御殿場市から移設し、熱可塑性炭素繊維複合材料の開発を中心に行う複合材料技術開発センターなどを置く松山事業所。高機能素材、ヘルスケア、ITを融合したソリューションによる新ビジネスモデルを目指す発展戦略での研究開発拠点の中核でもある。後藤陽代表取締役専務執行役員技術本部長は「技術開発センターは第一歩。新たな種をまき、まき続け育てる」と意欲を示す。

 松山事業所は近年、アセテート、ポリエスル長繊維の生産撤収など厳しい時代が続いたが、研究開発の中核拠点として新たな道を歩み始めた。村岡剛松山事業所長が「社内外の頼られる事業所として一歩踏み出す」と語るように、15年は大きな転換期と言える。(おわり)