特集 アジアの繊維産業Ⅰ/ダイワボウホールディングスのアジア戦略/得意素材でアジア拡大
2014年03月26日 (水曜日)
ダイワボウホールディングスの衣料品・生活資材事業の中核会社であるダイワボウノイ、化合繊・機能資材事業のダイワボウポリテックは大和紡績香港を軸に、中国・東南アジア販売の拡大に取り組む。ダイワボウノイの有地邦彦常務、ダイワボウポリテックの久保田泰昭常務にそれぞれのアジア戦略の現状と今後の方針を聞く。
ダイワボウノイ/アジアは機能素材が軸/縫製はDAIを強化/常務・有地邦彦氏
――成長する中国・東南アジアに向けた販売状況は。
当社は中国、インドネシアに縫製子会社がありますが、中国や東南アジア域内での販売は多くありません。中国の蘇州大和針織服装(Tシャツ換算で月産20万~30万枚)、大和紡工業〈蘇州〉(15万枚)は対日が中心で、インドネシアのダヤニ・ガーメント・インドネシア(DGI)、ダイワボウ・ガーメント・インドネシア(DAI)は対欧米、対日が中心です。
中国・東南アジアの内需販売は一般衣料分野ではなかなか難しいと考えており、フタロシアニン加工などの機能素材に重点を置いています。また、衣料用にとどまらず、グループ企業とも連携し、エアフィルターなど産業資材にも力を入れます。
機能素材では先ごろ香港で開催された「インターストッフ・アジア・エッセンシャル2014春」に参画する信州大学のブースに出展し、アジア市場にもアピールしました。また、ダイワボウポリテックのポリプロピレン短繊維やダイワボウレーヨンのレーヨン短繊維なども大和紡績香港を通じてわた、糸での販売を行っていきます。海外の協力企業で生地を生産しているのですから、その先は販売先にもなりえます。その面では柔軟な発想を持つことも重要になります。
現在は自家消費のみの販売になっていますが、将来的には売上高の15~20%はアジアへの販売にしたいと考えています。
――縫製品事業についてはいかがですか。
インドネシアはDGIからDAIへのシフトを強めます。ジャカルタ近郊のDGIはコストが上昇しています。その面で中部ジャワのDAIに対しては欧米、日本の需要家からの引き合いが活発化しています。これに対応してDAIを増強します。現在、DAIはトランクス換算で月産50万枚の規模(DGIは100万枚)ですが、これを年末には50%増の75万枚にまで拡大します。
中国子会社は物流検品会社である愛思凱爾物流〈蘇州〉を設立していますので、内販や三国間貿易の体制も整いました。縫製品事業全体としてはインドネシアでの拡大を行いますが、すべてを自社で行う必要はありません。ポイントを押さえたうえで、外注も活用しながら規模を維持します。
――アジア展開では先ほどの大和紡績香港の役割が重要になります。
大和紡績香港もモノ作りが先行しましたが、販売面でもチャンスは広がっています。当社ビジネスでも新規顧客が欧米中心で出来ています。アイテムも増えてきました。大和紡績香港は13年度(1~12月)から黒字化、14年度は売上倍増を計画しています。グループ企業が独自に動いていたものを一本化し、事業会社連携も進んでいます。
ダイワボウポリテック/国内外で衛材向け拡大/プレミアム品を追求/常務・久保田 泰昭 氏
――紙おむつ向け熱融着繊維の販売が好調ですね。
国内外で需要が増えています。国内では中国を中心に日本の紙おむつが高い評価を得ており、日本からの輸出が増えています。中国では日本の2~3倍の値段で日本製紙おむつが売れていますが、恐らく3年は続くのではないでしょうか。その面で国内でも熱融着繊維の需要増が見込めます。
また、日系紙おむつメーカーの中国生産品も日本生産品と同じような、「プレミアム」と呼ばれる高性能品へのシフトが進むでしょう。そうなれば当社の熱融着繊維の存在価値はますます高まるとみています。
――同時に昨年立ち上げたインドネシアのエアスルー不織布製造子会社、ダイワボウ・ノンウーブンズ・インドネシア(DNI)の重要性も高くなります。
日本生産の熱融着繊維を使用し、DNIでエアスルー不織布化して供給する体制が整いました。DNIは10月からはフル生産できる見通しです。当初は日本とアジアとほぼ半々で供給します。アジアでプレミアム品が増えるなかでエアスルーでの販売を拡大し、4系列までの事業拡大を目指しています。
紙おむつではスパンボンド不織布との競合も確かにありますが、商品価値を高めるなかでエアスルーの存在感は国内外で増していくとみています。
――国内外でエアスルー不織布が拡大すれば熱融着繊維の生産能力が不足するのではありませんか。
国内外の需要増に対応するため、熱融着繊維も増設を検討しています。ただ、この分野はプレミアムがいつコモディティーになってもおかしくはありません。その面では次世代に向けた開発も重要です。それが基幹工場である播磨工場の存在感を高めることにもつながる。今春には研究開発もポリマーから原綿、不織布まで一貫で行う体制に変えます。
――スパンレース不織布(SL)についてはいかがでしょう。
SLは国内生産の増加は見込みにくいですね。国内生産は付加価値のある商品を開発していかないと、汎用品は輸入品へのシフトが進むでしょう。
SLメーカーでもある当社としては商品開発を強化するとともに、自社ではできないSLは中国の協力工場に生産委託し、製品化して日本で販売する事業も展開しています。この事業は14年度倍増を計画しています。
同時に紙おむつと同様に、SLを使用したウエットワイパーなどは日本製が見直される動きもありますので、当社としてはSLの生産能力に限界があるため、外注も活用しながら需要増に対応していきます。