伊藤忠ファッションシステムクリエイティブディレクター・池西美知子氏/欧州の評価高いが課題も
2011年08月15日 (月曜日)
テキスタイルの国際見本市、パリ「プルミエール・ヴィジョン」(PV)とも関係が深く、独自のルートで日本のテキスタイルを世界に発信し続ける伊藤忠ファッションシステムの池西美知子クリエイティブディレクターに、国産テキスタイルの魅力と課題を聞いた。
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――日本のモノ作り、テキスタイルの魅力とは何でしょう。
独自に開発しようというモチベーションと、独自のハイテク技術だと思います。日本の合繊はシルクに追い付き、追い越せと開発を続け、マイクロファイバーなどを生み出してきました。その技術は天然繊維にも生かされています。物まね、模倣に始まり、独自の進化を遂げたのです。カテゴリー、ジャンルにこだわらず、自由に開発することも得意ですね。
欧州は天然繊維の地位が高く、合繊への嫌悪感が強い。デザイナーが合繊の良さを理解していても、消費者にはまだ偏見があります。ただ、日本企業がPV出展などを通じて合繊の魅力を発信してきたことで、この偏見は徐々に薄れています。
――良い素材を作っているのに、欧州で実績を積むテキスタイル企業はまだまだ少ない。
欧州のクリエーターからは「日本の素材はエッジが利いている」と評価されています。日本固有の伝統と同時に、進化した技術力に定評があります。不足しているのは提案力でしょう。例えば、中空糸をそのまま英訳しても、欧州のバイヤーにはイメージが沸きませんが、「マカロニヤーン」と意訳すれば、伝わります。起毛に対する「ピーチスキン」も同じです。糸がいかに細いかをアピールしても、バイヤーは感動しません。それをソフトに分かりやすく表現する工夫が必要なのです。
――輸出を拡大させるうえで重要なことは。
日本の素材が優れていることは欧州にも広まっています。価格対応力と商談後の対応力が必要になるので、連携を図るなどで販売のインフラを整備することが大事です。また、プレゼンする際に日本の企業は見本張に写真を張り付けるなど、無駄な装飾を施しがちですが、欧州のバイヤーは生地のプロ。神の目と手を持っているわけですから、生地そのものを見せるだけでいいのです。最後に指摘しておきたいのは、日本の技術力を欧州のメーカーが模倣し、追随してきています。「技術はある」とあぐらをかいていてはだめですね。