クローズアップ/帝人フロンティアCSR調達戦略室長杉本 泰樹 氏/付加価値としてのCSR調達
2015年10月23日 (金曜日)
帝人フロンティアは1日の機構改革で新たに「CSR調達戦略室」を設けた。テキスタイル第二部長との兼任で同室長に就いた杉本泰樹氏に、取り組み内容や今後に向けたCSR調達の重要性を聞いた。
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――CSR調達戦略室の体制は。
11人で構成し、私を含め全員が兼任しています。4年ほど前にCSR強化のプロジェクトとして立ち上がり、その必要性が今後に向けて確実視されること。また、経営陣から現場の営業担当者まで、全社的な意識の高まりも受けて組織を設けました。
――どういったことを行っていく組織ですか。
帝人グループで設けている行動規範にひもづくような形で、出来上がったCSR調達に対する考え方を全社に浸透させる取り組みを進めます。国内外を含む総合職には必須で研修するほか、海外のナショナルスタッフにも現地語でセミナーを行っていきます。7月には中国、8月にはインドネシアでセミナーを行いました。国内のグループ会社にも年に1回はCSR調達に関する研修を行いたいと考えています。
加えて、アンケートなどを通じて国内外の協力工場各社に実態調査を行うこと。取引先を巡回して、実際に調査へ赴くこともやっていきたいですね。定期的に調査し、改善ポイントをこちらから出して、リポートをもらう。それを繰り返すことで、営業担当者や取引先の意識向上に貢献するはずです。
――国内アパレルのCSR調達に対する意識の現状をどう見ていますか。
相談はあり、「やらなければならない」という意識が高まっているのは間違いないですが、スポーツを中心とするグローバルアパレルに比べ、日本のアパレルではまだ意識は低いと言えます。ただ、五輪やサッカーワールドカップをはじめ、大きなスポーツイベントが決まると、連動して課題に挙がる傾向がありますから、2020年の東京五輪に向けて準備が活発化してくるとみています。
――今後の課題は。
例えば、長時間労働や外国人労働に関して、法律が無い国もあれば、法律があっても罰則規定が無い国もあり、国際的なルールが不明確です。それだけに、各社・各営業担当者の意識に頼る部分が大きいので、現場の営業担当全員がスピード感を持って取り組む必要があります。また、CSR調達は個社だけでなく、業界全体の課題です。情報を共有して、広く開示できるプラットホームも必要となるでしょう。
CSR面がしっかりした工場は、収益性が高いモノ作りができているケースが多いという実感があります。それはCSRが、衣料品が持つ付加価値になっているということであり、こうした価値観が市場・消費者に浸透すればいいと思います。