合繊テキスタイル事業 8社の違い、徐々に鮮明
1999年03月01日 (月曜日)
八〇年代末から九二年ごろまでの新合繊ブームでは合繊メーカーの収益の柱になっていたポリエステル・テキスタイル事業だが、この数年は低迷が続いている。これをどう立て直し、強化するかは、目先の決算対策にとどまらず二十一世紀への勝ち残りをかけた戦略課題だ。メーカーはこの位置付けを明確にして抜本的な対策に動き始めた。その中で八社八様の生き方が鮮明になりつつある。
(きょう1日、あす2日、4~9面特集「合繊メーカーのテキスタイル戦略」で各社インタビュー)
カネボウ合繊は「ファイバーとテキスタイルとでは事業運営のポイントが違う」(佐藤良介ポリエステル営業部長)と、昨年十月から婦人アウター用などのファションテキスタイルをグループ商社のベルテックスに移管、ファイバーメーカーの原点に立ち返る方針である。
対照的に三菱レイヨンは「長繊維に関してはアセテートとの複合でテキスタイルメーカーの道を進む」(伊藤靖彦長繊維事業部長)と宣言。流通業界の構造変化を見据え、卸子会社「ダイヤテキスタイル」を四月から発足させる。
この二社の動きを両極に、八社のテキスタイル戦略の違いが鮮明になりつつある。ポイントの一つは小ロット・期近発注が進むファッション分野への対応だ。
一定の規模と計画生産が不可欠のメーカーチョップでは困難が多いとされるファッション分野に真正面から挑むのは帝人。原糸生産をこれまでの月次管理から週次管理に切り替えるとともに、機屋、染工場、アパレルをオンラインで結び、前工程の進み具合を把握し、ロスを極小化する新QRシステムを四月からトライアル始動させる。「その実践を踏まえ、二〇〇〇年度からネットワークをさらに広げる」(松田勇取締役テキスタイル事業本部長)構えだ。
東レは婦人服地でボトム、フォーマル、差別化プリント下地など「安定分野」を重点志向する一方、ファション素材はプロダクションチーム(PT)の自主開発・自主販売で対応する。「チョップで縛らず、『柔構造』にする」(奥村嘉宏取締役テキスタイル事業部門長)ことで、売り場主導型マーケットに適合させる。
同様の考えから旭化成工業は四月一日付でポリエステル100%の婦人服地商権を産元子会社、旭陽産業に移管する。ただキュプラなど化繊複合は「メーカーチョップとして果たすべき機能が残っている」(川西康之テキスタイル第一事業部長)とした。
プリント下地など定番薄地の扱いも焦点。中厚地シフトを進め、この三年で薄地を三分の一まで減らしたクラレは「これからもさらに減らす」(林雅之取締役衣料事業本部長)。ユニチカは来上期にかけ産元子会社、酒伊商事に移管する。テキスタイルの事業内容を見直し「内外環境や実績、素材力から商品構成にメリハリをつける」(岩尾弘一取締役合繊営業本部長)措置の一環だ。薄地のウエートが高い東洋紡は「ファッション偏重を是正し、スペックで勝負する機能テキスタイルを強化する」(小梅川佳延取締役エステル長繊維事業部長)流れの中で定番薄地を縮小する。
海外の巨大メーカーがスケールメリットを生かしてファイバー売り中心の事業になっているのに対し、日本メーカーは委託生産でチョップ・テキスタイルを販売することで差別化・付加価値化を図ってきた。関係会社に移管したケースも含めて、テキスタイルの重要な役割は今後も変わらない。当面は商品構成や販売形態、生産システムなどの改革を通じて二十一世紀型テキスタイル事業構築への模索が続くことになる。