東レACS/徹底解剖「クレアコンポⅡ」

2014年09月25日 (木曜日)

 東レACSが今年4月1日に発売したアパレルCADソフト「クレアコンポⅡ」が好調な立ち上がりを見せている。前機種の操作性を継承しながら機能を進化させ、データの互換性を持ったCADソフトとして注目度は高い。その機能とユーザーの期待を紹介する。

 前機種のクレアコンポは国内トップシエアのCADソフトとして多くの企業で使われており、機能と操作性は広く支持されている。発売から10年以上がたち、OSやネットワークなどの環境が大きく変わった。こうして登場したクレアコンポⅡは、開発需要がIT環境の変化に対応するだけでなく、アパレルの上流工程である企画・設計工程の生産性向上まで提案できるソフトとして開発された。

 クレアコンポⅡのソフトは(パターンメーキング用の「パターンマジックⅡ」、東レ方式グレーディング用の「グレーディングマジックⅡ」、マーキング用の「マーカーマジックⅡ」、さらにパターンメーキング用のオプションソフト「パターンマジックⅡ3D」がある。クレアコンポの操作性やショートカット設定などを引き継ぎながら機能を進化させている。

 最新のウィンドウズ用ソフトウェアで採用されている「リボン表示」で「クラシック表示」に切り替えれば、前機種と同じ画面表示で操作も可能。

 パターンマジックⅡ3Dは二次元のCADで設計されたパターンを3Dに縫い上げ、設計の基準となっているボディを画面上でバーチャルに再現、着せ付けやパターン設計の整合性を確認できる。同社の「3Dバーチャルフィッティング」を具現化したソフト。作業がバーチャル化されることで、60~75%の時間短縮が見込まれる(同社計測値による)。効率化によって作り出された時間は、さらなるパターン品質の向上やデザイナーや生産工程との打ち合わせに振り替えられる。

 運用形態はクライアント&サーバー、プライベートクラウド、スタンドアローンの3種。データベースはオラクル、SQLサーバー、データベースレスから選ぶことができる。

 料金体系も一新。契約形態は基本契約料と年間使用料の「標準契約」と1年間の使用権を購入する「1年ライセンス契約」から選べる。学校などの教育機関や教員・生徒向けには「アカデミック特別価格」(在籍期間限定)も設け、ユーザーは予算や用途に合わせ選択肢を増やした。

 「当面はクレアコンポのフォローと切り替え促進を続ける。より多くのユーザーに機能を体感していただく機会を増やしたい」としている。展示会への出展や説明会を積極的に実施しており、25、26日に「FISMA TOKYO(東京ファッション産業機器展)」(会場・東京ビッグサイト)、また10月10日~11日に「九州アパレルマシンショー」(久留米地域地場産業振興センター)が控えている。

価値生み出すツールの条件/東レACS社長・多田明博氏

――「クレアコンポⅡ」発売からまもなく半年。ユーザーの反応はどうですか。

 前機種からの切り替え案件が続き、説明会や展示会を重ねるごとに問い合わせも多数いただいています。ソフトウエアは発売してすぐ売れるものではなく、半年か1年ほどの準備期間を置くのが普通ですが、お客様は大手、中小問わず前向きな反応を頂いています。

――どんな点が評価されているのでしょうか。

 まず、パターンメーキング、グレーディング、マーキングなどアパレルCADとしての新機能です。ロングセラーである前機種の操作性を継承しながら効率性を向上させており、もちろんデータ交換も可能です。説明会ではオプションの3Dシミュレーションソフトにも興味を頂いています。

 もう一つは環境です。ウィンドウズXPのサポート終了で、当社も昨年から対応に追われました。これを機に社内のシステムや設備を見直すユーザーが増え、新しい環境に対応したクレアコンポⅡを推奨するのに適したタイミングだったといえます。

――前機種の発売以降、市場は成熟してきています。どのように差別化していきますか。

 OS切り替えのサポートで気づいたことですが、CADの管理は企業のシステム部門でなく実質的にアパレル部門が行っているところが多く、現場に負担になっている面もありました。クレアコンポⅡではプライベートクラウドの運用タイプを用意しています。「閉域網」という仮想専用線技術を使って専用回線並みの堅固なセキュリティーを確保したクラウドです。当社では保守運用サポートも行っており、負担を軽減したいという需要に全力で応えていきます。

 元々クレアコンポを発売したときから、単なるライセンス販売をビジネスの目的とせず「お客様が価値を生み出すためのツール」として提供してきました。

 効率的で付加価値の高いモノ作りが要求されています。日本企業は国内だけでなく海外の新興国とも競争していかなくてはなりません。ツールベンダーとユーザーが課題を突き合わせ、解決していく必要があります。ユーザーとの距離をより近づけ、スキルアップのためのトレーニングなども実施していく方針です。

現在は物販からサポート・サービスの拡充へ事業改革を進めており、今年、社内に「教育グループ」も発足させました。クレアコンポⅡを長く愛用いただけるよう、本体の更新とスキルアップの支援、安心なインフラの提供を並行して進めていく所存です。

ココに期待 クレアコンポⅡ

<エブリマン/スタッフの経験則生かす>

 エブリマン(渋谷区)は紳士服のデザインを主力にブランディング業務全般、新規ブランドのプロデュース・企画・生産・製造などを行っている。クレアコンポⅡの発売と同時に使い始めた。藤澤緑朗社長は「スタッフは全員アパレル経験者で、各自の経験則を生かしながら業務を効率化していくのが目的。Ⅱの導入もその一環」と話す。

 岡田安彦さんは「いくつか機能が集約されているので初めは違和感もあるが3年以上使っている人なら支障ない。クレアコンポ同士のデータ交換もスムーズ」という。操作は「中小企業ではOJTも限界があるので、総合的なサポートがほしい」と話す。

<三陽商会/業務改善のために>

 三陽商会(東京都新宿区)では180台のクレアコンポでパターン作成、グレーディング、マーキングのほか仕様書作成を行っている。事業本部生産戦略事業部技術開発ディヴィジョンパターンメイキンググループの中山眞一さんはCADシステムチームでCADの管理・開発やオペレーションを担当。「導入は1998年と時間がたっており、今後の業務改善には切り替えが必要」とⅡの導入を検討中。

 「CADソフトとして各機能が進化しており、操作もしやすい」と評価。クラウド対応については「自席で作業することが多いのですぐ必要ではないが、拡張の可能性も視野に考慮している」。

<ジャミン/サポート力に期待>

 ジャミンのアパレル事業部(渋谷区)はレディースOEM中心に高感性な製品を得意とする。「今春にCADを1台増やすことになり、使い慣れたクレアコンポと基本的な操作は同じだということでⅡを導入した」と井坂佳祐さんは話す。契約形態にコストメリットを感じたのも要因だ。

 「最初は思ったほど使いやすくなく、反応速度が遅いのも気になった」と苦笑する。しかしサポートも活用しながら習熟し、今ではほぼすべての作業をⅡで行うようになった。「業界ではまだ手書きに負う部分も多い。多くの人がⅡのメリットを享受できるよう導入サポートとフォローの充実に期待している」と話す。

<アイルズ/新機能の効果を実感>

 「パーツ化の状態を解除しなくても編集できたり複数のパーツを、まとめて処理できたりするのは便利」「画面で線や文字を移動できるのも楽」アイルズ(東京都豊島区)でパタンナーを務める稲葉雅栄さんと浅井美恵子さんは話す。同社は婦人と子供の水着、カットソーを中心に手掛けている。

 Ⅱへ切り替えたのは今年6月。「前の機種の操作がくせになっているのでときどきミスもあるが、慣れればさらに便利に使えるはず」と2人。3D機能に興味はあるが、「画面だけでは仕上がりが不安なので、トワレチェックは当分欠かせない。アパレル業界で本当に3Dが活用されるのはもう少し先では」とみる。

〈For School〉

文化服装学院/新旧のメリットを兼備

 「東レACSの製品はクレアコンポの前から『パトリエシステム』なども使っていて、長い付き合い。Ⅱは作業効率が2割アップしている印象」と話すのは文化服装学院生産管理・CAD研究室専任教授の上野和博さん。「人人人(ひとと)で開発された機能が実装され新旧のいいところが一緒になった。動作も問題なく、ノートPCに入れて携帯できるのも便利」

 同校ではクレアコンポ120台を導入しており、Ⅱの導入は検討中だが「東レACSと打ち合わせているが、基本的な操作は同じなので移行はスムーズなはず。即戦力として活躍できる人材を育成していきたい」という。