合繊素材・オンリーワンで活路(4)帝人フロンティア 「ダストップSP」/被膜加工で相反機能両立

2013年05月30日 (木曜日)

 帝人フロンティアは、NI帝人商事と帝人ファイバーのアパレル事業が統合して2012年10月に発足した。旧帝人ファイバーが約10年前から培ってきた技術の一つが、薄膜被膜(コーティング)加工だ。これまでにも、繊維ごとにナノオーダーで制御した被膜を形成して肌側の吸汗性を高めた「さらっとコンポ」をはじめとした素材を展開してきた。それらをベースに、2011年6月に発表したのが、吸水・吸汗性と撥油性を両立した防汚素材「ダストップSP」だ。

 ダストップSPの特徴は、ポリエステル繊維の表面に、油をはじく機能層と、親水性の機能層という性質の異なる2層を重ねた被膜構造を実現している点にある。この相反機能を両立させた被膜の二層構造技術は、世界初という。

 親水性の機能層は汗などの水分が繊維表面に近づくと、水分を選択的に吸収し、すばやく拡散させてべたつきを防ぐ。油をはじく機能層では、食事の食べこぼしや皮脂などの油性汚れをガードするため、白などの生地でも襟元などの皮脂あかが残りにくく、黄ばみにくい。吸水性があることから洗濯による汚れ落としも容易にする。耐洗濯性も高く、機能が持続する。

 ダストップSPは、生地の後加工で二層被膜を形成する。従来の撥油加工は生地表面への被膜形成を伴うため、通気性や風合いを損なう問題点があったが、ダストップSPは単糸1本ずつに約100ナノメートルの超薄膜被膜を形成することで、従来にないソフトな風合いを実現。生地の軽量化にもつながる。さらにPFOA(パーフルオロオクタン酸)フリーの環境配慮設計になっている。

 販路はユニフォームが主力で、ビジネスシャツなどでも展開する。ファンデーションなど化粧品の汚れにも効果があり、百貨店の化粧品売り場の女性用ユニフォームにも採用されている。販売は順調に拡大しており、13年度は50万㍍を計画する。

 重村幸弘技術開発部長は「汚れは衣料の永遠のテーマ。汚れの落ちやすさは洗濯での水資源、エネルギー資源の低減にもつながる」と、今後も防汚素材の展開に力を入れていく考えだ。