ジーンズ別冊14春夏/Trading Firms/インディゴブルーに活力与える商社の戦略
2014年03月25日 (火曜日)
素材、副資材の調達や生産のオペレーション、流通への供給など重要な役目を果たす商社。インディゴブルーが復活の兆しを見せる前から商社の機能は洗練され、ますますジーンズ業界にとって欠かせないものとなっている。
伊藤忠商事/ベトナム、小ロットライン増設へ/顧客の広がりを受け
伊藤忠商事のジーンズ課は、ジーンズに欠かせない「高品質」のモノ作りにこだわりながら、総合商社として、グローバルに広がる生産・調達ネットワークを最大限に生かす事業を展開する。
メードイン・ジャパン素材を基盤としつつ、インドネシアやタイの製品染め向け素材をそろえるほか、資本提携関係にある山東如意科技集団が持つデニム工場の素材も、メードイン・ジャパンのエッセンスを入れた“廉価版”としてそろえる。展示会で、デニムのトレンドで最先端を行く米・西海海岸向けで提案した人気商材を並べることも同社のグローバルネットワークが基盤になっている。
2月上旬に開いた14秋冬向けアパレル総合展では、15春夏向け素材を並べた。「スーパーストレッチ素材から、ビンテージ感のある表情をした素材にトレンドが変わりつつある」(同課)など、情報を発信した。
素材ビジネスの一方で注力する縫製品事業でも、すでに全量を海外で対応する体制を構築する。とくにベトナムは自社専用ラインのほか、加工背景も備える主力拠点となっており、精度の向上にともなって取扱量を増やしている。
アパレルOEMの展示会に同課が加わったことで、販路や顧客が広がったことが大きい。これを受け、13年にはベトナムの主力工場でサンプルから小ロットまでの生産に特化したラインを増設し、今後、同様の専用ラインをさらに拡大する予定という。
また同課では、今後に向けて欧州向け輸出の再強化に着手した。販売が停滞していた欧州向けを改めて構築することで、収益基盤を強化する考えだ。メードイン・ジャパンから最先端のトレンドまでそろう素材背景と海外生産拠点を活用し、主にアジアに拠点を構える企業を中心に攻勢をかける。
カイタック・トレーディング営業部/製品OEM、3つの戦略で事業構築/“岡山”生産ブランド発信
カイタック(岡山市)のトレーディング営業部は、ジーンズカジュアル製品のOEMビジネスで3つの戦略で市場開拓を強めている。3つの戦略とはハイエンドゾーン、ファッションセレクト、GMSの3つの分野へのビジネスを構築していこうというもので、今期はより戦略を実践するとともに、シューズ、かばん、アクセサリーなどの小物、雑貨などトータルコーディネートができる企画提案、ODM(相手先ブランドによる設計・生産)で他社との優位性を打ち出す。
百貨店など想定したハイエンドゾーンでは、昨年5月にカジュアル製品部のなかに「生産課」を新設。三備地区を軸に生産のサプライチェーンを構築するとともに、積極的にグループ企業のカイタックインターナショナル(岡山市)の工場で、裁断から縫製、洗い加工、検品まで設備がそろう総社ファクトリー(岡山県総社市)を活用する。“岡山”生産地ブランドを発信していくことで、他社との差別化を明確にする。
セレクトショップやファッションブティックなどへは日本生地、中国縫製をベースにビジネスを組み立てる。テキスタイル開発の強みを生かしたODMを広げる。
GMSなど実用衣料に向けては今期から市場開拓を本格化。中国で素材調達から生産まで一貫することで価格対応型に特化する。グループ企業のグリッジ(東京都渋谷区)からサブブランドを立ち上げ、衣料品チェーンへ供給するなど、新たなビジネスも仕かける。
一方で、テキスタイルビジネスは円安から米国向けを中心に輸出が好調。旭化成せんいのキュプラ「ベンベルグ」を使用した独特のドレープ感と光沢感、肌触りのある差別化テキスタイルや、リバティジャパン(東京都中央区)との協業による花柄のプリントの開発など、独自性のある素材で、市場開拓を進める。
モリリン/ミシン糸「エムセル」拡大/アセアンに新たな生産拠点も
モリリンの繊維資材グループの資材1部は、ミシン糸の国内外製造販売、ユニフォーム、レンチングファイバーズ(オーストリア)の「テンセル」や「レンチングモダール」など環境に優しい素材の輸入販売などで構成する。ジーンズ業界にはミシン糸・付属品の販売で対面、そのシェア拡大を図っている。
資材1部の構成をみると営業4課体制で、グローバルオペレーション課はミシン糸・付属品の海外生産・販売、機能資材課は同国内販売、ユニフォーム課は国内・海外生産の日本および中国内販、グローバルマーケティング課はレンチング製品の輸入・国内・海外販売を主に手掛ける。
テンセルに特殊な紡績製法を施し強力性を付与した製品染め用縫い糸「M CELL(エムセル)ミシン糸」を2013シーズンから投入したほか、ブリーチしても色落ちしない素材「イロオチNICE(ナイス)」も、国内有力ブランドがフロントポケット地で採用するなど認知度が高まっている。
エムセルはテンセル100%使い。濃染が可能で、しかもポリエステル並みの強力が得られるミシン糸として、ジーンズカジュアルなどの製品染め向けなどを対象に市場で認知度を上げている。ミシン糸の特化商品として、強力に販売促進している。
同社のミシン糸生産は中国に抱える自社工場が主力だが、縫製地の移転とともにアセアン地域での新たな生産拠点建設も構想中だ。ベトナムあるいはインドネシアがその候補地になる。「定番糸は中国と新たなアセアンを拠点に、自社工場は開発素材を中心とした特化糸といった住み分けを検討中」(山田敏博繊維資材グループ統括兼資材1部長)だ。