紡績の難燃・防炎生地/潜在需要に大きな魅力
2013年01月28日 (月曜日)
綿紡績が難燃・防炎機能テキスタイルの開発・販売に力を入れる傾向が一段と強まってきた。新規参入も相次ぐなど競争も一段と激化する気配だ。背景には、難燃・防炎素材の安定した需要と今後無視できなくなる潜在需要の大きさがある。
新規参入相次ぎ競争激化
難燃・防炎テキスタイルは、米軍が特殊戦闘服に採用するテンカテ社のアラミド・難燃レーヨン複合素材「ディフェンダーM」などを頂点に、軍事や警察・消防など特殊用途でハイスペック素材が普及しているが、最近ではワーキングウエアなどユニフォーム、アウトドアウエアなど一般用途でもニーズが高まる。こういった一般衣料用途では難燃・防炎性能に加えて吸放湿性や肌触りなど着心地も重視されるため紡績の難燃繊維・綿混紡品や綿100%後加工品が求められる。
例えばクラボウの「ブレバノ」はワーキングユニフォームで豊富な実績を持ち、最近では米国有名ワークブランド「レッドウィング」にも採用されるなど輸出でも成果が上がる。アウトドア分野からの引き合いも多い。ダイワボウグループの「ダイワボウプロバン」もノンハロゲンの綿100%後加工という特徴を生かし、ワーキングウエアで実績を重ねてきた。
ユニフォーム分野で難燃・防炎が採用される魅力の一つが、需要の底堅さと安定度。ユーザー企業で作業服がいったん難燃素材化されると、再び非難燃素材に置き換えられるケースはほぼ皆無。「事故が起こった際に安全管理上の落ち度として糾弾されるリスクがあるからだ」と関係者は指摘する。このため最近では新規参入も増えてきた。
難燃ビニロン「ミューロンFR」で自衛隊の戦闘服用に圧倒的な実績を持つユニチカトレーディングもミューロンFR・綿混紡素材「プロテクサ―FR」を立ち上げ、2012年からユニフォーム分野に積極的に提案する。
もう一つ、潜在需要の大きさも紡績にとって魅力。高齢化社会を背景に老健施設などで使用される寝装品や入居者用ウエアなどの難燃化を進めるべきとの機運が年々高まる。老健施設などで火災が発生し、多数の高齢者が犠牲になるという痛ましい事件も実際に起こっている。また、子供服も難燃化すべきとの指摘もある。実際に米国では子供服は難燃素材の使用が一般的である。
このほど第一紡績もフェノール樹脂繊維であるノボロイド繊維と難燃レーヨン混紡の「プロボア」を開発し、難燃素材に参入した。ノボロイド繊維は染色性に課題があるものの、宇宙航空分野で実績のある材料。プロボアは難燃性の指数であるLOI値(限界酸素指数)27を確保しており、独自の特殊結束紡績「IPX」で紡績していることから毛羽が少なく、抗ピリング性4~5級を実現した。同社ではインナーやパジャマなどで提案を進める。
消費者の“安心・安全”を守るために紡績の役割はますます大きくなる。