産資・不織布・最新情報/テクテキスタイル見聞録(5)韓国製ナノ量産機に関心

2011年06月10日 (金曜日)

 今回のテクテキスタイルに出展した企業の中で、最も新奇性があったのは伊藤忠システックのブースだろう。4月に世界での販売代理店権を取得した韓国・TOPTEC社のナノファイバー不織布設備を初披露したからだ。

 クラレや帝人ファイバーなどがナノファイバー不織布を出展していたが、ともに研究開発の域を脱していない。それだけに、TOPTECのナノファイバー不織布設備はどう違うのか。また、市販設備では有名なチェコのエルマルコ「ナノスパイダー」との比較など注目された。

 「世界の反応を見る」(伊藤忠システック電池・加工機械部の小林弘志マネージャー)として、テクテキスタイルにTOPTEC社と共同出展した。ブースには試験設備のほか、原反サンプルを展示し、パネル展示で同設備の優位性をアピールした。取材中に価格を問い合わせる来場者もあった。

 TOPTEC社は液晶、自動車、太陽電池などの製造機械メーカーで、ナノファイバー不織布設備は信州大学繊維学部と共同研究により開発した。ブースには信州大学の金翼水准教授など信州大の担当者が来場者に熱心な説明を行っていた。

 伊藤忠システックによれば、エレクトロスピニング法によるナノファイバー不織布は量産化が難しかったが、同設備は従来のドラムやワイヤー型ではなく、ノズル型を採用。ノズルの欠点である目詰まりも独自ノウハウで解消。製品1・8メートル幅で均一な数十~数百ナノによる不織布を生産できる。生産スピードは使用原料にもよるが、毎分80メートル。ウレタン原料による透湿防水膜やナイロン使いのフィルター、リチウム電池セパレーター、細胞培養基布などがターゲットになるという。

 産業用繊維・不織布の用途は非常に幅広い。このため、出展者、来場者とも多種多様で、その面でテクテキスタイルは総花的な展示会でもある。それでも日系企業からテクテキスタイルに対する不満を聞くことはなく、初出展組の平岡織染が「社名を売り込むという所期の目標を果たせた」と言うように、出展企業にとって満足度が高い展示会だったと言える。

 バイヤーが来ないと嘆くのではなく、自ら呼び込む欧米企業、欧米への企業PRの場と位置付ける企業、日本で実績のある商品の評価を探る企業、欧米開拓のキッカケにしたい企業など出展者の狙いも様々。展示会の活用法は画一的ではないということを改めて感じさせた。次回開催は2013年6月11~13日に予定。