人工皮革特集/環境配慮型で差別化/新たな市場、用途開拓へ

2013年10月29日 (火曜日)

 人工皮革の世界市場で、日系の人工皮革メーカーは約10%のシェアを持つとされる。中国メーカーの安値攻勢もあり、競争は激化するが、日系メーカーは構造改革を進めてコスト競争力を高めるとともに、高品質、環境配慮型商品を武器に新たな市場、用途開拓を進める。

欧州向けカーシート好調/スポーツシューズも伸長

 人工皮革の2013年4~9月は、欧州向けカーシート地の伸長が目立った。業界推定によると、人工スエード使いのカーシート地の世界市場は年300万平方メートル。人工スエードを採用する車種が世界的な広がりを見せるトレンドのなか、旭化成せんいの人工スエード「ラムース」は収益ともに増加した。東レも自動車内装材向けで好調さを見せる。

 東レのイタリア子会社であるアルカンターラ社の人工スエード「アルカンターラ」は欧州自動車メーカーの中国などの海外販売向けで伸長。東レのエクセーヌ事業部が担う「ウルトラスエード」も中国向けに攻勢を掛ける。クラレ、帝人コードレも自動車内装材への展開を進め、成果を上げる。

 人工皮革の主力用途であるシューズ向けは、クラレがソフトな銀付タイプで中国内需の販売を伸ばすほか、強度の高さが特徴の「ティレニーナ」でアウトドア用シューズのアッパー材やサッカーシューズ向けの採用が増えている。

 帝人コードレはスポーツシューズ向けで、基材をこれまでの不織布からフィルムに代えた人工皮革の販売で勢いを見せる。

構造改革で競争力アップ/資材向け強化で拡販へ

 皮革市場では天然皮革の供給量が減っており、価格も上昇傾向にある。天然皮革の代替品として人工皮革の販売機会が広がるが、中国をはじめとした海外勢との競争も激化する。コスト競争力を高めるために、クラレは構造改革を進め、汎用品は中国での合弁会社である禾欣可楽麗超繊皮〈嘉興〉へ生産移管し、新興国市場への浸透も狙う。帝人コードレも海外生産を拡大する方針で、海外での拠点整備を検討中だ。

 用途開拓では産業資材向けを強化する動きが目立つ。

 旭化成せんいは、ラムースの20%を占める資材用途拡大を図り、高捕集性や高耐久性をコンセプトにポリエステル使い液体フィルターの展開を加速する。

 クラレは「射出成形技術」をキーワードにスマートフォンのカバーや自動車内装材のダッシュボード用途で販売を強化する。またコンピューターのハードディスク生産に用いられる研磨剤の深耕にも取り組む。

 ポリエステル以外の素材活用も進んでおり、クラレは環境対応型新プロセスで、同社が持つ多様なポリマーを活用した生産を進める。

高い品質に優位性/環境配慮型も強み

 人工皮革は超極細繊維を使った不織布などの基布にポリウレタン樹脂を含浸させて作る。表面処理によって表皮のような銀面タイプとスエードタイプに分かれる。基本的な製造法は同じだが、素材や構造が各社で異なる。

 人工スエードのカーシート地では、韓国勢の追い上げなどがあるものの、技術や品質面で「日本製に優位性がある」(旭化成せんい)とする。旭化成せんいは生機を宮崎県延岡の不織布工場で生産しているが、製造工程が複雑で海外では対応できないため、「今後も国内生産にこだわる」方針を掲げる。

 各社とも輸出比率が高いだけに、用途によって違いはあるが、日本製人工皮革の持つ高い品質は、今後も優位性を維持できそうだ。

 環境配慮に優れる点も強調できる特徴だ。クラレの環境対応型新プロセスで生産した「ティレニーナ」は、従来のプロセスに比べて製造工程を最短約5分の1に短縮し、有機溶剤の使用を99%以上、排水量約70%、CO2排出量約35%それぞれ削減する。

 帝人コードレ、東レ、旭化成せんいも無溶剤型ウレタン含浸技術を確立している。

 帝人コードレは、ポリエステルについて帝人のPETリサイクル繊維「エコペット」使いを基本とし、旭化成せんいもケミカルリサイクルの原料を使用する。東レはバイオポリエステルの展開を図る。

 環境対応を含めた提案で海外勢との差別化を推進する。

クラレ/ティレニーナの用途展開進む/中国で人工スエード強化

 クラレは2014年までの中期経営計画「GS―Ⅲ」で、人工皮革「クラリーノ」の構造改革完了による安定的収益の確保を課題に挙げ、環境対応型新プロセスの事業性向上と、汎用品の中国生産移管の構造改革を進める。

 クラリーノは、岡山事業所から中国の合弁会社である禾欣可楽麗超繊皮〈嘉興〉への生産移管が汎用品を中心に進む。中国国内向けシューズ用のソフトな銀付タイプが好調で、2013年度は400~500万平方メートルの販売を計画する。渡邊久一機能材料カンパニークラリーノ事業部長は「中国内需のキーワードはスエード。現状の市場は微々たるものだが、今後拡大が期待できる」と見通す。スエードと銀面の両タイプの人工皮革を持つ強みを生かし、中国でのスエードタイプの生産を強化する。また新興国市場への浸透を図る。

 禾欣可楽麗超繊皮には岡山事業所から技術者を派遣する。品質安定にはもう少し時間を要するが、「新規開発が次のテーマ」とステージを進める。

 環境対応型新プロセスで生産する「ティレニーナ」は、CATS(クラリーノ・アドバンスド・テクノロジー・システム)による有機溶剤を99%以上削減した環境配慮型の人工皮革。軽量で薄く、天然皮革に近い外観と風合い、高強度、寸法安定性などの特徴があり、靴や衣料品、自動車内装材、IT機器のカバーなどへ展開する。高い強度を生かし、アウトドア用シューズのアッパー材やサッカーシューズへの採用が増えているほか、射出成型によるスマートフォンのカバー、ダッシュボードなど自動車内装材への展開も進む。

 ティレニーナは、年産250万平方メートルの設備1台と、同200万平方メートルの試験機のある岡山事業所で生産する。試験機はポリエステル以外の素材も活用できるが「一気通貫でモノ作りができない」ため設備増設を検討する。渡邊事業部長は「14年に増設を判断するとともに、生産コストを下げながらマーケット展開を急ぐ」と方針を示す。

旭化成せんい/欧州向けカーシート拡大/液体フィルターも注力

 旭化成せんいの人工スエード「ラムース」の用途は自動車内装材が60%、家具が20%、資材が20%で構成する。自動車内装材比率が高まり、家具は減少、資材は新販路開拓を図っている。

 自動車内装材の2012年4~9月販売は欧米市場向けが倍増したが、13年4~9月はさらに販売量が伸びて欧州向けは最高級ブランド車への採用などもあり、前年同期比50%増。セーレンと連携して展開する国内向け数量は横ばいで、全体では20%増で推移する。円安も背景にして利益は大幅に増加する。欧米系自動車メーカーの中国市場向けに販促をかけており、アジアでの拡販も進める。

 欧州自動車向けが好調な背景には、人工スエードを採用する車種が広がりを見せるトレンドに支えられているほか、ラムースの生産体制の構築と高品質にある。欧州ではイタリアの染色コンバーター、MIKOと連携して「ディナミカ」ブランドによるカーシート地などを展開する。07年からMIKOに技術者を常駐させてモノ作り体制を強化してきたが、「商品開発力、技術力が付いてきた」(中嶋康善ラムース営業部長)とし、定期的に技術者が出張する定点フォロー体制に切り替えた。

 ラムースは超極細ポリエステルのショートカットファイバーを抄造法でシート化し、ポリエステル製スクリムと交絡した3層構造でウレタン含浸して製造する。軽さやしなやかな風合いをはじめ、ケミカルリサイクルの原料や水性ポリウレタンを使用した環境配慮型資材である点、スクリムがあることによる寸法安定性、天井材やドア材の一体成型などが支持を受ける。メランジ調やストレッチ性など多様な機能、デザインに対応できるのも特徴だ。

 さらに自動車、家具に並ぶ柱の一つに資材用途を育てる計画でフィルターなどの拡大に注力する。不織布事業部の応用製品営業部と連携し、ラムースの製法を生かしながら、高捕集性や高耐久性をコンセプトにポリエステル使い液体フィルターを開発し、国内市場の燃料系分野へ展開する。

東レ/中国向け自動車用途拡大/ブランド戦略を再構築

 東レの人工スエード「ウルトラスエード」「エクセーヌ」を中心とした用途は自動車、工業資材、衣料、靴・雑貨がそれぞれ25%とバランスのとれた事業を展開する。

 自動車用は2013年4~9月、前年同期比10%増の見通しで国内向けが好調のほか、中国向けが伸長する。工業資材向けは横ばい。衣料用は計画通りに推移し、パンチングやボンディングなど後加工を施したものが伸びている。靴・雑貨用はスポーツ・カジュアル靴向けの好調が目立つ。

 国内向けは13年4~9月は横ばいだったが、13年通期では10%増を見込む。強化を進める輸出では円安も背景に自動車が中国向け、衣料は米国と中国向け、家具は米国向けがけん引する。

 東レは人工皮革事業のグローバル展開で新しいブランド戦略を13年から本格化している。「アルカンターラ」「ウルトラスエード」をグローバルブランドと位置付け、「エクセーヌ」は日本国内の自動車を除く衣料、家具などの用途で展開する。

 アルカンターラは「メードイン・イタリア」で東レのイタリア子会社であるアルカンターラ社が独自にマネジメントし、欧州発ラグジュアリーブランドとして位置付ける。ウルトラスエードは「メードイン・ジャパン」で東レのエクセーヌ事業部が担う。両ブランドとも製造の基本は同じで極細ポリエステル繊維の海島型複合繊維を使用し、ニードルパンチ法で不織布にした後、海成分を除去してウレタン含浸する。

 アルカンターラは13年4~9月、前年比微増で推移。約6割を占める自動車用は欧州向けが勢いを欠くものの、欧州自動車メーカーの中国向けをはじめとした海外販売向けが伸びる。ウルトラスエードも中国ローカルメーカーへの採用が内定するなど海外販売を強化する。

 市場によって両ブランドが競合する部分も出ているが、沓澤徹マイクロファイバー事業部門長は「選択肢が2つあり、両者で補完する方が有利。短期的に見ればマイナス面があるかもしれないが、高い目標に向かって舵を切った」と両ブランド戦略を推進する。

帝人コードレ/スポーツシューズ堅調/フィルム使いが伸びる

 帝人グループの人工皮革製造会社である帝人コードレは、帝人グループの中期経営計画で最終年度にあたる2016年度に売上高は11年度比横ばいながら営業利益は倍増を目指している。13年4~9月は「中計で設定したアクションプランに沿って予定通りに進んだ」(久保勝人社長)。

 コードレは帝人コードレが製造・販売する人工皮革の総称で、銀面が主力だ。用途はスポーツ(シューズ、ボール、プロテクター)が75%を占める。シューズはスポーツメガブランド向けが堅調なほか、14年のワールドカップに向けてスポーツメーカーの企画に対応した開発・試作が進む。さらに基材にこれまでの不織布からフィルムを採用した人工皮革がスポーツシューズ向けで伸長する。フィルムのため、軽量化や縫製簡略化などの特徴が支持を受ける。中計でもフィルムベースが増加すると見込んでおり、販売を強化する。

 同社はポリエステル、ナイロンを原料にした人工皮革を製造するが、ポリエステルは帝人のPETリサイクル繊維「エコペット」使いが基本。無溶剤型ウレタン含浸による環境配慮型人工皮革の技術も確立しており、同比率を高めていく方針だ。

 久保社長は帝人グループの中長期経営ビジョン「CHANGE for 2016」に基づいて「商品の高度化、ソリューション型ビジネスの強化」を掲げる。その代表例の一つであるニトリと共同開発する人工皮革製ランドセルは、帝人グループの環境配慮型設計ブランド「アースシンフォニー」にも認定されており、軽さなどと併せて訴求する。「計画通りの数字を達成している」とし、ランドセル素材市場でさらなるシェアアップを狙う。

 同社は輸出比率が高く、生産面でもグローバル展開を拡大する方針だが、「海外の拠点整備は若干、遅れている。アライアンスを含めて拠点を検討中」とする。海外拠点を整備し、高収益の商品を軸とした「グローバルニッチ企業」を目指す。