13秋冬ボディ&レッグファッション特集/各社のイチ押し素材
2013年06月21日 (金曜日)
素材メーカーはインナー向けに様々な機能素材を投入する。主要企業のインナー素材戦略とイチ押し素材を紹介する。
第一紡績/切り口は“天然系”/注目高まる「ぬくいと」
第一紡績は13秋冬インナー素材として“天然系”に焦点を当てた開発素材の提案を進める。天然系繊維100%吸湿発熱素材「ぬくいと」への注目が高まりだした。
ぬくいとは綿・レーヨン・キュプラ混の極甘撚り糸使い。セルロース系繊維が持つ吸湿発熱性能を極甘撚り糸にすることで糸中に空気層を作り保温する仕組みだ。 13秋冬ではバリエーションも拡大。綿・中空レーヨン混による軽量保温素材「ぬくいとエアー」、綿・レーヨン・ウール混で吸湿発熱性能を一段と高めた「ぬくいとウール」を開発した。天然由来原料の活用という点で昨今の天然繊維回帰トレンドに乗りたい考えだ。
綿・機能レーヨン混で保温・吸湿発熱・消臭の多機能を実現した「ミラキュラスウォーム」、アクリル・機能レーヨン混で吸湿発熱・消臭機能を持つ「リアルホットDEO」、赤外線発熱レーヨン・HWMレーヨン「マイクロモダール」混の「サニーフル」など多彩な機能素材も用意。部屋干し臭を抑える「アクティブウォームウインシル」も開発した。
同社の機能糸の多くは中国で委託生産が可能。このため多くのアパレルが編み立て・縫製する中国での現地決済・受け渡しが可能なのも強みだ。
オーミケンシ/涼感レーヨンに注力/芯鞘構造糸でも展開
オーミケンシはインナー向け機能レーヨンの販売を強化する。13秋冬では温度調節「97.6F」、発熱「ソーラタッチ」などをメーンに前年並みの販売量を維持する見通しだが、14春夏に向けては、涼感「リフレール」、光触媒「サンダイヤ」、遮熱「サーモベール」などの提案を強化。販売増を狙う。
リフレールは練り込んだキシリトールが吸水吸熱することで、生地の温度を下げる涼感機能が特徴。12春夏、リフレール使いの製品は健闘し「13春夏も早い段階から引き合いがあった。14春夏も同じ勢いが続いている」と岩切直彦執行役員素材事業部長は手応えを示し、同シーズンでは前年比20%増を目指す。
また、芯鞘構造糸「クールファイン」の鞘側にリフレールを使用し、吸水速乾、接触冷感に涼感も組み合わせたタイプも同シーズンから本格化する計画。サンダイヤタイプもそろえる。
そのほか、インナー向けではキチン・キトサン繊維「クラビオン」も重点素材。肌への低刺激性(日本アトピー協会推薦品として承認)が評価され、引き合いが活発化しているという。
三菱レイヨン/「ミヤビ」充実/機能追加で差別化
三菱レイヨンは、海外向け肌着用素材として主力の極細アクリル短繊維「MIYABI(ミヤビ)」について、「プラスワン」戦略でさらなる機能を付与して展開する。
キトサンを練り込んで抗菌防臭性を高めた「MIYABIキトサン」、銀を練り込んで部屋干しにも対応した「MIYABI AG」、超軽量素材「MIYABI AIR」を新たに提案する。
13春から本格展開するアクリルとジアセテートを複合紡糸した「キュートリー」は、オールシーズン対応素材として提案する。汗臭・加齢臭の原因となるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸、ノネナールの4大臭気を消臭する。原綿段階で消臭剤を練り込んでいるため、繰り返し洗濯後も優れた消臭力を維持する。30%の混率で消臭機能を発揮するため、他素材との多様な組み合わせが可能だ。
また「マン・メード・ウール」をコンセプトに、ポリマーの改良などで、ウール代替を狙ったアクリル短繊維や、 発熱・制電機能を持つ「コアブリッド・サーモキャッチ」の提案にも力を入れる。
東洋紡STC/新規市場開拓を強化/中国生産体制も整備
東洋紡スペシャルティズトレーディング(STC)のインナー事業部は東京、海外など新規市場開拓を強化する。その一環として4月に快適衣料グループを新設、新規市場に加えて「インナーで培った技術をベースに、スポーツインナーなど他分野の開拓も目指す」(浜田章史インナー事業部長)方針だ。
海外市場の開拓に向けては、中国で生産体制も整えた。具体的には接触冷感が特徴の長短複合糸「ツインアクール」、吸水速乾性を持つ「ドライファストV」(短繊維複合)、「ドライキューブ」(長繊維複合)、消臭加工糸「デオドランC」を生産し、日系企業や中国企業への販売を本格化する。
これらを活用した対日製品OEMも視野に入れながら海外生産販売の規模を「倍々のペースで増やしていきたい」と意気込む。12年度からスタートした中国での経編み地生産販売も日系向けで順調に拡大中。13年度は中国企業向けも本格化、前年比4~5倍に拡大する。
また、チャイナ・プラスワンの動きに対応するため、東南アジアでの生産体制整備も進める。
ヴィオレッタ/日本製の強みを生かす/愚直なモノ作り続ける
ストレッチラッセル編み地大手のヴィオレッタ(大阪市城東区)は、国内生産の強みを生かし、引き続き「軽く」「薄く」「パワーがある」といったマーケットが求める素材の開発を進めていく。
七里隆雄社長は「高い品質や高い機能、それを支える技術力が求められる製造業では、日本の工場は、その労働力の品質の高さからいえば、相対的に人件費が低いと言える」と指摘する。
それだけに米国のシェールガス革命などで日本のエネルギーコストが下がってくれば「メードイン・ジャパンは復権する」という。
国内生産の場合、労働者の多能工化が進んでいる。同社の場合、メンテナンスまで自分たちでできるという。しかも前工程や後工程を見下ろして全体への気遣いができるため生産効率も上がる。
メーカーの基本は「愚直なモノ作り。良い物を作って、まじめにやってきたところは残る。正しいマーケットであれば認めてくれる」という七里社長。今後も「メードイン・ジャパンを守る」という気概を持ってモノ作りを続けていく。