特集/不織布新書14春/東洋紡グループ/総合展開も独自の動き

2014年03月14日 (金曜日)

 東洋紡は総合不織布メーカーだ。本体でポリエステルスパンボンド不織布(SB)や不織布用ポリエステル短繊維など製造販売し、短繊維不織布は子会社の呉羽テック、ユウホウが展開する。さらにAC事業部による不織布を使った製品事業などを含めると不織布関連ビジネスは幅広い。ただ、不織布らしく、それぞれが独自の動きを見せる。

東洋紡スパンボンド事業/北米は今春意思決定/国内も中量産設備稼働

 東洋紡は北米でのポリエステルSBの事業化を検討する。長期出張の形で、OEMも含めた北米での自動車資材用ポリエステルSB生産を模索してきたが「市場は把握できた。現在は採算性や後加工も含めた生産体制などを詰めている段階」(田中茂樹スパンボンド事業部長)で、今春には意思決定したいとの考えだ。

 同社はこれまで、自動車資材を中心に海外需要に対しては輸出に加え、中国のSBメーカー2社でのOEM供給を行っており、北米での事業化が確定すれば同社はもちろん、日本のSBメーカーとしても北米進出は初となる。

 田中スパンボンド事業部長は「今後のポリエステルSB拡大は海外になる」と述べ、北米では同社で最も新しい岩国機能材工場(山口県岩国市)に置く4号機(年産6000㌧)と同規模の設備を想定する。

 同社は国内の岩国機能材工場と敦賀機能材工場(福井県敦賀市)の2工場でポリエステルSBを生産する。年産能力は1万2000㌧。これに中国のSBメーカー2社でのOEMがあるが、OEM先では従来の自動車資材にとどまらす、品種拡大を図っていく。

 積極投資は国内でも行う。国内販売は現状規模を維持しながら、差別化品を強化する戦略だが、そのために今春、年産1500㌧の中量産型試験設備を稼働させる。ソフト性を高めたものや成型性に優れたSBを中心に生産開発し、新商品開発を加速させる。

 スパンボンド事業部は2013年度、前期に比べて2けた%増収となる見通し。自動車資材や土木・建築資材などを主力とするが、自動車資材は中国が伸び悩んだものの、北米向けでカバー。国内も消費増税前のプラス効果が表れた。

 土木・建築資材も増税前の駆け込み需要があり「2月までの3カ月は計画を上回った」という。14年度は自動車、建築資材で反動は予想されるものの、昨年後半から引き合いが活発な土木資材の拡大を見込む。

呉羽テック/新規開発と海外を強化/連結売上高50%増見込む

 東洋紡の短繊維不織布製造子会社、呉羽テック(滋賀県栗東市)は2014年度からのグループ新中期計画で、17年度に連結売上高150億円(13年度見通し約100億円)を目指す。単体売上高は110億円(約90億円)、営業利益で10億円(約7億円)を見込む。

 目標達成のための課題は50%強を占める自動車比率を、絶対額を維持しながら「いかに引き下げるかがポイント」と小田昭夫社長。繊維クッション材の低目付タイプ「クレバルカー」による寝具用途拡大や新規開発グループによる産学連携プロジェクトなどに力を入れる。同時にプラスターとの競合が激しい貼布基布では生産ラインを集約化し、他分野の生産に活用するなど体制整備を進める。

 海外は主力である自動車資材でインドでの事業化を検討中。「年末から来年初めには意志決定したい」との考えだ。インドは化学品専門商社のオー・ジー(大阪市淀川区)が設立した合弁会社に技術指導を行う。第2ステップでは資本参加も視野に入れながら自動車資材用不織布の生産を検討する。

 すでに台湾、タイ、米国に合弁会社を持ち、自動車のエアフィルター用不織布をグローバルに展開するが、既存拠点でも拡大投資を続ける。台湾は新麗企業股との合弁、台湾呉羽が今春、エアフィルター用不織布の新ラインを稼働。新麗とのタイ合弁、クレハ・タイランド(KTC)も昨年、設備更新した。

 懸案であった米国子会社であるトウヨウボウ・クレハ・アメリカ(TKA)は2期連続で黒字を確保するなど収益改善が進むが、国内外で「エアフィルターは機能紙化の動きがある」。このため、機能紙対抗の開発を進めるとともに、米国は機能紙化がより顕著なため、TKAもキャビンフィルターや空調用フィルターなど新規用途開拓に力を入れる。

ユウホウ/ニッチ展開で利益追求/営業強化し開発促進へ

 東洋紡の短繊維不織布製造子会社、ユウホウ(大阪市北区)は「高付加価値のニッチ分野への展開が基本」(坂元亮一社長)とし、規模よりも利益追求型の不織布メーカーだ。

 同社はニードルパンチ不織布(NP)、スパンレース不織布(SL)、ステッチボンド不織布(ウェブを糸で編み込む)を生産するが、多品種小ロット対応に強みがある。

 NPは炭素繊維使いの需要回復遅れの影響はあるものの、産業廃棄物処理用導電シートや水道管補修用などの新規開拓も実りつつある。

 SLも年産1000㌧と業界最小規模だが、衛生材料、自動車資材、フェースマスク、メディカル用途など小ロット高付加価値品で収益体質を確立している。

 日本では数少ないステッチボンド不織布も同社の特徴で、フェースマスクや土木資材など向けに展開する。

 これら3製法による不織布を軸に「需要家の不満を改善した新商品を投入」しながら収益拡大を図る方針。また、新商品開発には自社だけでは限界があるとして、13年度から新規顧客開拓を強化、用途、顧客を広げる動きを始めた。

 なお、同社は昨年9月末、紡績事業(子会社のユウホウテクノが生産)から撤退。120年強の歴史を持つ祖業に終止符を打った。

オー・ジー/印紡績大手と不織布で合弁

 化学品専門商社のオー・ジー(大阪淀川区)は、インド紡績大手のアーヴィンドと合弁で、工業都市のアーメダバード近郊にバグフィルター用不織布を製造する新会社「アーヴィンド・オー・ジー・ノンウーブンズ」を設立した。出資比率はアーヴィンド80%、オー・ジー20%。今年6月から年産1800㌧の規模で本格生産を始める。東洋紡子会社の呉羽テックが技術指導を行い、中期的には自動車資材用不織布の生産も視野に入れる。