国産ポリエステル短繊維の行方(2)/帝人は基本、総量維持
2014年12月10日 (水曜日)
日本のポリエステル短繊維生産量は2013年、前年比5・7%減の14万2823トンだった。これは東レ、帝人、ユニチカ、東洋紡、クラレのポリエステル短繊維メーカー5社の公称能力合計の60%に過ぎない。
日本化学繊維協会によると、各社の公称能力は東レの年8万トン強を筆頭に、帝人の約5万6000トン、ユニチカが5万トン強、東洋紡は約3万6000トン、クラレが1万4000トンであり、5社合計では24万トン強に上る。細繊度化などにより重量が減ることを考慮したとしても、公称能力との開きは大きく、各社の実生産量は公称能力よりもかなり少ないとみてよい。
そのなかで業界第2位、3位の能力を持つ帝人とユニチカが国内の生産規模を縮小するため、さらに国内の実生産量は落ち込むことになる。
帝人は17年度末までに徳山事業所(山口県周南市)でのポリエステル短繊維生産撤退とタイ子会社と松山事業所(愛媛県松山市)へ生産移管する。一方、ユニチカは製造子会社である日本エステル(大阪市中央区)の岡崎工場(愛知県岡崎市)のポリエステル短繊維の実生産量を現行の年産約3万トンから17年度末に約1万トンへ縮小することを明らかにしている。
ユニチカは海外にポリエステル短繊維の製造子会社を持たないため、ビジネスとしても縮小。汎用品・低採算品から撤退し、高付加価値品へ特化する戦略を組む。
これに対して帝人は「対応しきれない部分は外部のOEMで対応し、基本的に総量は維持する」(遠藤雅也常務執行役員高機能繊維・複合材料事業グループ長)考え。
同社のポリエステル短繊維事業は現在も黒字を確保している。しかし「長期的に国内の製造コストが上昇する可能性がある。赤字になってからでは新たな投資もできない。健全体質のうちに競争力を付ける必要があった」と言う。
このため今回の構造改革は「事業発展に向けた再編」とし、生産移管のため10数人から成る専任チームを設けて対応する体制も敷き、移管に伴い投資(29億円)も行う。その面で同じ構造改革でもユニチカと帝人では違いがある。