ケミカルリサイクル/帝人、中国で合弁/初年度売上100億円へ
2012年08月10日 (金曜日)
帝人は、中国の有力企業である精工控股集団有限公司(浙江省紹興市、以下「精工集団」)と合弁契約を結び、中国でポリエステルのケミカルリサイクル事業を展開する合弁会社「浙江佳人新材料有限公司」(浙江省紹興市)を設立する。
3月に中国化学繊維工業協会(CCFA)と合意した相互連携プロジェクトの第1弾。環境経営に力を注ぐ精工集団と共同で、中国独自の循環型リサイクルシステムの構築を目指す。
合弁会社は資本金5000万㌦(精工集団51%、帝人49%)で、早ければ9月に設立する。帝人が約60億円を投じてリサイクルDMT(テレフタル酸ジメチル)製造から重合、製糸の設備を設置し、2013年度末に操業を開始する。年産能力はリサイクルDMT2万トン、リサイクルポリエステル繊維1万9000トンで、初年度100億円の売上高を見込む。
中国最大規模の繊維製品産地である紹興市には、精工集団傘下の2社をはじめ多くのポリエステルメーカーが存在。その生産工程で生じるポリエステル繊維屑や、使用済みポリエステル製品などを原料とするケミカルリサイクルにより、石油から製造するのと同品質のDMT、ポリエステルチップの製造、また帝人グループのポリマー・紡糸技術を駆使した高付加価値ポリエステル繊維の製造販売を行う。
単純比較はできないが、豊富な原料背景や、中国に適したリサイクル工程に部分修正するなどして、日本より約4割程度コスト削減が図れる模様。需要拡大を見極めながら、5万トン、7万トンへとリサイクルDMTの生産能力を増設していく計画だ。最も難しい“原料の選別”に関する部分は、来年4月稼働予定の帝人〈中国〉商品開発センターが担う。
中国政府や紹興市、CCFAなど関連当局と連携し、中国でも、ポリエステルチェーン全体を包括的にとらえた循環リサイクル「エコサークル」システムを構築。売り先としては、まずは市や国営企業のユニフォームなど官需を主体に、インテリア関連やスポーツ用テキスタイルなどの民需にも拡大する。
中国以外への販売については「帝人グループの既存の商流に乗せてグローバル展開していく」(早川泰宏・帝人グループ執行役員 原料重合・購買本部長)考えだ。
リサイクルへの関心が高まる中国では、ペットボトルを主原料とするマテリアルリサイクルは広く展開されているが、染料や顔料、加工剤などの異素材が除去できないため、大半の古着などは焼却処分するしかなかった。帝人による世界最先端のケミカルリサイクル技術とエコサークルの活用で、焼却処分されていた古着を回収・再利用できるとして、大きな期待が寄せられている。