革新加工相次ぎ登場/紡績の消臭・抗菌防臭加工

2012年10月17日 (水曜日)

 クールビズや節電ビズの浸透を背景に注目が高まった機能素材・加工に消臭や抗菌防臭素材・加工がある。とくに紡績を中心に新コンセプトの革新加工などが相次いで開発された。消臭、抗菌加工素材・加工は新局面を迎えたとも言えそうだ。

 消臭加工で注目を集めているのが、従来とは全く異なるコンセプトの加工が登場したことだ。従来、消臭機能は悪臭成分の発散を抑える吸着方式、悪臭成分を中和する分解・中和方式、別の香りで悪臭を隠すマスキングという3つの手法が主流だった。これに対して新たに登場したのが変換方式とでも呼ぶ手法だ。

 これはあらかじめ悪臭成分と組み合わせることで芳香となる香り成分を調合し、繊維に加工するもの。特定の悪臭と結合することで悪臭が芳香に変換される。この方法では糞便臭など従来は消臭が難しかった強烈な悪臭の消臭も可能だ。

 シキボウが山本香料の協力を得て「デオマジック」として商品化に成功し、糞便臭を芳香に変換したことで注目を集めた。すでにベネッセがおむつバッグに採用するなど市場の評価は高い。ダイワボウノイも変換方式の消臭加工素材「デオパワーTF」を開発した。こちらは汗臭と加齢臭をそれぞれ芳香に変換する2タイプをそろえる。

 糞便臭と並んで消臭が難しい悪臭にタバコ臭がある。これを光触媒の効果で消臭することに成功したのがクラボウの「コスモリンク」。機能加工の性能を保証する繊維評価技術協議会(繊技協)のSEKマークで「光触媒消臭加工」と「光触媒抗菌加工」をダブルで認証取得するなど、その性能は折り紙つき。シックハウス症候群の原因物質とされるアセトアルデヒドに対する消臭効果を確認しているため、カーテンなどインテリア分野への提案も視野に入る。

 一方、抗菌防臭分野では革新的な部屋干し臭(洗濯物を室内で干すと発生する雑巾のような悪臭)対応加工が相次いで登場した。背景には大手洗剤メーカーが部屋干し臭の原因菌をモラクセラ菌として特定したことがある。このためモラクセラ菌の増殖を抑制する抗菌防臭加工として第一紡績は「ウィンシル」を開発した。ダイワボウノイも部屋干し臭の原因菌の増殖を抑える「デオパワーM」をラインアップする。

 消臭や抗菌防臭加工のニーズが高まるなか、課題もある。ユーザーや提案先に、どのように機能を実感させるかという問題だ。このため展示会などでは実験によって機能を体感させる提案方法が一般化しつつある。

 また、低価格品を中心に低機能な商品が高性能な商品と同様に「消臭」「抗菌防臭」をうたって販売されている現実もある。こうした低レベル品との差別化のためには、例えば繊技協が認証する「SEKマーク」「消臭加工マーク」「光触媒消臭加工マーク」を活用することが有効だという指摘も増えてきた。その意味では、今後はマーク認証制度の認知度向上も新たな課題として浮上したと言えるだろう。