安心 ・ 安全 支える検査機関
2012年08月31日 (金曜日)
安心・安全な生活を実現するため、様々な商品が開発されている。しかし、それが本当に安心・安全な機能を持つのか。繊維の検査機関はそうした機能を評価する試験方法、試験設備を開発してきた。安心・安全を支える検査機関を紹介する。
カケンテストセンター/安心・安全機能に対応/試験装置、方法も開発
カケンテストセンター(以下カケン)は、様々な安心・安全機能の性能評価方法を確立している。表面フラッシュ、難燃性、帯電防止にはじまり、花粉捕集効率、バクテリアバリア性、人工血液・ウイルスバリア性といったものまで広範囲である。
起毛を施した衣料品に火が近づくと、炎が生地表面の毛羽から毛羽へ急速に広がり、炎の走る現象が、表面フラッシュ。この表面フラッシュの炎は、透明に近く、明るいところではほとんど目立たない。気付くのに遅れると地組織まで延焼し、思わぬ事故を招く。このため、カケンはカケン式表面フラッシュ試験機を開発した。その試験方法は現在、JIS規格に取り入れられ、JIS L1917が制定された。
マスクなどのフィルターが、花粉代替粒子を物理的に捕集(ろ過)する性能を試験するのが、花粉粒子の捕集効率の試験。調湿した試料を装置に取り付け、試験粒子を一定流量の試験系内に定速供給しながら試験する。カケンが開発したこの試験装置と試験方法は、日本衛生材料工業連合会、全国マスク工業会で採用された。同工業界の推奨試験機関でもある。
このほか、防護衣料、とくにラミネート加工などを施した通気性のない試料を対象に、人工血液やウイルス懸濁液の透過の有無を調べる試験、有害化学物質を取り扱う作業の化学防護服の試験なども行う。
ボーケン品質評価機構/遮熱性試験を開始/機能性試験はアジア三極体制
安心・安全に欠かせない機能の試験を実施しているボーケン品質評価機構。このほど新たに遮熱性試験の実施を開始した。今回、ボーケン品質評価機構が実施を開始した遮熱性試験は、独自開発したボーケン法による試験だ。
擬似太陽光であるレフランプと温度センサーの間に試験布を置き、試験布の遮熱性能を測定する。ボーケン法では日傘やカーテンなどでは試験布と温度センサーの間に5センチの空間を設けることで実際に遮熱機能素材が使用される実態に即した試験が可能だ。
抗菌防臭性や抗かび性試験、ホルムアルデヒドの測定も依頼が増加しているが、ボーケンは広さが6畳相当の大型試験室を保有。大型家具なども実際の使用場面に即した状態で測定が可能だ。特定芳香族アミンの測定は大阪のほか上海機能性分析センターでも可能だ。
繊維以外でもSGマーク認定の棒状杖、トレッキング用ポール、ウオーキング用ポールの品質試験も実施。製品安全協会が認証する「SGマーク」の業務委託検査機関にも指定されている。
日本だけでなく、上海機能性分析センターでの機能性試験拡充にも力を入れるボーケン。機能性試験は上海、東京、大阪のアジア三極体制で取り組む。とくに上海機能性分析センターの機能を一段と拡充していく計画だ。
QTEC/福井で燃焼試験に対応/高齢化社会の安全支援
9月から消防庁が「住宅防火・防災キャンペーン」を開始する。日本繊維製品品質技術センター(以下QTEC)は、消防法施行規則に基づく繊維検査機関唯一の登録確認機関として「防炎ラベル」の確認業務(体制の検査、定期的な防炎試験)に力を注ぐ。
消防庁は2012年度消防庁広報テーマに「住宅防火対策の推進」を掲げる。これは、火災のうち、建物火災が半分以上を占め、住宅火災死者の約7割近くが65歳以上の高齢者のためだ。高齢者ほど、防火対策が必要ともいえる。
QTEC福井試験センターでは、燃焼試験の特化試験センターとして消防法関連のミクロ・メッケルバーナー法、エアーミックスバーナー法、コイル法、耐洗濯性のワッシャー型洗濯機、ドライテスター、自動車関連の水平法、衣料品関連の垂直法、米国規格の燃焼速度法、その他寝具関連の設備などほとんどの試験設備を有している。
また、QTECでは「住宅火災を防ぐためにも、法律に基づく防炎ラベルをより普及させたい」とし、防炎ラベル登録者の了解を得たうえで、約20社の商品品番をQTECホームページに掲載し、情報発信することも検討している。
「どこで防炎カーテンを販売しているのか」という問い合わせもあり、商品情報の発信を行おうという狙いだ。
ニッセンケン品質評価センター/「エコテックス」認証も/立石で抗菌・消臭試験を
ニッセンケン品質評価センター(以下ニッセンケン)は、「安心・安全・健康」を守る検査機関としてその体制をさらに強化する。エコテックス事業所は5月にISO 17025・2005規格の認定を受けた。立石支所は設備を増強し、10月から抗菌防臭、消臭、抗カビなどの試験を集約する。中国でも9月から上海事業所で抗菌試験を開始。インドネシアではジャカルタラボを9月1日にオープンする。
ニッセンケンは設立以来、「安心・安全・健康」を守る検査がベース事業。素材・製品自体の安全を証明する「エコテックス」の日本で唯一の認証機関でもある。そのエコテックス事業所は高レベルの試験を提供する試験機関の証明となるISO 17025・2005規格の認定を受けた。
今春の繊産連の「繊維製品に係る有害物質の不使用に関する自主基準」の発表後は、特定芳香族アミンについての問い合わせが多く、分析証明書の発行も行う。
立石支所では抗菌防臭、消臭、抗カビ試験を集約するため、新たな設備投資を行っていたが、10月1日からこうした試験業務を開始する予定だ。
上海事業所でも9月から抗菌試験を開始。インドネシアでは、「ニッセンケンジャカルタラボ」が9月1日にオープン予定だ。アゾ染料や重金属の試験にも対応していく。