東洋紡 楢原社長/15年度は「伸」「実行」

2015年04月07日 (火曜日)

 東洋紡の楢原誠慈社長は2015年度を「伸」「実行」の1年と位置づけ、これまでに講じた先行投資で「成果を上げる」考えを示した。

<先行投資の成果上げる>

 同社は衣料繊維を中心の構造改革を完了し「立ち位置が変わった」として、前期からグローバル展開の加速、新製品の拡大・新事業の創出など将来に向けた布石を次々と実行してきた。しかし、初期投資に伴う費用先行で利益には貢献しなかったほか、夏場の天候不順により食品包装用フィルムが苦戦したことも響き、14年度は利益目標を下方修正。営業利益は前期比横ばいの210億円、経常利益は15・9%減の155億円、純利益は1・9%減の80億円になる見通しにある。

 15年度はこれまでの先行投資を成果につなげる。海外展開の加速ではドイツのエアバッグ用ナイロン66メーカー、PHPをタイのインドラマと共同買収。新製品の拡大・新事業の創出では100億円を投じてハイブリッド型ポリエステルフィルムの新設備を導入。新製品では超複屈折フィルム「コスモシャインSRF」も倍々のペースで拡大させた。いずれも収益には貢献できていないが、楢原社長は「すべて順調に改善しており、15年度は楽しみ」と述べ、14年度は「腰を屈めた状態だった」が、15年度は背伸びする「伸」の年にしたいと話す。国際経済の先行きは「不安要素はあるものの、心配しても切りがない。当社はやるべきことをやるだけ」と強調。15年度は「伸」に加えて「実行」の年でもあると位置づけた。

 同時に10~15年先を想定した先行投資は引き続き行う。その表れの一つが4月1日付で新設した機能膜本部だ。逆浸透膜による海水淡水化装置や人工腎臓など特徴ある膜技術や同製品を強化するもので、新たに正浸透膜の開発も進める。

 グローバルでのエアバッグ布の供給体制もさらに整備する。新規に立ち上げた中国、米国はまだ収益面で貢献していないが、PHPの糸を使って同社が織布・加工したエアバッグ布の欧米自動車メーカーでの認証も始まっており「欧州で生地供給を求める声も強まっている」として、欧州拠点を視野に入れる。溶融紡糸による高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」も切創手袋用が拡大していることから増強を計画、ポリエステルスパンボンド不織布も北米事業化も検討する。

 衣料繊維は構造改革を完了し「大きな損失を出す構造ではないが、使用資本に対する収益性がまだ高くない」としながらも、技術や品質などの優位性を生かしていく考えを示した。