不織布新書15秋

2015年09月18日 (金曜日)

ユニチカ/営業利益率15%めざす/タイ増設など成長戦略で

 ユニチカはタイ子会社、タイ・ユニチカ・スパンボンド(タスコ)でのポリエステルスパンボンド不織布(SB)増設分を「稼働2~3年内にフル生産させる」(吉村哲也執行役員不織布事業部長)計画だ。タスコ3号機となる増設設備は新技術を盛り込んだ年産6000トン規模で、2017年4月に稼働する。設備投資額は約40億円で、現在は新商品、既存品でプレマーケティングを進める。

 不織布事業部はポリエステルSBと綿100%を主力とするスパンレース不織布(SL)を製造販売する。17年度の営業利益率15%を目標を掲げるが、「少なくとも売り上げも200億~300億円の事業にしたい」との考え。タスコ増設はその成長戦略の一つだ。増設でタスコは1万トン、岡崎事業所(愛知県岡崎市)と合わせたポリエステルSB能力は日系最大の3万トンになる。

 タスコ増設後はカーペット、カーマット一次基布など汎用品の生産を移管するなど最適立地での生産体制を構築する。岡崎事業所は芯ポリエステル・鞘ポリエチレンによる複合SB「エルベス」やドッグボーン十字断面SB「ディラ」などにシフトする予定だ。また、エルベスは他素材との複合提案による用途開拓に重点を置く。

 綿100%「コットエース」を主力とするSLは垂井事業所(岐阜県垂井町)に年産4500トン、丸三産業との合弁会社、UMCT(ユニチカ・マルサン・コットン・テクノロジー)に5000トンの規模。綿100%に絞れば世界最大級。最近はフェースマスクなど化粧雑貨向けが伸長する。全体の10%に過ぎないが、同分野の拡大や生材料、生活資材の増販を目指す。

ユニセル/世界唯一、独自不織布/タイでの事業化検討中

 ユニセル(山口県岩国市)は帝人の主力事業である高機能繊維・複合材料事業グループに所属し、スパンボンド不織布(SB)と異なる独自の合繊長繊維不織布を製造販売する。

 バーストファイバーやトウ開繊で中間製品を作り、積層し横方向に広げるという世界唯一の製法による不織布は①優れたヒートシール性②鮮やかな印刷性③良好な成形追随性④高い吸油・保温性――などの特徴がある。

 生産能力は年2000トン(帝人岩国事業所内)とSBに比べるとかなり小さいが、素材特徴を生かして自動車のボンネット裏の防音材や断熱材などの建材、包装資材など向けに展開する。

 ユニセルは自動車防音材を中心に輸出比率が25~30%を占める。今後の海外需要増を見込み、

帝人のタイ子会社、テイジン・ポリエステル〈タイランド〉(TPL)での不織布生産(年200トン)を検討中だ。すでにTPLにはスリット加工機を導入して加工を始めた。

 帝人がユニセルを再評価し、力を入れる姿勢は2015年5月に開催された海外展のブース構成にも表れた。世界最大の産業資材・不織布見本市であるドイツ「テクテキスタイル2015」、アジア国際不織布産業総合展示会・会議「ANEX2015」の帝人ブースの一角を占めていたからだ。

 そこでは、国内実績のある製品として包装材料向けのヒートシールタイプや自動車のボンネット裏など吸音材向け難燃タイプを提案した。

 なお、ユニセルはメルトブロー不織布も製造販売しており、ポリエステルエラストマーを原料にした伸縮タイプもラインアップする。

東洋紡/北米事業化検討続く/17年度生産を目標に

 東洋紡は2017年度の生産開始を目標に、北米でのポリエステルスパンボンド不織布(SB)事業化の検討を続けている。意思決定は遅れているが「15年度上期中には決めたい」と田中茂樹スパンボンド事業部長は言う。

 北米での事業化は自動車資材の現地需要に対応したもので、年産6000トン規模を想定する。そのために、販売子会社の東洋紡〈米国〉にも専任担当者も置いている。15年度も自動車資材は国内、中国、タイなどは低調ながら米国販売が好調に推移するだけに、意思決定を急ぐ。

 「品質、コストで世界ナンバーワンを目指す」という同社のポリエステルSB事業は国内で年産1万2000トン規模を持つほか、中国企業への技術指導によるOEMも行う。自動車資材のほか、建材、土木資材に加え、低目付品による生活資材にも力を入れる。

 10月からこのOEM先による自動車資材用の新商品を投入する。これまで日本生産していた塩ビレザー代替の「カテナ」「モデナ」をはじめとする商品を海外生産することで、中国進出する日系企業や現地企業向けに販売を始めるという。

 さらに新商品では16年4月をめどに「分子配列制御技術」を生かした生活資材用や自動車資材向けの開発を進める。新商品開発は14年に導入した中量産型試験機(年産1500トン)を活用する。

呉羽テック/海外の自立化めざす/真のグローバル化へ

 東洋紡の短繊維不織布製造子会社、呉羽テック(滋賀県栗東市)の斉藤正和社長は、将来的に海外事業会社が個々に戦略策定、開発を行う「真のグローバル化に向けた体制を固める。そのためにも現地の人材育成が重要になる」と語る。

 6月24日付で就任した斉藤社長は、品質・生産性の向上という従来路線を継承しながら、将来をにらみ台湾、タイ、米国の海外事業会社の自立化を目指す。

 同社は不織布メーカーとして豊富な海外拠点を持つ。その主力が自動車のエアフィルター用不織布。日本・タイ・米国・台湾の世界4極での供給体制を確立している。台湾は昨年設備導入したばかりだが、タイ・米国は2014年度に続き好調を持続している。

 ただ、懸念がないわけではない。機能紙シフトがあるからだ。このため対抗品の開発を行う一方、他分野の開拓に力を入れる。とくに米国は機能紙化がいち早く進む可能性があるため、他分野開拓の重要性は高い。その一つが東洋紡のAC事業部、グループ企業のユウホウ(大阪市北区)と共同のキャビンフィルターになる。

 海外では化学品専門商社オー・ジー(大阪市淀川区)のインド合弁会社にバグフィルター用不織布で技術指導を行うが、自動車資材への要望も強まっている。「今後の広がりを期待する」と言う。