事業戦略シリーズ/豊島東京本社/強み磨き専門性強固に
2011年09月05日 (月曜日)
衣料を市場に供給する上で、商社が果たす役割は大きい。単に生産を請け負うOEM対応は今やかなり昔の話。そういったなか、製品の提案型発信、素材開発等一気通貫で対応する豊島東京本社。その評価は既に業界内で高く、専門商社としての“強み”にさらに磨きを掛ける。
常に市場ニーズに対応
ここ数年、豊島東京本社が開くカジュアル製品OEM展示会には、素材関連ブースが併設されるようになった。「商品の同質化が問題視される中、差別化として先ずは素材がクローズアップされるようになった」(高塚俊英常務)が、そうなると原材料開発から生産、企画・製品提案まで一気通貫に展開する繊維の専門商社としては強みの発揮のしどころとなる。
展示会ではオーガニックコットン(「オーガビッツ」ブランドで展開)などをメーンに、ここでしかできない素材と製品を有機的にリンクさせることで、新たな展開が見えてきた。
東京本社のもう一つの柱となるユニフォーム部門については震災復興需要やスーパークールビズの影響等で好調だが、それ以前に「素材とともにインドネシアなど海外生産地を活用したプレゼン能力も高い」ことが、事業展開のアドバンテージになっている。
ちなみにオーガビッツは全社的取り組みで、ファッションブランドや雑誌の協業販促活動、さらにオーガニック和綿農家(「渡良瀬エコビレッジ」)への支援等による環境・地域貢献活動によって、その存在を市場に浸透させつつある。
オーガニック素材への関心の高まりは、環境志向を背景にした「市場ニーズ」がそこにはある。国内最大市場を拠点とする東京本社は「原点は消費者」とのスタンスから、取り組み企業と密な関係を維持しながら市場ニーズに即応できる体制作りを常に心掛けてきた。
組織力で顧客第一主義を
東京本社は現在、9部2室体制にある。4年前は7部2室体制だった。「顧客第一主義」を前面に掲げていることもあり、その具現化を狙いとする組織拡大は「顧客満足度の高まり」の証ととらえることもできる。
2室の一つ物流室は当時発足したばかりで、今は生産・物流室となる。またモノ作りを支える品質管理室は今や不可欠な存在となる。常にハイクオリティーなものを提供するという専門力の強化において、両者の存在はその基盤を強固にする。
顧客ニーズとして「トータル提案への要求が増えてきた」というが、そのためには社内連携がポイントになってくる。社内連携というと一見容易そうだが、現実は違う。同じ企業といっても、部署が変われば事情も変わってくる。組織拡大はきめ細かい顧客対応の表れだが、それぞれの部署の強みが明確でないといずれその部署は必要とされなくなる。
ただそれぞれ明確な強みを持っていると、真の意味での「チームワーク」が具現化しやすい。明確な強みと役割によって個々の部署が有機的に結合することで化学反応を起こし、1+1が3にも4にもなる。つまり「予想を超えた何かが生まれる可能性」が出てくる。それが組織力というもの。豊島東京本社カジュアルOEM部門は合同展示会で、組織力を披露する。
豊島 常務東京本社店長・高塚俊英氏/地の利生かし情報受発信
コアビジネスとしてカジュアル製品OEM事業を展開するが、これまではQR対応に終始してきた。これによりプロパー消化率を高め、その成果に伴って利益も高くなるという構造だった。ただそこに同質化という問題が出てきた。
ショップもブランドも異なるのに、そうなってしまう。それぞれに独自のストーリーを有しながらも、結果的に同質化となる。明らかに差別化されている場合は、売り場・デベロッパーに高い価値を与える。それでは差別化要素とはいったい何なのか。価格もその一つだがそれによる差別化は長続きせず、結局は安い方に流れてしまう。
少子化で市場が縮小する中、いかに差別化(個性化)できるかに尽きる。その一手法として、時間を掛けたモノ作りがある。ただその場合大きなリスクが伴い、必ずしも利益率が高いわけではない。またそれを具現化できる装置を有するところも少ない。今後そのあたりの課題をいかにクリアしていくかが、市場での生き残りに繋がっていく。
その際、基軸となるのが顧客第一主義と消費者満足の実現だろう。当社は海外産地を巻き込みながら原料から製品までの一気通貫体制を“強み”に、それらを具現化する企業でありたい。そのため東京本社としてはその強みとともに国内最大の消費市場という地の利を生かし、垣根を越えた社内連携を取りながら顧客志向の独自ビジネスにさらに磨きを掛けていく。何しろ市場の反応がすぐ出るのが東京で、そういった情報受発信基地としての役割を強化していく。
27日から来春夏総合展
豊島東京本社のカジュアルOEM部門(三部・十部・十一部・十四部)は9月27日から4日間、総合展示会を開く。会場は東京・港区のスタジアムプレイス青山(東京都港区北青山2―9―5。銀座線外苑前駅下車)。
同展では“企画ブース”としてレディース、メンズ、キッズを対象に、オリジナルスタイル提案をベースとした来春夏向け商品(約800点)を提案する。
その一方で事業基盤となる同社が強みとする“営業ブース”を設置し、総合力をアピール。同ブースは名古屋本社の素材部門との協業提案コーナーを始め、上海・香港・LAなど海外拠点との協業コーナー、「キャントン」ブランドコーナーなどで構成する。