在タイ日系繊維企業 「注意喚起で安全第一」/経済失速への懸念強まる/バンコク爆弾テロ発生で

2015年08月21日 (金曜日)

 【バンコク=西田貴夫】17、18日に連続して起こったタイ・バンコクでの爆弾テロで、現地の日系繊維企業は安全確保の対応に追われるとともに、タイ経済のさらなる失速を警戒している。

 帝人は19日、新メタ系アラミド繊維「テイジンコーネックス ネオ」のタイ新工場の開所式を開いたが、当初予定した需要家も交えた式典やバンコク市内のホテルでの懇親パーティーを変更。アユタヤ県にある新工場の開所式は自社関係者のみとし、懇親パーティーは取りやめた。同日会見した鈴木純社長は「安全性を最大限考慮したもの」と話し、不要不急の出張も自粛したことを明らかにした。

 本社はチョンブリ県シラチャだが、バンコク市内にも事務所を置くタイ旭化成スパンデックス(TAS)は2度目の爆弾テロが発生した18日には従業員を早退させた。旭化成グループの旭化成プラスチックスタイランドのバンコク事務所は1度目の爆弾テロに近いため、18、19日は休業。同社グループもバンコクから離れた事業会社は別にして、バンコクへの出張を自粛している。

 クラボウ、シキボウ、富士紡、東レなどタイに工場を持つメーカーには現状、実被害は無く操業も通常通りだが、本社から駐在員に対して注意喚起を呼び掛けている。IPAタイランドやモリリンタイランドの商社事務所も通常通り営業。

 タイはこれまで洪水や街頭デモなどのリスク対応が求められたが、エリアが限定されており、発生地に近づかなければ良かった。しかし、今回は「全容がはっきりしていない」(TAS)こともあり、対応に苦慮しているようだ。

 タイ経済に与える影響も大きくなる見込みだ。GDPの10%を占める観光産業へのダメージはもちろん、調整局面が続いていた国内消費がようやく戻り始めた矢先だっただけに、繁華街への外出を控える傾向が強まれば消費が減退する可能性があるとの見方は強く、タイ経済がさらに下降局面に入る可能性もある。

 また、今回の件で民政化が遅れれば、中断している欧州連合(EU)とのFTA交渉が長引く可能性もあり、「輸出競争力という面では望ましくない」との懸念を示す声もある。