東レACS/ベストセラーアパレルCADの新たな挑戦/「クレアコンポII」クラウド対応に
2015年01月06日 (火曜日)
クレアコンポIIは前機種のロングセラー「クレアコンポ」の操作性を継承した進化版で、前機種データの互換性を持ったCADソフトとして同社が乗り換えを促進している。
クレアコンポIIのソフトは(パターンメーキング用の「パターンマジックII」、東レ方式グレーディング用の「グレーディングマジックII」、マーキング用の「マーカーマジックII」、さらにパターンメーキング用のオプションソフト「パターンマジックII3D」がある。クレアコンポの操作性やショートカット設定などを引き継ぎながら機能を進化させている。
最新の「ウィンドウズ」用ソフトウエアで採用されている「リボン表示」で「クラシック表示」に切り替えれば、前機種と同じ画面表示で操作も可能。
パターンマジックII3Dは二次元のCADで設計されたパターンを3Dに縫い上げ、設計の基準となっているボディを画面上でバーチャルに再現、着せつけやパターン設計の整合性を確認できる。
作業がバーチャル化されることで、60~75%の時間短縮が見込まれる(同社計測)。
運用形態はクライアント&サーバー、プライベートクラウド、スタンドアローンの3種。データベースはオラクル、SQLサーバー、データベースレスから選ぶことができる。
料金体系も一新。契約形態は基本契約料と年間使用料の「標準契約」と1年間の使用権を購入する「1年ライセンス契約」から選べる。学校などの教育機関や教員・生徒向けには「アカデミック特別価格」(在籍期間限定)も設け、ユーザーの予算や用途に合わせ、選択肢を増やしていく方針だ。
東レACS社長 多田 明博 氏/信頼性のブランドに
――「クレアコンポII」発売から半年余り。ユーザーの反応は。
販売状況は想定通りで、クレアコンポの既存ユーザーの方々からは「便利になった」という声をいただいています。アパレル用CADの販売は “垂直立ち上げ”のようにはなりにくいため最初の1年は周知してもらうための期間と位置づけ、一昨年10月に発売をアナウンスし、社外説明会や展示会の出展を重ねながら、既存ユーザーの乗り換えを促進している段階です。
長い間使ってくださっているユーザーには、もちろん違和感を覚える方もいます。機能面で新規に加えたもの、あえて外したものがありますが「クレアコンポでできたことがIIでできないと困る」という指摘で、戻したものもあります。便利に、負荷をかけず使っていただけるようバージョンアップさせていく予定です。
動作環境も考慮する必要があります。「ウィンドウズXP」のサポート終了に伴って当社にもたくさんの問い合わせがありました。今年は「10」が発売されるという予測もあります。新しいOSの上でいろいろなソフトが動くことになるので、数年先の需要を見込んでしっかりと準備をしていきます。
――「今がよければいい」という商材ではないのですね。周知と普及を今後どのように進めていきますか。
2015年4月より新サービス「クレアコンポIIパブリッククラウド(仮称)」の提供を開始します。これに伴いクラウド型アパレルCADシステムの「人人人(ひとと)」は今年度でサービスを停止することを決め、10月にユーザーに告知しました。人人人の発売から4年がたち、クラウドコンピューティングの技術も進化しています。ご迷惑をおかけしてしまいますが、製品やサービス体系を見直した結果、クラウド型のCADが2つあるのは不便なうえ、一本化することで、一つのツールでスキルアップできるメリットもあります。乗り換えについての詳細な方法は今月中にご案内する予定です。
クレアコンポIIのクラウドサービスは企業だけでなく個人も契約でき、月単位、日単位で割安に使える料金設定を考えています。服作りを巡る環境は変化してきています。とくにパターンメーキングの外注が増え、社内に人を置かないアパレルもあります。効率化も大切ですが、これでは社内にノウハウがなくなってしまう。クラウド型は個人でもリーズナブルに、安心して利用できるメリットがあります。製品だけでなく、快適に使える環境を一緒に提供していくこともツールベンダーの使命だと考えます。
――海外展開は。
中国、香港、ベトナム、タイに代理店があります。最近、海外の大手ベンダーはインテリアやノンアパレルの市場を指向しており、クレアコンポIIを新規に提案する余地も見込めそうです。ただ、日系企業をユーザーにする場合は日本と同じ手法が通用しますが、海外のドメスティックユーザーは制作のやり方に違いが見られるケースもあり、充分なバックアップ体制が必要です。どこの国、地域でも信頼できるパートナーが不可欠ですね。
今後はウェブサイトもより活用していきます。単なるPRサイトでなく、オンラインでサポートが行える機能や、ユーザー同士で情報を交換できるコミュニティーも検討しています。長く使用されてきたクレアコンポを継承しながら、IIのブランド形成を目指します。生産財のブランドは、信頼性にかかっています。ユーザーとの接点を増やし、品質の向上とブランド政策を進めていきます。
東レACSは2015年4月、アパレルCADソフト「クレアコンポII」をパブリッククラウド型で提供すると発表した。クラウド(雲)はネットワーク上にあるサーバーの中にソフトウエアやデータが存在し、ユーザーがネットワークを通じてアクセスし、利用できる形態。「プライベートクラウド」は一つの企業のためだけに構築するコンピューティング環境を提供するサービスで、パブリッククラウドはサーバー本体やその場所、OS(オペレーションシステム)を始めとしたソフトウエア、回線までを共有できる。プライベートクラウドより初期費用やメンテナンス費用が低額になり、決済も簡単なうえセキュリティー対策も整ってきていることから、パブリックが業界の主流となる可能性が生まれている。