特集・全国テキスタイル産地I/商社のテキスタイル産地対策

2014年07月28日 (月曜日)

蝶理/独自の商材開発へ/グローバル展開に生かす

 蝶理は北陸化合繊長繊維織・編み物産地との取り組みについて、「産地企業が持つ技術、生産管理能力などを活用し、独自商材の開発販売、グローバル展開に生かす」(山﨑修二社長)ことを基本方針とする。

 蝶理と北陸産地との取り組みは1929年の福井支店の発足、34年の金沢支店の設立に始まり、金沢支店(現北陸支店)は今年で80周年を迎えた。取り組み規模は2012年度に229億円、13年度は251億円に膨らみ、14年度は270億円規模を想定している。

 13年度は合繊長繊維糸を中心とする産地への販売が140億円に対し、テキスタイルなどの仕入れ・販売が110億円規模と少なく、今期はテキスタイルなどの仕入れを増やす方向で取り組みを強めている。輸入糸の販売は12年度が月間2800㌧弱に対し、13年度は3200㌧弱にまで増えた。

 オリジナル商材の開発で、北陸産地の織布、加工技術を生かした取り組みを強め、スポーツウエア地を軸に開発を推進する。

 同時に中国やタイで進める自動車関連資材の生産で、北陸産地企業が持つ技術力、生産・品質管理能力を活用し、同社のグローバル展開の有力な武器にしたいとしている。

 具体的には自動車シート地の世界展開を加速する。現在、日本をはじめとして中国、タイ、インドネシア、メキシコの5カ国で編み物、織物を合計月間130万㍍生産・販売しているが、各地で体制を拡充することで、「16年度には240万㍍以上へ倍増させる」(吉田周史執行役員繊維素材副本部長)計画だ。

 日本では現在月産80万㍍だが、16年度には100万㍍規模に拡大する。丸編み、トリコット製を軸に、市場での人気が高まる織物製を強化する。ジャカードの大喜(福井県坂井市)に加え、昨春から提携したドビーの創和テキスタイル(石川県羽咋市)という有力機業2社の生産背景を活用する。

 タイでも現在の10万㍍の生産を40万㍍へ引き上げる。大喜と創和の技術指導を通じてタイでのカーシート用織物の品質向上を図っており、東南アジア市場での中核拠点に育成する。中国では創和の協力を得てドビー織物の強化を進めており、倍増の80万㍍規模に能力を高める。

 メキシコでは現地既存工場への生産委託に加え、アジアからの輸出で日系自動車メーカーの現地生産に対応する。インドネシアでも同様に生産チームをネットワーク化し、それぞれ16年度には月間10万㍍規模の生産・販売を見込む。

 吉田執行役員は「原糸からの一貫の取り組みを強化し、自動車の海外生産シフトに備える」としている。

帝人フロンティア/自前の織物調達拡充/北陸など産地企業と協業

 帝人フロンティアのテキスタイル部は、国内を中心に計画生産体制を整備し、北陸産地を軸とするテキスタイル調達を強化することで輸出の拡大を狙う。

 同部はファッションテキスタイル輸出、中東向け民族衣装、国内ブラックフォーマルなど婦人服地を中心とする3課で構成する。服地輸出は主に欧州向けでポリエステル、トリアセテート中肉婦人服地が主体。中東向けはトーブ用スパンポリエステル白クリーム地が中心で、アバヤ、チャドルなどブラックアイテムが加わる。

 テキスタイル輸出は同部売り上げの6割を占める。「欧州向けが昨年下期以降順調に回復し、引き合いも多い。中東向けはこれまで順調だったが、やや低調になった。ラマダン明け以降の成約で下期での回復を期待している」(杉本泰樹部長)という。

 輸出ではメーカーチョップ品が80%強、自社リスク生産と産元商社のコンバーター品が20%強という構成だが、今後は後者を意識的に増やす計画だ。同社の技術開発部やSCM推進部のテキスタイル開発と歩調を合わせ、独自素材の展開を通じて二次製品につなげることも検討している。

 テキスタイル調達体制の拡充は、国内産地スペースの縮小とともに、適品確保が円滑に進みにくくなった現状を踏まえたもの。撚糸、織布、染色整理などテキスタイル製造の各段階で余裕がなくなり、計画的な生産・調達ができないと販売機会ロスを招きかねないためだ。「このところ全般に納期が遅れ気味。意識的に早めに発注、調達することで円安の波に乗りたい」(同)と輸出拡大を狙う。

ヤギ/複合原糸作りに注力/産地連携で織・編み物も

 ヤギの繊維原料取り扱い部門である営業第一部門は、自社企画による糸作りを通じて差別化原糸の供給力を高めるとともに、産地との連携によるテキスタイル調達で、国内・海外販売を支援する。

 同部門は、衣料・産業資材・カーシート地用合繊長短繊維糸や和歌山ニット産地対応の第一事業部、綿糸・化繊糸を中心に東海、北陸、播州、備後などの産地に対応する第二事業部で構成する。

 国内・海外での原糸調達はもとより、単純な糸売りとは異なり、高度な技術力を持つ化合繊複合加工糸メーカーと連携して、高機能を持つ原糸を独自に開発してきた。これらの原糸を衣料分野をはじめ、自動車、産業資材関連など幅広い分野に供給している。

 こうした糸作りに関する生産体制をさらに拡充する。各産地では仮撚り、撚糸、混繊などの生産スペースが縮小一方にあり、これらスペースを確保しながら安定供給を目指す。

 また、紡績糸では原綿の混率を変えて差別化された特殊な原糸の供給を進めるなど、国内外紡績とタイアップしながら「紡績の透き間を埋めるような取り組みを深めたい」(北山裕士・営業第一部門第一事業部長兼第二事業部長)という。

 これら糸作りと並行してテキスタイルでの展開も増やす。独自の糸作りを通じて産地に原糸を供給、それらを織物やニット生地の形で吸い上げて供給する仕組みが播州産地のカジュアルウエア用先染め織物や、和歌山産地のニット生地で展開中。糸・生地の連動を今後さらに増やしていく方針だ。