不織布新書13春/ポリエステル/汎用合繊もSBでは、伸び悩む
2013年03月28日 (木曜日)
汎用合繊であるポリエステルだが、スパンボンド不織布(SB)の世界ではポリプロピレンの後塵を拝して久しい。日本化学繊維協会・合繊長繊維不織布製造6社の2012年生産量はポリプロピレンが1.4%増の4万6597トンとなる一方、ポリエステルは3.1%減の3万5454トンと大きく水をあけられている。ポリエステルSBメーカーの戦略を探る。
ユニチカ/量よりも採算重視/エルベスを土木にも
ポリエステルスパンボンド不織布(SB)最大手であるユニチカ。日本(年産2万トン)とタイのユニチカ・スパンボンド・タイランド(TUSCO、4000トン)に生産拠点を持つほか、綿100%「コットエース」などスパンレース不織布(SL)も製造販売する。
SB事業は2012年度、減収減益となる見通し。コスト上昇が収益の足を引っ張った。それだけに、13年度は原燃料高に伴う価格転嫁が最大の課題となる。吉原寛不織布事業本部長は「量を求めず、採算を重視する」と強調。値上げの浸透を目指す。
同社は4月出荷分から1キロ当たり50円とSBメーカーでは最大幅の値上げを打ち出したが「50円は一部用途のみで、すべてではない」と言う。
商品面ではポリエチレン複合SB「エルベス」を拡大する。エルベスは従来の生活資材だけでなく、土木資材などの開拓も進んでおり、需給タイトな状況にある。
また、熱接着できる特徴を生かして、ほかの不織布との張り合わせによる新規用途開拓も進める。TUSCOは洪水被害から昨年9月に復旧。現在、フル生産体制に回復している。
SLは垂井事業所(岐阜県不破郡、4500トン)に加え、丸三産業(愛媛県大洲市)との合弁会社、ユニチカ・マルサン・コットン・テクノロジー(UMTC、5000トン)で生産するが「異物除去など品質向上に取り組む」ほか、対物用ワイパーの開拓に力を入れる。
東洋紡/除染対応資材を本格化/海外OEMの品種拡充
東洋紡のポリエステルスパンボンド不織布(SB)はグループ横断型プロジェクトチーム「震災復興対策チーム」による放射性物質除染対応の土木資材向けで「実証実験が進んでおり、2013年度から本格販売を目指す」(田中茂樹スパンボンド事業部長)。
同社のSBは敦賀(福井県敦賀市)、岩国(山口県岩国市)の機能材工場で生産。年産1万2000トンの規模を持ち、ルーフィングなど建築防水、土木、自動車資材が主力。
13年度は東日本大震災向け土木資材の本格化のほか、塩ビレザー代替SB「カテナ」の新タイプ「モデラ」の拡大に取り組む。カテナは自動車のトノカバーなどに採用されているが、モデラはカテナに比べて重量を3分の2に軽量化したグローバル対応の廉価版。14年度からは海外でのOEMも始める。また、成型SBによる自動車、工業、生活資材にも力を入れる。
自動車資材は海外での部材調達が進むなかで、海外OEMの品種も拡充し、事業拡大に取り組む。さらに北米や南アジアでの生産も模索。北米については13年度注に1人駐在させる予定だ。
12年度業績は販売量が微増も後半からの原料高騰により収益面では苦戦。このため、4月から1キロ当たり30円の値上げを打ち出している。SBの値上げは11年6月以来となる。
フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/エボロンなどで用途開拓/カーペット基布に加えて
世界最大の不織布メーカー、フロイデンベルグ(F)グループのフロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン(大阪市中央区)は、台湾のフロイデンベルグ・ファーイースタン・スパンウェブからポリエステルスパンボンド不織布(SB)を輸入販売する。カーペット基布を主力に、建築防水基布へも展開する。
2012年度(1~12月)はカーペット基布がけん引し増販となった。13年度は消費税前の駆け込み需要などに期待する一方、フランス生産の「エボロン」(ポリエステル・ナイロン複合SBを水流で極細不織布化)などによる「新用途開拓を前年度に引き続き取り組む」(稲子裕二社長)。
FグループのSBはドイツ、米国、台湾でカーペット基布など同じ品種を生産するのが特徴。台湾は2系列で年産2万2000トンの能力と、1系列の能力が小さい日本のポリエステルSBとは設備仕様が大きく異なる。
日本法人は台湾の販売子会社で、14年には30周年を迎える。
生産品種の特徴から用途展開に限界があったが、エボロンに加え、ドイツで開発中の複合SB「ルトラデュール ファインデニール」などで新規開拓に力を入れている。
なお、同社も台湾での電気料金や原料価格の上昇もあり、5月出荷分から現行比8%の値上げを打ち出している。
東レ/原料一貫で開発
アジアでポリプロピレンスパンボンド不織布(SB)を拡大する東レは、日本と韓国でポリエステルSBも生産販売する。日本生産の「アクスター」は年産4000トンの規模。2012年度販売量は1けた%増となる見通しで、13年度も同程度の伸びを見込む。
アクスターは土木資材とカートリッジフィルターに絞り込んだ用途展開が特徴だが、短繊維不織布や紙などの代替を狙った新規用途の開拓にも取り組む。
そのために、PLA(ポリ乳酸)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)など「ポリマー一貫での開発」(永島健司産業資材事業部長)に取り組み、付加価値を高め、収益力の向上を目指す。
また、原燃料価格高騰に伴い、アクスターも3月出荷分から1キロ30円の値上げを打ち出している。
帝人/海外生産も強化
帝人は不織布用ポリエステル短繊維事業でわた売りだけでなく、不織布や不織布製品販売を強化する。同社は衛材用エステル系熱融着繊維や機能紙用ショートカットファイバー、自動車内装材向けの多色原着再生など多彩なポリエステル短繊維を製造販売する。
不織布製品の売り上げ規模は現在20億円。高機能クッション材「エルク」や縦型不織布「V―Lap」による寝具など独自の素材・材料を組み合わせたものを販売する。
川中、川下展開に加え、海外生産も強化する。多色原着わたはタイ子会社の既存設備を改造。4系列・月産900トンに増強するほか、熱融着繊維(700~800トン)も早期にフル稼働させて、2系列目を検討する。