強み生かし付加価値さらに磨く加工場
2015年08月31日 (月曜日)
大阪染工/スレン前面にニット強化
大阪染工(大阪府島本町)の強みは、同一工場内に連続染色、液流染色、捺染を集約するとともに、全部門でスレン染色ができる点にある。なかでも今後、液流染色によるニット染色と捺染の工場内一貫加工の充実を目指す。
現状でのネックはニット染色コストが競合他社に比べてやや高い点。ただ、ニット染色でも織物と同様の生産管理システムの確立に目下急ピッチで取り組んでいる。極めて高い品質管理レベルを要求する海外有名ブランドとの取り組みで、染色レシピや配台、バッチ数の見直しなどで液流染色の加工技術基盤へのテコ入れが進展。直行率向上はすでに成果が見え始めている。こうした価格競争力向上策を講じながら、他社に無い特徴であるが現在は官需や有名ブランド向けの一部のみの採用にとどまるニットのスレン染色で、受注拡大を狙っていく。
他方、織物では国内唯一のプラズマ加工機を生かした防汚加工、吸水加工も訴求を進める。ユニフォーム向け織物を中心に受注増の傾向にある。ワイピングクロス向けなど産業資材にも用途を広げており、衣料・資材問わず新分野の開拓を図る。
飯田繊工/生地・製品の自販に本腰
飯田繊工(大阪市東淀川区)では、4月に本格始動した新規事業部が生地・製品の自販事業に取り組んでいる。オーダーメード紳士服製造のエフワンへの自社加工のニットスーツ地の供給の取り組みがすでに進むが、自社でも縫製をエフワンに外注して、製品ブランド「エレガンテ」として製品販売にも着手した。さらにオフィス、サービスユニフォームへの展開も模索している。生地商社からの引き合いもあり、今後、生地バリエーションの拡充にも取り組む。
染色加工も好調だ。今9月期は15%程度の増収増益を見込む。加工量は前期比約10%減ながら、開発提案型営業へのシフトが奏功。低採算の晒し業務を10%まで絞り減り、高採算の染色加工に置き換えた。現在ではひと月の受注の約3割を新規、品転がらみが占める。
設備導入3年目の丸編み地起毛加工も婦人インナー向けを中心に順調に受注が増え、染色の受注増につながる相乗効果も生んだ。従来、綿絡みを得意とするがナイロン、アクリルなど他素材の加工も増加。アウター素材でも、アクリル混などの受注が増加し、現在は綿100%とそのほかの加工量がきっ抗する。
吉田染工/貴志川工業/製品・生地自販が進展
糸染めの吉田染工(和歌山県紀の川市)と関連会社で生地染色加工の貴志川工業(同)は、生地や製品自販の取り組みを加速させている。
吉田染工では島精機製作所の「ホールガーメント」導入後、製品への引き合いが増加傾向にある。
欧州のブランドに製品の採用が決定し、12月に店頭に並ぶほか、米国からの試作依頼も急増している。加えて、国内の大手商社や糸商が予算面でとん挫した企画を糸染め・編み立て・加工まで一貫生産できる特徴を生かして、国内で再挑戦しようという要望も舞い込む。生地自販でも、今春からテキスタイルデザイナーと契約し、自社生地の開発体制を強化した。自社一貫生産の強化に向けて、横編み機増設を予定し、編み組織の提案バリエーション拡大にも取り組む。
貴志川工業では「ボタニカルダイ」など加工提案も充実させるとともに、秋口に綿、レーヨンほかのセルロース繊維、ポリエステル、スパンデックスなどの素材で「エコテックス認証」取得を予定する。取得を前提に大手婦人インナーアパレルとの取り組みが進むほか、「J∞クオリティー」の認証も取得。吉田染工も取得に向け審査に入った。
日出染業/付加価値提案に力注ぐ
日出染業(和歌山市)は今後、加工の付加価値化を軸とした営業提案に力を注ぐ。その背景には「豊富さでは国内一で、ほぼすべての加工ができる」と自負する多様な染色加工設備、加工バリエーションの多さがある。
この総合力を生かした加工の組み合わせで、さらに付加価値加工を開発する余地があると同社ではみている。例えば最近では、タンブラー乾燥を用い、ハリ・コシ感も出せる綿素材向けソフト加工にシーズンを問わず年中要望が集まるが、こうした人気の加工を軸に提案を強化していく。
同社は受託加工をメーンにしながらも、展示会に継続的に出展し自社発の発信にも力を注いでいる。10月には、和歌山県の繊維企業にも門戸を開いて規模を拡大する高野口パイル産地の総合展「ぷわぷわ」に初参加するほか、5月展の参加を見送った「プレミアム・テキスタイル・ジャパン」でも、11月展からの出展再開を検討している。
設備面でも、染料薬剤価格の高騰が依然続くなか、省エネルギー投資を進め、コスト削減に取り組む。高効率のボイラー導入や照明のLED化などを検討している。
播磨染工/「トライ」がモットー
播州織産地の播磨染工(兵庫県西脇市)は産地の産元商社からの糸染色依頼をメーンの仕事とするが、産地外や異業種からの仕事にも積極的に応じている。
現在の従業員は約30人で、産地内の染工場としては中堅規模だ。キャパシティーは月産70万㍍。染色釜は約40基で、ビーム染色とチーズ染色を行い、過去の蓄積から約10万色という豊富な色糸見本を持つのが強み。
數原宏幸社長は自社の強みに「トラブルへの対処を含めた納期対応の速さ」を挙げ、さらに「色合わせ、正確な色出し」にも自信を持つ。しかし現状に満足しない。數原社長は、「多品種、小ロット、短サイクルへの対応をもっと強めていかないといけない」と機能の向上に日々努めている。
「依頼があればトライしてみる」をモットーとする同社には、産地外や異業種からの染色依頼も舞い込む。過去には畳縁に使う糸を染めたこともあり、高校球児が使う野球ボールの縫い糸も染める。色彩豊かな色糸で縫い上げられたこの球は「ドリームボール」と名付けられ、高校野球の熱戦に彩りを添えている。
東海染工浜松事業所/綿でドライな風合い
東海染工浜松事業所(静岡県浜松市)は今期、新しい加工として「ROC(ロック)」加工を提案する。ロック加工は綿100%でもドライなタッチと固さを与える加工で、毛羽感を感じさせない高級感も持つ。高付加価値素材を求める傾向が強まるなか、顧客などの反応は良好で、すでに営業的にも動きが出始めている。
同事業所の加工は、加工工程の中で特殊な前処理を施すことによって、高品質な独自の加工を生み出している点に大きな特徴がある。
きれいめで合繊ライクな加工「JコットンSS」の進化バージョン「Jプレミアム」も評価が高い。綿でシワになりにくく梳毛織物のような風合いの「プレスモ」加工は、メードイン・ジャパン素材への関心が高まる欧州で徐々に評価が高まってきたという。
日本でも国産素材が見直され、価格よりも付加価値を重視する消費傾向が強まる一方で、市場に並ぶ衣料製品には似たような機能加工が多く見られる。
そのような状況のなか、吉田隆文事業所長は「顧客が面白いと思えるような加工に挑戦し、引き出しを作っておくことが重要」と語る。
日本形染/凹凸感の加工アピール強化
日本形染(静岡県浜松市)は恒久的な凹凸感とシワ形状を施すミラクルウェーブ加工など、同社が得意とする凹凸感のある加工の訴求を強める。差別化素材を求める傾向が強まるなか、同社は付加価値を高める加工を増やして利益率を改善する。
ほかに綿の紡毛タイプの起毛加工やストーンウオッシュ調ムラ染めを表現したセリサイト加工などを訴求する。新しい加工の開発などでは30代の若手のプロジェクトチームがけん引し、社内の士気も高まっている。
同社の2015年4月期は増収で利益面は前年並みだった。5~10月の閑散期は厳しい状況だったが、11~4月はパートナーシップを築いている優良顧客との取り組みが進んだこともあり、発注は増加傾向で推移した。
江間克弥常務は「顧客の思い描く物を忠実に実現する能力が着実に上がってきたことが評価され、客先でのシエアアップにつながっている」と説明する。加工料金については「今は上げられなくても、次に上げられるように」と改定交渉を続ける。今期は5~7月の閑散期もスペースは埋まっており、追加発注もそれほど減らない見通しだ。
艶栄工業/スピード感持ち新分野へ
艶栄工業(愛知県蒲郡市)はカーテン地、資材向けの基布、服地を中心とする染色加工場。カーテン地は高級ゾーン向けの生地が中心で、1色当たり500~600㍍の小ロットにも対応する。カーテン地に独特な膨らみ感を与える加工「SHS」が好評。
服地では綿・麻混、レーヨン100%、ウール・ポリエステル混などの生地に、酵素による減量加工と風合い加工を施す「ニドム」加工が再び注目されている。主力のカーテン地が5割強、資材向け基布が約4割を占め、服地は約3%の構成となっている。
2015年11月期は原燃料費が上昇しているうえに、カーテン、資材とも市場環境が良くなく商況は厳しい。そのため同社ではカーテン以外の寝装や介護など新たな分野の開拓を進めている。
嶋田義男社長は「5つくらいの柱がないと生き残れない」という。産地の得意商材の一つでもあるガーゼ素材の市場調査をすでに始めている。同時に若手の社員を補充し、人材育成にも乗り出した。現在の事業を維持しながら、スピード感を持って新分野の開拓を進めていく。
藤浜染工/若さと発想で新規開拓
チーズ染色機30台を保有する藤浜染工(愛知県蒲郡市)は、コンピュータを活用した独自の品質管理で小口から大口までの様々なロットの糸染めに対応する。1キロ対応機から300キロ対応機まで15種類のチーズ染色機を保有し、発注数量に近い機械を選択することで、合理的なコスト対応が可能になる。藤田洋一郎社長は「1キロも300キロも同じお客さま」という。
天然素材から合繊素材まですべてをこなし、年々新規開拓の範囲を広げて得意先を増やしている。かつてはカーテン用糸の染色が中心だったが、今はそれ以外が半分以上を占める。顧客も地元の三河ばかりでなく、尾州や北陸など全国に広がる。今期の業績は前年並みで推移する。
産地を取り巻く状況は厳しいが、以前よりも川上、川下、それぞれとの距離が縮まり、現場の声が聞こえるようになっているという。そのため藤田社長は「リスクを伴う以上にモノ作りが面白くなった」と語る。繊維のモノ作りの長い工程の中で、「若さと発想で、小さくてもそれが無いと動かないギアのような染色加工場になりたい」と今後の展開に意欲を見せる。
鈴木晒整理/綿のブラックを開発
鈴木晒整理(静岡県浜松市)は、綿100%や麻100%の天然繊維でフォーマルウエアに使えるブラック加工の開発を進めている。
鈴木利尚専務は「20年以上前から綿や麻でフォーマルでも使える深い黒を出すことを追いかけてきたが、ようやく満足できるレベルのものができそうだ」と語る。加工技術や特殊な薬剤など染色加工に関する3つの革新的な技術を組み合わせることで実現のめどが見えてきたという。
ナチュラルストレッチシリーズなど従来の加工と組み合わせて、フォーマルウエアにとどまらず、幅広いアイテムへ、“差別化した黒”としての展開を視野に入れる。
同社は、一つの生機で33種類の加工を打ち出すなど、毎シーズン積極的に新たな加工を開発している。来シーズンに向けては、開発中の天然素材のブラック加工に加えて、機能加工で吸湿発熱と保温を同時にできる加工や防風加工の進化版、北陸産地の技術を活用した綿100%などの天然素材に透湿防水を施す加工などを準備する。
ファッション素材として定着しつつある紡毛素材では16秋冬向けに3D加工を打ち出す。