特集 アジア繊維産業Ⅱ/ダイワボウホールディングス/アジア戦略を語る

2014年09月05日 (金曜日)

アセアンの基盤を生かす

 これまでインドネシアを中心としたアセアン地域に積極的な投資を実行してきたダイワボウホールディングス。衣料品・生活資材事業だけでなく、化合繊・機能資材事業も本格的な海外進出が始まった。門前英樹取締役常務執行役員に同社のアジア戦略を語っていただいた。

戦略のカギ握る大和紡績香港

  ――アセアン地域に積極的な投資を行っています。

 当社は1971年にプリマテキスコ・インドネシアを設立してインドネシアでの紡織事業に進出したのを皮切りに、約20年前に縫製のダヤニガーメント・インドネシア(DGI)と染色の東海テクスプリント・インドネシア(TTI)、約10年前に産業資材織物のダイワボウ・インダストリアル・ファブリックス・インドネシア(DII)、産業資材縫製のダイワボウ・シーテック・インドネシア(DSI)、そしてここ数年では縫製のダイワボウガーメント・インドネシア(DAI)、不織布製造のダイワボウ・ノンウーブン・インドネシア(DNI)、大和紡績香港を設立するなど、10年タームで製造拠点を整備してきました。現在、アジア地域では様々な貿易協定や経済連携が結ばれるなど経済・通商環境が大きく変化していますが、こうした変化に単純に追随するのではなく、すでに現実としてある事業基盤を活用し、新しい通商体制のなかで成果を上げていくことがアジア戦略の基本となります。その際、成功のカギを握るのは、大和紡績香港です。大和紡績香港はいまのところ日本の各事業会社が主導する形で営業活動を行っていますが、今後はインドネシアの製造拠点を基盤にして、大和紡績香港自体が主導して、新しい市場を開拓することを進めます。

  ――具体的には。

 一つはインドネシアでDIIやDSIが生産している産業資材を販売することです。そのために産業資材の営業で実績のある管理職をジャカルタ事務所に配属しました。インドネシアで実績を作り、事業を深堀りすることが大切。そのためにDSIの拡張も進めています。その上でインドネシアで実績のある商品を大和紡績香港がほかのアセアン諸国に販売する体制を作っていきます。販売は各事業会社が個別に行うことも可能ですし、場合によってはジャカルタ事務所を法人化する、あるいは大和紡績香港がジャカルタに法人を作って全体を統括するといったことも検討します。

  ――化合繊事業も積極的に海外進出しています。

 合繊事業は衛生材料・製品用途が主力ですが、近年は日本製あるいは日本メーカー製の衛生用品がアジア市場で大変な人気となっています。こうした市場に当社の合繊わたを供給することが狙いです。そのためにダイワボウポリテック播磨工場の増設も完了し、生産能力を20%増強しました。

 その一部はDNIで使用します。現在、DNIは1系列での生産ですが、今年中には2系列目の増設計画の前倒し検討を始めています。同時に、現地生産の流れがありますから、日本から原綿を持ち込むのではなく、海外生産の原綿を活用することも検討します。「品質」「コスト競争力」に加え、納期対応など「デリバリー」、開発力を含めた「情報」の4つをアドバンテージとしなければなりません。

  ――衣料品事業は。

 縫製業というのは労働集約型産業ですから人件費の安い地域に移っていかざるをえない。そこで中部ジャワにDAIを作りましたのでDGIからのシフトを進めます。また、インドネシアでの縫製品事業はこれまでも単純に低コストを追求したものではありませんでした。紡績のプリマテキスコ、捺染のTTIと連携することで付加価値の高いモノ作りができるのが強みです。実際にプリマテキスコで生産した二層構造糸「セルピー」を使ったパジャマの縫製などをDGIで行っており、こうした高付加価値品を増やしていきます。

 一方、DGIはジャカルタ近郊のブカシに立地することから、ジャカルタ港とも近いなどメリットがあります。資本集約型産業は都市部に立地する利点が大きいですから、DGIは、まずは生産品種を転換し、いずれは業種転換することもありうるでしょう。

  ――中国の縫製も転換期です。

 中国も人件費上昇や人手不足という問題を考えれば、労働集約型の事業では難しくなります。やはり内販を視野に入れて、フタロシアニン加工など開発商品の販売を進める必要があります。すでに現地アパレルや流通へのアプローチを進めています。また、検品や物流加工などを含めた形で事業展開することも重要だと考えています。

ダヤニガーメント・インドネシア/特殊原料・加工も活用

 ダイワボウグループのインドネシア縫製会社、ダヤニガーメント・インドネシア(DGI)は高付加価値品縫製の拡大を進める。ダイワボウ独自の特殊原料・加工の活用にも挑戦する方向だ。

 DGIは、対米輸出用トランクス・パンツ、日本向けトランクス(ニットボクサーパンツ含む)、ドレスシャツ、医療用コルセット、ふとん側の縫製が主力。藤野博社長によると「今年1~6月は月産約40万枚のペースで縫製しており、ほぼ計画通りに推移している」という。ただ、DGIが立地するブカシ地区は2013年に最低賃金が前年比40%以上上昇し、14年も15%上昇するなど縫製事業にとっては極めて厳しい環境にある。

 このためダイワボウグループでは、定番品縫製は中部ジャワ地区に立地するダイワボウガーメント・インドネシア(DAI)への移管を進めており、DGIは新たな生産品種への転換を進める方向だ。ポリプロピレン使いやフタロシアニン加工を使った製品の縫製に対応する体制構築を進めることで、ダイワボウの特殊原料・加工を活用した高付加価値品縫製による受注維持・拡大を目指す。