カーテン特集/素材メーカーの提案と取り組み

2012年06月18日 (月曜日)

 昨年の原発事故以降、節電意識が高まり、衣料品やインテリア分野の商品で、省エネを実現しながら快適に過ごすための機能商材が一段と脚光を浴びるようになった。カーテン業界にとっても、これまで以上に素材メーカーの果たす役割の重要性が増した。また、震災後の「安全」「安心」意識の高まりによって、難燃素材への関心も再び高まっている。

KBセーレン/ブランド化で拡販狙う/抗菌防臭の新素材投入

 KBセーレンはインテリア向けで、原糸をラインアップしたカテゴリー提案に力を注ぐ。13春夏向けには新たに「満足空間・クールデイズ」も投入する。

 1年前、インテリアを原糸販売の重点分野に位置づけたことに伴い、「満足空間」という冠ブランドを設置した。このなかでは11種の原糸を展開しており、“機能性”がそのキーワードになっている。同社によると、「一気に拡大することを目指してはいない」ものの、予定通りのペースで販売が伸びているという。

 東日本大震災以降、遮熱機能を求める声が高まり、今や“標準装備”となった。同社が力を入れる同機能を持つ原糸が「シルクール」。満足空間の発表と同時に投入した。シルクールは高い遮熱性に加え、同社が旧カネボウ時代から強みとする「白度の高さ」に優れており、風合いもいい。来春夏での拡販に期待値は高い。

 今後は衣料向けの原糸群ブランド「クールデイズ」のインテリア版と位置づける「満足空間・クールデイズ」という冠ブランドを13春夏向けとして新たに投入する。抗菌ガラスをポリエステル糸に練り込み、抗菌防臭、制菌機能を特徴とする「リブフレッシュPスーパー」、赤外線を反射して室内温度の上昇を抑える遮熱効果とUVカットの「シルクール」、Y型断面糸で吸水速乾性と軽量性に優れる「ソアリオンY」の3種を用意。春夏に適した素材として提案を強めていく。

カネカ/「カネカロン」安定推移/中国市場の開拓も進める

 カネカのカネカロン事業部が展開する難燃モダクリル繊維「カネカロン」のカーテン市場向け販売は2012年3月期、ほぼ横ばいを維持した。非HBCD難燃は薬剤が高価なことから、カネカロンを用いることでコスト的な優位性を生み出す局面もあり、引き合いが増えている。

 昨年の震災以降、防災への意識が高まるなか、これまでの積極的な提案が奏功、カーテン市場でのカネカロン需要も安定してきた。天然素材本来の風合い、機能を生かしながら難燃性能を持たせることができ、綿やウール、麻といった天然繊維との混紡や交織など、特徴が生きる分野での販売が堅調に推移する。

 実際、国内のカーテン用紡績糸の製造販売を委託している糸商のフォーリン(愛知県一宮市)を通じて、ファンシーヤーンやラメと組み合わせた商材なども広がっている。

 今期は、国内市場で引き続き安定的な販売を継続すると同時に、拡大を続ける中国のカーテン市場の開拓を進める。

 中国では新たな難燃に対する規制の施行が間近に迫っているとみられている。同社ではこの機会をビジネスに結び付けるため、9月に中国で予定されている国際的な難燃素材の展示会にも出展する。現地のホテルや劇場、病院などの公共施設を対象に、これまで協働してきた日本のメーカーなどとともに新たな市場を開拓していく。

帝人ファイバー/「涼しやSE」を拡販/高い「遮熱+難燃」性能

 帝人ファイバーのカーテン素材事業の2012年3月期業績は大幅な増収だった。昨年は原発事故以降、省エネ対応のレースカーテンなどが見直され、「遮熱元年」ともいえる状況を呈した。人体に影響のない特殊な金属酸化物を封入したポリエステル繊維を使用した遮熱機能糸「涼しや」はその前の年の7倍の販売を記録した。通常のレースカーテンとの比較で約2℃の遮熱効果を持つ涼しやは今期もさらに「20%増で推移している」という。カーテン素材事業全体でも13年3月期は20%の増収を見込む。

 今期は涼しやなどを含む、年間を通じて冷暖房の効率が高まる省エネ・節電カーテン素材を「エコリエ」としてさらに拡大していく。昨年から増えてきた大手カーテンメーカーや通販企業との取り組みを広げる。

 同時に震災以降の防災意識の高まりを受けて、今期はすぐれた遮熱性、UVカット効果を持つ涼しやに、ノンハロゲン系難燃ポリエステル「スーパーエクスター」の効果を付加した「涼しやSE」を積極的に拡販する。とくに安全意識の強い病院向けなどへの提案を強める。

 今期は秋をめどに同社の衣料繊維部門などとNI帝人商事が統合、新会社を設立する。カーテン素材事業もこれに含まれる。両社は従来、独自にカーテン分野の事業を展開し、「2社が組んだことは少なかった」という。それだけに2社が連携する相乗効果に大きな期待がかかる。