ベトナム/アセアン地域の繊維ハブへ
2015年09月24日 (木曜日)
TIホーチミン事務所/規模拡大へ工場増設/米国向けも大手に販促
東レインターナショナル(TI)のベトナムホーチミン事務所は、生産力を強化し、日本向けや欧米向けOEMを着実に拡大する。同事務所は現地企業と提携する主力4工場を核にドレスシャツや中高級ゾーンのスポーツウエアのOEMを手掛ける。今期はアイテムの幅を広げ、それに応じて生産力を拡大している。
1月に中部の協力工場にユニフォーム専用工場を増設した。素材・縫製一貫で生産に取り組み、下期から供給を開始する。来期は年間50万着の生産を見込む。北部でも新たに協力工場を確保した。大手SPA向けの生産をスタートし、9月から製品供給を始める。
ホーチミン近郊では日系縫製工場に少額出資した。特殊な高機能素材の活用に特化した工場で、9月からアウトドア製品を本格生産する。生産力の規模拡大に伴い、日本人8人を含む30人の技術者を各工場に派遣、日本基準の品質管理や生産管理を徹底する。
海外市場の開拓ではTPPの締結をにらみ、米国大手アパレルに本格的な販促を仕掛け、日本素材を活用したトライアル生産を始めている。山口孝明所長は「早くから準備を進め、働きかけを強めてきた」という。来年1月には2階建ての既存工場を3階建てに改築、1フロアすべてを欧米向けラインとして増設するなど販売拡大に向けた生産力の強化も進める。
清原/ベトナム法人設立へ/現地で服飾資材を開発
清原のベトナム事業は、2010年設立のホーチミン駐在員事務所が、アセアンの情報収集やベトナムでの服飾資材のデリバリー、工場対応、非繊維分野の貿易などで本社のサポートを行っている。
同社が主力とするレディースアパレル分野では、まだ日本や中国から資材を取り寄せて使うことが多いが、スポーツやワーキング、メンズ分野では現地で資材を調達するケースも増えてきている。
縫製拠点の中国からアセアンへのシフトが続くなか、ベトナムでも「現地でレディース分野の資材を調達したい」というアパレルや商社の要望が強まっている。
「レディース向けの資材も少しずつ開発が進み、現地調達できる商品が増えてきた」と津田清所長は指摘する。
同社では高まる現地調達ニーズに対応するため、今秋をめどにホーチミンに現地法人を設立する。基本商材を中心に現地で本格的に服飾資材の開発を進める。
新法人は従来からの取引先である中国や韓国の資材メーカーと連携を深め、「“清原品質”の商品開発を進めることによって、日系アパレルが安心して使える現地服飾資材の提供」(津田所長)を目指す。
輸出入権や販売権を持つ現地法人を設立することで、現地素材ばかりでなく、各国地域から顧客ニーズに沿った最適な資材をそろえ、ベトナム縫製の様々な商流に対応していく。
双日ベトナム/カンボジア生産2.5倍/QC徹底し効率化図る
双日ベトナムの繊維部は、インドネシアに次ぐアセアンの生産拠点としてベトナム、カンボジアでの生産に本格的に取り組むため、今年4月に設立された。専任の駐在員が派遣され、日本人技術者やスタッフなどを含む5人体制でスタートした。
今期の繊維事業は、隣国カンボジアでの衣料品OEMを前年比2・5倍以上の年間700万枚に増やす。その背景には台湾系のパートナー企業と取り組むカンボジアでの日本向けOEMが急増していることがある。繊維部の天野隆晴副部長は「生産アイテムも主力のレギンスパンツから布帛のシャツ、カットソーまで広がっている」と説明する。
双日グループの強みは、中国での大手SPA向けOEMの実績のなかで培った日本水準を徹底する品質管理にある。拡大するカンボジア生産でも、中国でのノウハウを導入する。現地の日系検品企業と連携し、日本水準の品質管理を徹底する。
これを機に同部は、ベトナム以上に労働者の賃金が急上昇しているカンボジアで、将来にわたって生産拠点として活用するための基盤作りと、生産効率の底上げを図っていく。
一方、ベトナムでのOEMに関しては現地での素材生産が徐々に進みつつあることから、縫製単体ではなく素材からの一貫での対応を視野に、中国、台湾系の織布、染色加工場などとのパートナーシップを強める。
ヤギ/独自素材でOEM/周辺拠点との連携で
ヤギのベトナムでの製品OEMは、2011年設立のホーチミン駐在員事務所が拠点となる。日本人3人、現地スタッフ15人の陣容で、ホーチミン、北部ハイフォン、中部ダナンの4つの協力工場を主力生産拠点とする。
日本向けOEMはレディースカジュアル分野が中心で、販路別の構成比率は専門店、百貨店向けが48%、通販向けが48%、量販店向けが4%となっている。
専門店、百貨店向けは中高級ゾーンの商品を1000枚以下、100枚単位の小ロット発注にも対応する。「中国生産から振り替わっている分が多いが、日本生産で作りにくくなったものが振り替わっているケースも増えている」と辻上章平所長は説明する。高級品では航空便輸送で見積もり依頼されることも少なくない。この分野のOEMの取扱量は前年同期比10%増で推移する。
今後は専門店、百貨店向けOEMで、現地調達の独自素材による一貫対応OEMを拡大する。すでにタイ現地法人のプログレス〈タイランド〉で生地化したオーガニック綿使いの素材で、16春夏向けOEMを進んでいる。
現地開発の綿・「テンセル」のシャツ地をヤギ〈香港〉で備蓄し、ベトナムで縫製化する案件も動いている。同事務所では引き続き、現地で独自素材の開発を積極的に進め、周辺拠点との連携で一貫対応のOEMを拡大する。
タキヒヨー/カンボジア生産を強化/資材や素材調達も拡大
タキヒヨーのベトナム事業の拠点、ホーチミン事務所は、ベトナム、カンボジア地域での衣料製品OEMに対して、現地でタキヒヨー基準の品質を実現するために、コーディネーター的な役割を果たしている。
同事務所は2013年7月にタキヒヨーの香港法人、瀧兵香港の駐在員事務所として設立された。2年を経て今期は、3つのポイントでOEMを支援する機能を高める。
第一は製品OEMで急速に拡大しているカンボジア縫製を整理し、サポート体制を強化することだ。同事務所のカンボジア縫製の取扱量は、今年の上半期も前期比20%増で推移した。通期では「カンボジア縫製がベトナム縫製を上回る」(石山健太郎所長)見通しだ。
カンボジアでは中国、台湾系の縫製工場が次々と新設されている。そのため、新しい工場との取り組み環境や全体的な生産の仕組みを整備することが、今後重要なポイントになる。
2つ目は副資材や素材の調達などベトナムでできることを広げ、その仕組みを整えること。3つ目は新しい縫製工場やテキスタイルメーカー、雑貨工場などをリサーチし、衣料品にとどまらず、新たな生産の仕組みを社内の各部署に提案することだ。
これら3つのポイントで機能強化を進め、同事務所はタキヒヨーグループ全体のアセアン地域でのOEMの広がりをサポートする。
ソトー/ベトナムテキスタイル事業/バルク生産の第1弾出荷
ソトーのベトナムでのテキスタイル事業が着実に進行している。昨年12月から本格生産がスタートし、このほどウール・ポリエステル混スーツ地のバルク生産の第1弾を出荷した。
同社テキスタイル管理部で現地に駐在する山越辰也課長は「ウール・ポリエステル混はほぼめどがついた。現在はさらに品質を上げるための課題に取り組んでいる」という。さらにウール100%素材についても「サンプルはできており、いま顧客に見てもらっている」段階まで進んでいる。
同社のベトナム事業は、2013年9月にホーチミンの有力企業28コーポレーションと業務提携し、傘下の綿紡織・製品一貫生産企業AGTEX28に梳毛織物の染色整理に必要な設備をソトーの投資で導入し、1年の準備を経て生産がスタートした。糸は中国、インドから調達する。
中国からのアセアン地域シフトが続くなか、現地調達できる日本品質素材への期待は高い。そのため同社はAGTEX28に日本人3人を派遣し、日本品質の現地素材開発に取り組む。検反、修整も現地の桑原と連携し、日本基準のより精度の高い検反、修整を行っている。
当面は日本向けのウール・ポリエステル混スーツ地が中心で、今後は黒、紺、チャコールグレーの3色については糸を備蓄し、現地商社などの調達ニーズに応える。
一方、同社の素材は香港にバイイングオフィスを置く欧米アパレルや現地アパレルからも注目されている。山越課長は「市場は日本だけではない。海外やベトナム国内でもチャンスはある」と、近い将来の海外市場開拓も視野に入れる。